Apple(アップル)はiOS App Storeについて欧州で新たな独占禁止法の調査に直面している。
英国の競争・市場庁(CMA)は現地時間3月4日、デジタル部門での不平等な条件とその結果についてデベロッパーからの数多くの苦情を受けて調査を開始した、と発表した。
「CMAの調査は、Appleが英国においてAppleデバイスでのアプリ配信で支配的な地位にあったかどうかを考慮します。もしそうであるなら、Appleが不公正あるいは反競争の条件をApp Storeを使っているデベロッパーに課し、結果的にユーザーが選択肢を失ったりアプリやアドオンに高い料金を払うことになったのかが焦点となります」とプレスリリースで述べられている。
「これは調査の始まりに過ぎず、Appleが違反しているかどうかまだ決定は下されていません」と付け加えた。
声明の中で、CMAのトップAndrea Coscelli(アンドリア・コシェリ)氏は次のように述べた。「何百万という人が天気をチェックしたり、ゲームしたりあるいは持ち帰りを注文したりと毎日アプリを利用しています。Appleが不公正だったり競争や選択を阻害するような条件を課すのに市場での地位を使っているという苦情について、これは結果として顧客がアプリを購入したり使ったるする際に不利益を被っているかもしれず、注意深く精査します」。
Appleの広報担当は、CMAの調査開始に対し次のような声明をTechCrunchに出している。
当社は顧客が好きなアプリをダウンロードできる、そしてデベロッパーがすばらしい事業機会を得られる、安全で信頼できる場所としてApp Storeを作りました。英国だけでもiOSアプリの経済は数十万人の雇用を支えており、すばらしいアイデアを持っているデベロッパーは世界中のAppleの顧客にリーチできます。
あらゆるすばらしいアイデアが溢れている、活気があり競争が展開されているマーケットを当社は信じています。App Storeはアプリデベロッパーにとって成功のエンジンであり続けました。これは部分的には顧客をマルウェアから守り、同意なしの顧客データ収集の横行を防ぐために当社が定めている厳格な基準によるものです。基準はすべてのデベロッパーに公正平等に適用されます。当社のプライバシー、セキュリティ、コンテンツに関するガイドラインがいかにApp Storeを消費者とデベロッパーの両方にとって信頼できるマーケットプレイスにしてきたかを説明するために、英国の競争・市場庁に協力することを楽しみにしております。
EUは音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)による2019年の苦情申し立てを受けて、すでにAppleの事業の多くの要素について独禁法調査を行っている。EUは2020年夏にApp StoreとApple Payについての調査を発表していた。
米国の議員もまたテック大企業に対する主要な独禁法調査の一環としてAppleを問いただしてきた。アリゾナ州ではちょうど、AppleとGoogle(グーグル)にそれぞれのスマホストアでサードパーティの決済オプションを認めることを強制する目的の法案に進展があった。
一方、EUのAppleに対する調査はまだ継続中だ。ビデオゲーム開発のEpic Games(エピックゲームズ)は、Appleがデベロッパーに課している不平等な「税」と呼ぶものについてAppleと激しい論争を展開してきたが、2020年2月に欧州委員会に苦情を申し立ててEUの調査に加わろうとした。
関連記事:フォートナイトのEpic Games創設者、Appleとの闘争を公民権運動に例えて語る
Epicは以前、同様の苦情を英国でも申し立てた。なので同社はCMAが引用した不満のあるデベロッパーの1社だ。
英国はEUから離脱したことから、CMAは英国の当局として重要な役割を担うようだ。ブレグジット後、コミッションとして同じ問題を自由に調査できる(一方、EUの規則では各国の当局は重複を避けることが求められる)。
英国がEUの当局よりすばやく動くことができれば、テック大企業に適用する基準を形成する機会を得るかもしれない(CMAは3月4日「グローバルな懸念」と表現したものに取り組むためにEUや他の当局と「引き続き緊密に連携を取る」と述べた)。
また英国は2020年秋に、テック大企業のマーケット支配力に取り組むことを目的とする、競争促進の規制体制を確立する計画を発表した。これはCMAが実施したオンラインプラットフォームとデジタル広告についての主要な市場調査を受けてのものだ。CMAは2020年12月に規制体制の確立を政府に提言している。
「現在の執行力を補うことになる提言についてCMAは政府と協業している一方で、こうした分野における競争を保護するために既存の力を引き続きフル活用します」とCMAは述べた。
「我々の継続中のデジタルマーケット調査ではすでに懸念すべきトレンドがいくつか見つかっています」とコシェリ氏は付け加えた。「もしテック大企業による反競争のプラクティスが野放しにされれば、事業者そして消費者が実害に苦しむことになります。だからこそ、我々は新たな機関Digital Markets Unitを設置し、必要に応じた新たな調査の立ち上げで前進しています」。
テック大企業を狙った最近の他の動きでは、CMAはGoogleのサードパーティ追跡のクッキーを廃止する計画について調査を開始した。またUberが予定している英国拠点のSaaSメーカーAutocabの買収についても調査を始めた。
関連記事:UberのAutocab買収を英国の競争監視当局が調査
CMAは2020年のオンライン広告マーケットについての最終レポートの中で、GoogleとFacebook(フェイスブック)のマーケット支配力はあまりにも大きく「広範で自己強化」の懸念と要約したものを解決するために、新しい規制アプローチと専従の監視機関が必要との結論を出した。間もなく立ち上がるDigital Markets Unitはテック大企業に対する英国の当局対応の主要部分を担う。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Apple、イギリス、独占禁止法、App Store、EU
画像クレジット:Bryce Durbin
[原文へ]
(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi)