著者にとってのKindle Unlimitedとは? ― 先週のUS注目記事

Unlimitedで著者は潤うのか

月額9.99ドルで読み放題といサービス、AmazonのKindle Unlimitedは大きな話題を呼んでおり、TechCrunchも再三報じているが、果たして「著者」にとってはどうなのか?という思いをJohn Biggs記者が綴っている。Biggsは、これまでに何冊かKindle本を出版しており、この問題には強い関心を持っている。

最大の関心事は単純。「印税はどう支払われるのか?」だ。

BiggsがAmazonに問い合わせたところによると、Kindle Unlimitedは、以前からある Kindle Direct Publishing(KDP)の特別サービス「KDP Select」というプログラムの一環として取扱われる。KDP Selectは、インディーズ著者が、「他で公開しない」ことを条件に、著書をKDPで一定期間特集してもらえるしくみだ。独占販売と引き換えに無料で宣伝してもらえるわけだ。もし他のサイト(例えばBarnes & Noble)にアップロードして、それをAmazonのロボットに見つけられたらおしまい。

肝心の印税は、KDP Special Global Fundという基金から支払われる。印税率自身は月毎に変化し、その支払い条件は、その本を読者が「10%以上読んだ場合」にのみ支払われるというユニークなものだ。

つまり、誰かが自分の著書を選んでくれると、(本の代金からではなく)Amazonが用意した準備金の中から少額の印税が支われる ― ただし、その読者が本の10%以上を読んだ場合だけ。

なるほど、Kindleはどこまで読んだかの情報を逐次サーバーに送っている。これは別デバイスで続きを読む時に便利な「ページの同期」のためだと思っていたが、購入した本を読者が実際に読んでいるどうかを調べるためにも使えるわけだ。

というわけで、Kindle Unlimitedは、どんな本でも読めるのではなく、著者(出版社)が追加したものだけが対象になるわけだが、Biggs記者いわく、未だに「Add to KU」[Kindle Unlimitedに追加]ボタンが見つからないので、参加方法は不明と書いている。ただし、これはBiggsが上記のKDPに参加していないからかもしれないとのこと。

謎のハッカー検索サイト、Indexeusとは?

New Search Engine Unmasks The Hackers[ハッカーたちの正体を暴く新しい検索エンジン]という記事は、indexeus.netという謎のサイトを紹介している。

「アカウントのリカバリーとコンサルタントを手軽に!」と称し、支払いにBitcoinを利用しているこのサイトは一見まともに見えるが、マルウェアが潜んでいるかもしれない、という理由で記事にはリンクすら貼られておらず「興味があるならタイプしろ」と書かれている。

実はこのサイト、〈盗まれた名前やパスワード〉のデータベースだ。最近侵入されたAdobeやYahooのデータを含め2億件以上を検索できる。さらにここには、hackforums.net という世界中の若きハッカーたちが集いハッキング技術を競うサイトの個人情報データも登録されており、ハッカーたちは戦々恐々としている。

John Biggs記者が試しに自分の名前とオバマ大統領を検索してみたところ、自分は1件、大統領は11件ヒットした。閲覧には50セント相当のBTC(Bitcoin通貨)が必要だ。Biggsに関するデータは無意味なものだった(オバマ大統領については不明)。

日頃人々を脅かしているハッカーたちが、自ら仕掛けた爆弾を恐れる様を見ていると、他人の不幸を喜ぶ気持になる、と記事は語っている。

私がサイトを訪れてみたところ、メンテナンス中と表示されていた。TechCrunchのコメント欄によると、どうやら「ハックされた」らしい。ハッカー同志の泥沼の戦いは続く。

アプリ内購入があるなら〈無料〉ではない

Apple App Storeのダウンロードランキングは、無料アプリ、有料アプリに分かれているが、いつの頃からか無料アプリランキングの上位は殆どがゲームで占められるようになった。そしてそれらのゲームは決して「無料」ではなく、アプリ内でグッズや仮想通貨を買わずにいられない仕組みになっているため、「無料ランキング」の意味は薄れてきている。少しでもユーザーの混乱を減らそうと、Appleは、無料アプリで後にアプリの中で何かを買う仕組みのあるものには「アプリ内購入あり」の表示を付けている。

ヨーロッパでは、このアプリ内購入が一段と大きな問題になっているようだ。このたびEUの指導に沿って、Googleは9月から「アプリ内購入のあるアプリは〈無料〉と呼ばない」ことを決めた。EUによると、Appleはこの問題への対応計画を明らかにしていないが、現行の対応方法およびiOS 8での施策を説明したといk。

Appleは、iOSにおけるペアレンタルコントロールを強化し、App Storeにはキッズセクションを設け、13歳以下の子供向けアプリの保護を高めるなど、対策を講じており、今後はEUの指示に従う可能性もある。

ただ、アプリ内購入をしないと事実上使い物にならない「無料アプリ」が横行する一方、純粋に「機能追加のためのアプリ内購入」も存在するので、一括して「無料アプリと呼ばない」のが適切であるかどうかは難しいところだ。

Facebookの「買う」ボタン

Facebookは、サイトから外へ出ることなく商品を購入できる “Buy”[買う]ボタンをテストしている

画像にもある通り、ニュースフィード(ウェブでもモバイルアプリでも)に表示された広告の Buy ボタンを押すと、売り主のサイトへ飛ぶことなくFacebook内で取引きが完了する。

これは、Facebookにとってユーザーが外へ出る(戻ってこない)リスクを減らせるだけでなく、ユーザーにとっても購入の障壁が低くなるため、売り主はコンバージョン率の向上が期待できる。支払いには、Facebookに登録済みのカードを使うか、新規に入力した場合、そのままFacebookに登録するか、保存せずその場限りで捨てしまうかを選択できる。

Facebookはこれまでにも、”Donate”[寄付]ボタンや、サードパーティーの支払い情報画面を「オートフィル」するサービスなど、Eコマースを推進してきた。

ウェブサイトであれ、アプリであれ、ソーシャルメディアや広告であれ、Eコマースにとってはコンバージョン率がすべてだ。何かを買おうと思った消費者に、購入を完了させるためには、いくつかの障壁を越えさせなくてはならない。中でも大きいのが、チェックアウト画面へ行かせることと、カード情報を入力させることだ。

Facebookは、事実上この両方を回避できる。Facebookの青い画面や友達から離れる必要がない。初めて買う店であっても支払い情報を入力する必要がない。Buyボタンを押し、あと一度確認ボタンを押すだけだ。これは、レジ横で売られているお菓子に似ている。客はすでに財布を手に支払う準備をしているから、衝動買いさせるのは簡単だ。

Google、他人のバグを探す

Googleは、サードパーティーアプリのセキュリティーバグを探すための取組み、Project Zeroを立ち上げた。社内の優秀な人材が投入される。

先日OpenSSLの暗号化ライブラリーに見つかった深刻なセキュリティー脆弱性、Heartbleedバグの悲劇を繰り返さないよう、デベロッパーの注意を喚起することを目的にしている。

発見されたバグは外部データベースに登録され(現在は何も入っていない)、開発者に通知される。

Googleが他者の作ったソフトウェアのバグを見つけるために、多くのリソースを注ぎ込むことは一見奇異に感じるかもしれない。しかし、殆どの近代的ソフトウェアは、モバイル、デスクトップ、ウェブを問わず、様々なベンダーの様々なパーツからに依存して作られている。ユーザーが安心してウェブサーフィンを楽しみ、デベロッパーがAndroidアプリを作りやすくするためのセキュリティーを提供することは、Googleユーザーや、Googleインフラストラクチャー自身のためになる。

まともに表示されないサイトを事前に警告

最後もGoogleのニュース。Googleは、モバイル検索結果画面で、そのデバイスがサポートされていないサイトへのリンクに警告を表示しようとしている。例えば、Flashをサポートしていないスマートフォン(iOSや、最近のバージョンのAndroidを塔載する端末)で、検索結果にFlashを使用しているページがあると、「動作しないかもしれない」と警告する。これで、リンク先に行ってから「このページはスマートフォンに対応していません」というメッセージを見なくてすむようになる。

Nob Takahashi / facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。