自己運転車の次は不老不死; Google XのCalicoプロジェクトはまず癌撲滅, 人類の平均寿命100歳を目指す

【抄訳】

悲しいことに、癌やパーキンソン病の特効療法が発見されるためには、Forbes 400に載ってる人全員が同時にこれらの病気になる必要があるかもしれない。難病の治療法の開発には、天文学的な額の費用を要するからだ。

もちろん、お金だけでなく、投じられる人的リソースや時間の量も膨大だ。国の施策もからむことになり、相当複雑面倒な研究開発過程になるだろう。それらと対比すると、Googleの最新の気違い科学(mad science)プロジェクトCalicoが、とても魅力的に見える。

というよりCalicoは、早逝したGoogle Healthプロジェクト以降最大の、Googleの保健医療プロジェクトかもしれない。Google Healthがローンチされた2008年と今とでは、Googleの社容も違うし、われわれの生活も違う。今ではスマートフォンユーザの20%が少なくとも一つの健康アプリをダウンロードし、成人の60%が健康情報をインターネットに求めている。

CalicoのプロジェクトリーダーArthur D. Levinsonは、かつてGenentechのCEO、今はAppleの会長だ。Calicoは保健医療関連の壮大な、そして長期的なプランだ。これまで得ている情報によると、このプロジェクトはGoogleの大規模なクラウドとデータセンターを利用して、疾病と老化に関する研究を推進する。とりわけ、大規模なデータマイニングにより、病気と加齢現象の原因を探る。

Apple Chairman, Arthur D. Levinson

Googleは23andMeに投資しているので、今どんどんデータが増えているゲノムデータベースにアクセスできる。同社の言葉によると、“それらは健康と幸福に関する研究に寄与貢献する…中でもとりわけ老化との戦いに”。すなわち長寿と疾病の背後にある遺伝学や生物化学方面の研究を、Calicoプロジェクトは取り入れることができる。

TIME誌のインタビューでGoogleのCEO Larry Pageは、人間の寿命を大幅に延ばすことがCalicoの目標の一つだ、と言っている。当面、人間を不老不死にすることではないが、このプロジェクトに近い筋によると、今20歳の人間の寿命を100歳に延ばすという、具体的な目標がある。

“今の人たちは、本当に正しいことに目を向けているのだろうか?”、とPageはインタビューの中で真剣な口調で言っている。“ぼくが本当にすばらしいと思うのは、たとえば、癌を撲滅して人間の平均寿命を3年延ばすことだ。癌の完全な予防や治療は世界を変えるほどの大きなテーマだが、現状は癌で亡くなる悲しい例があまりにも多く、ここ数年数十年で治療法はそんなに大きく進歩していない”。

Pageが言いたいのは、癌は克服不可能な障害ではなく、これまでの取り組み方が下手だったためにそう見えるだけだ、ということのようだ。正しい考え方と方法で取り組めば、解はすぐ手が届くところにある、と彼は主張したいのだ。Larry Pageはこれまで、コンピュータのアルゴリズムで自分が思うものを何でも実現してきた人間だ。おそらく、疾病もその治療も、あるいは世界のそほかの大きな問題も、正しいアルゴリズムが見つかれば正しい解が得られる、と考えているのではないか。

Googleにとっては、眼鏡のコンピュータ化も、自動車運転の無人化も、そして癌や老化の抑止も、本気で取り組めばそのうち必ず実現するアルゴリズムとその実装の問題、と見えているのだ。TIME誌のインタビューでPageは、“保健医療はアイデアからその実現までに10年とか20年というスパンを要する分野だ”、と言っている。“でも、本当に正しい標的だけを撃ち落としていけば、10年か20年後には、ねらったもの*が実現しているだろう”。〔*: 癌やパーキンソン病などの完全治療完全予防、老化の遅延、人間の平均寿命を100歳以上にする、など。〕

なお、CalicoはGoogleのプロジェクトというより、Googleの気違い科学ラボGoogle Xの延長ともなる関連別会社になるらしい。PageはGoogle+で、“既存のインターネットビジネスと関係なさそうな不確かなプロジェクトに投資しても驚かないように”、と言っている。“このような新しい投資は弊社のコアビジネスと比較するときわめて小さいことをお忘れなく”、だそうだ。評価額3000億ドルの企業がCalicoに10億ドル投資しても、たしかに“きわめて小さい”だろうね。

自己運転車やGoogle Glassだけで満足しないPageは、これらと同じ感覚で保健医療の問題、たとえば癌の“ソリューション”に取り組もうとしている。ただし情報筋によると、現状のCalicoはまだ雲をつかむような段階のプロジェクトで、短期の利益計画もなければ、長寿化のための具体的な事業もない。しかし不老不死の実現に取り組むのはPageとLevinsonが初めてではない。それは、古代から王たちや悪党たちの野望であり、朝起きたときの万人の願いでもある。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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