2020年に続いて2021年が2回目となる参加無料のバーチャルイベント「Sight Tech Global」が米国時間12月1〜2日に開催される。2021年も視覚障がい者にとってのアクセシビリティや支援技術を実現する高度なテクノロジー、特にAIに関して、世界トップクラスの専門家がこのイベントに集う。
この記事ではメインステージのプログラムを紹介しよう。メインステージのセッションは専門家が進行し、現在この分野の大手4社と言えるApple、Microsoft、Google、Amazonをはじめとする各社の注目すべき取り組みが語られる。メインステージの他に分科会セッションを予定しているが、そちらは後日紹介する予定だ。
この無料のバーチャルイベントに、今すぐ参加登録しよう。スクリーンリーダーの対応も十分に準備している。
12月1日のSight Tech Global
Designing for Everyone:Accessibility and Machine Learning at Apple(すべての人のためのデザイン:Appleのアクセシビリティと機械学習)
AppleのiPhoneとVoiceOverはアクセシビリティにおける最大級のブレイクスルーだが、Appleはその成果に満足して歩みを止めているわけではない。次のイノベーションにはAIのサブセットである「機械学習」が加わり、スマートフォンのセンサーなどから得たデータを用いて周囲の状況を理解できる。アクセシビリティのための実装が姿を見せ始めている。
Jeff Bigham(ジェフリー・ビガム、Apple、AI/MLアクセシビリティリサーチ責任者)
Sarah Herrlinger(サラ・ヘルリンガー、Apple、グローバルアクセシビリティポリシー&イニシアチブ担当シニアディレクター)
進行:Matthew Panzarino(マシュー・パンザリーノ、TechCrunch編集長)
Seeing AI:What Happens When You Combine Computer Vision, LiDAR and Audio AR?(Seeing AI;コンピュータビジョン、LiDAR、オーディオARを組み合わせるとどうなるのか)
MicrosoftのSeeing AIアプリには周囲の物体を認識して3D空間に配置する最新機能が搭載された。物体が室内に置かれている、まさにその場所から読み上げが聞こえる。つまり「椅子」という語が椅子そのものから発せられているように聞こえる。ユーザーはバーチャルのオーディオビーコンをオブジェクトに配置して、例えばドアの場所を把握し、近接センサーで部屋の様子を触覚で知ることができる。
AR、コンピュータビジョン、iPhone 12 ProのLiDARセンサーといった最新の進化を組み合わせればこのようなことが可能になる。この取り組みは始まったばかりだ。
Saqib Shaikh(サーキブ・シャイフ、Seeing AI、共同創始者)
進行:Devin Coldewey(デヴィン・コールドウェイ、TechCrunch、編集者)
W3C ARIA-AT:Screen readers, Interoperability and a New Era of Web Accessibility(W3C ARIA-AT:スクリーンリーダー、相互運用性、ウェブアクセシビリティの新時代)
スクリーンリーダーは、ウェブブラウザとは違って相互運用性がないことをご存じだろうか。ウェブサイト開発者は自分の書くコードがSafariやChrome、あるいはその他のブラウザで動くかどうかを心配する必要はない。しかしアクセシビリティを真剣に考えると、JAWS、VoiceOver、NVDAなどのスクリーンリーダーをテストしなくてはならない。この状況がW3C ARIA-ATプロジェクトのおかげで変わりつつある。
(このセッションの後、12月2日にキング氏とフェアチャイルド氏、W3C ARIA-ATのメンバー数人が参加するライブの分科会セッションを予定している)
Matt King(マット・キング、Facebook、アクセシビリティ技術プログラムマネージャー)
Mike Shebanek(マイク・シェバネク、Facebook、アクセシビリティ責任者)
Michael Fairchild(マイケル・フェアチャイルド、Deque、シニアアクセシビリティコンサルタント)
進行: Caroline Desrosiers(キャロリン・デロジエ、Scribely、創業者兼CEO)
The “Holy Braille”:The Development of a New Tactile Display Combining Braille and Graphics in One Experience(「神」点字:点字とグラフィックスの両方を扱える新しい触覚ディスプレイの開発)
現在、視覚障がい者が点字で書かれたものを利用できる機会は、見える人が紙に書かれたものを利用する機会よりもずっと少ない。その都度更新しながら1行ずつ表示する点字ディスプレイが長年使用されてきたが、一度に1行しか読めないのでリーディングのエクスペリエンスは極めて制限されている。この制限は、長い書類を読むときや書籍に表やグラフといったコンテンツがある場合に、特に顕著に感じられる。American Printing House for the Blind(APH)とHumanWareは共同で、点字を複数行表示したり、点字と同じ面に触図を表示したりすることのできる触覚デバイスを開発している。Dynamic Tactile Device(DTD、動的触覚デバイス)と呼ばれるこのツールは、視覚障がい者が利用する複数行のブックリーダーや触図ビューアーを目指している。
(このセッションの後、グレッグ・スティルソン氏、HumanWareの点字プロダクトマネージャーであるAndrew Flatres[アンドリュー・フラトレス]氏が参加するライブの分科会Q&Aセッションを予定している)
Greg Stilson(グレッグ・スティルソン、APH、グローバルイノベーション責任者)
進行:Will Butler(ウィル・バトラー、Be My Eyes、バイスプレジデント)
Indoor Navigation:Can Inertial Navigation, Computer Vision and Other New Technologies Work Where GPS Can’t?(屋内ナビゲーション:GPSが使えない場所で慣性ナビゲーションやコンピュータビジョンなどの新しいテクノロジーはどう機能するか)
スマートフォン、GPS、ナビゲーションアプリのおかげで、視覚障がい者は1人で屋外を歩き回れる。しかし屋内となると話は別だ。
まず、GPSは屋内で使えないことがある。そしてドアの場所を知り、階段を見つけ、誰かが移動させたソファを避けるのは難しい。プロダクト開発者が屋内スペースをマッピングし、屋内の位置を提供し、アクセシブルなユーザーインターフェイスを用意すれば、慣性ナビゲーション、オーディオAR、LiDAR、コンピュータビジョンといったスマートフォンとクラウドのテクノロジーの組み合わせは解決の基盤となるかも知れない。
Mike May(マイク・メイ、GoodMaps、チーフエバンジェリスト)
Paul Ruvolo(ポール・ルボロ、オーリン・カレッジ・オブ・エンジニアリング、コンピュータサイエンス助教授)
Roberto Manduchi(ロベルト・マンドゥチ、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、コンピュータサイエンス教授)
進行:Nick Giudice(ニック・ジュディチェ、メイン大学、空間情報科学教授)
12月2日のSight Tech Global
Why Amazon’s vision includes talking less to Alexa(Amazonが話しかけないAlexaを考える理由)
家庭でテクノロジーが多く使われるようになると、Teachable AIやマルチモーダル理解、センサー、コンピュータビジョンなど、さまざまなソースからのインプットによって周囲の環境が作られる。すでにAlexaスマートホームでのやりとりの5回に1回は、話し言葉以外から開始されている。Alexaは利用者や利用者の家を十分に理解してニーズを予測し、利用者に代わって有効なやり方で動作する。こうしたことは、アクセシビリティにどのような影響を及ぼすだろうか?
Beatrice Geoffrin(ベアトリス・ジェフリン、Amazon、Alexa Trustディレクター)
Dr. Prem Natarajan(プレム・ナタラジャン、Amazon、Alexa AI担当バイスプレジデント)
Inventors Invent:Three New Takes on Assistive Technology(発明家たちの発明:支援テクノロジーに関する新たな3つの成果)
発明家たちは、その才能を視覚障がい者の支援に生かすことに長年取り組んできた。Mike Shebanek(マイク・シェバネク、AppleのVoiceOverを開発)氏やJim Fruchterman (ジム・フルヒターマン、BenetechのBookshareを開発)に代表されるイノベーターが思い起こされるだろう。現在イノベーターにとっては、LiDAR、コンピュータビジョン、高速データネットワークなどほとんど奇跡といってもいいようなテクノロジーが手ごろにそろっている。その結果、イノベーションは目のくらむほどの速さで進む。このセッションでは、こうしたコアテクノロジーを新しい注目のツールに生かす最前線にいる3人のイノベーターに話を聞く。
Cagri Hakan Zaman(カグリ・ハカン・ザマン、MediateおよびSuperSense、共同創業者)
Kürşat Ceylan(クルサット・セイラン、WeWalk Technology、共同創業者)
Louis-Philippe Massé(ルイ・フィリップ・マセ、HumanWare、プロダクトマネジメント担当ディレクター)
進行:Ned Desmond(ネッド・デズモンド、Sight Tech Global、創業者兼エグゼクティブプロデューサー)
Product Accessibility:How Do You Get it Right? And How Do You Know When You Have?(プロダクトのアクセシビリティ:どうすれば効果的か、そして効果をどう知るか)
アクセシビリティの認知度は上がっているが、高い意識を持っているチームでさえも効果的なアプローチを見つけるのには苦労する。ポイントの1つは、適切なユーザーコミュニティと緊密に連携し、フィードバックを得たりニーズを理解したりすることだ。するとトレードオフではなく、すべての人にとってより良いプロダクトになる。このセッションで、プロダクト開発においてアクセシビリティの最前線にいる専門家から話を聞こう。
Christine Hemphill(クリスティン・ヘンフィル、Open Inclusion、創業者兼代表取締役)
Alwar Pillai(アルウォー・ピライ、Fable、共同創業者兼CEO)
Sukriti Chadha(スクリティ・チャダ、Spotify、プロダクトマネージャー)
Oliver Warfield(オリバー・ウォーフィールド、Peloton Interactive、
アクセシビリティ担当シニアプロダクトマネージャー)
Brian Fischler(ブライアン・フィシュラー、All Blind Fantasy Football Leagueコミッショナー、コメディアン)
進行:Larry Goldberg(ラリー・ゴールドバーグ、Yahoo、アクセシビリティ責任者)
For Most Mobile Phone Users, Accessibility Is Spelled Android(多くのスマートフォンユーザーにとって、アクセシビリティはAndroidで実現する)
世界の携帯電話ユーザーの4分の3は、AppleのiPhoneではなく、GoogleのAndroidで動作するスマートフォンを使っている。視覚障がい者にとって重要なアプリはGoogleのLookoutで、これはコンピュータビジョンのデータベースやGoogleマップなど、GoogleのAIインフラストラクチャが備える莫大なリソースを活用している。GoogleはLookoutに代表される多くのアクセシビリティの機会にどのようにアプローチしているかを聞く。
Eve Andersson(イブ・アンダーソン、Google、アクセシビリティ担当ディレクター)
Andreina Reyna(アンドレイナ・レイナ、Google、シニアソフトウェアエンジニア)
Warren Carr(ウォーレン・カー、Blind Android User Podcast、制作者)
Getting around:Autonomous Vehicles, Ridesharing and Those Last Few Feet(外出する:自動運転車、ライドシェア、そしてラスト数メートル)
スマートフォンで車を呼び出すという多くの人の夢はかなったが、ほんの数メートルしか離れていなくてもその車を見つけるのが難しいとしたら、悪夢であり危険だ。ライドシェアや自動運転タクシーの企業は、視覚に障がいがある利用者から車までの数メートルをもっと安全で利用しやすくするためにどんな取り組みをしているのだろうか。
Kerry Brennan(ケリー・ブレナン、Waymo、UXリサーチマネージャー)
Marco Salsiccia(マルコ・サルシッチャ、Lyft、アクセシビリティエバンジェリスト)
Eshed Ohn-Bar(エシェド・オン・バー、ボストン大学、助教授)
進行:Bryan Bashin(ブライアン・バシン、サンフランシスコLightHouse、CEO)
Sight Tech Globalは、シリコンバレーで75年にわたって運営されているNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedが主催する。現在、Ford、Google、Humanware、Microsoft、Mojo Vision、Facebook、Fable、APH、Visperoがスポンサーとして決定し、感謝している。本イベントのスポンサーに関心をお持ちの方からの問い合わせをお待ちしている。スポンサーシップはすべて、Vista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。
画像クレジット:Sight Tech Global
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(文:Ned Desmond、翻訳:Kaori Koyama)