顔認識はそうでなくても十分賛否両論を呼ぶ話題だが、最近は多くの(ただし十分ではない)警察官がボディーカメラをつけて日々の警察活動を行っている。多くの警察用ボディーカメラを製造しているAxonは、独立調査機関に助言を求め、同機関の研究結果に基づき現時点では顔認識を行わないと決断を下した。
かつてTaserと名乗っていた同社は、「AIおよび監視技術倫理委員会」を昨年立ち上げた。さまざまな分野の専門家11名からなる同委員会が最初に発行した報告書は、主として顔認識に焦点を絞った内容だった。
助言内容は単純明快で「使うべきではない。少なくとも今、あるいは永遠に」。具体的な指摘は以下のとおり。
- 顔認識技術は現時点で倫理的に使用できるほどよくできていない。
- 「精度」に注目してはいけない。注目すべきは個々の偽陰性と偽陽性だ。そのほうが重要な意味をもつ。
- 使用する顔認識モデルはカスタマイズできすぎてはいけない。悪用される恐れがある。
- 顔認識アプリケーションは、その影響を受ける人々の明示的同意を得たときのみ起動すること。
- 確実に利益がもたらされるという明確な証拠がない限り、顔認識システムの利用を検討すべきではない。
- 顔認識技術は政治的空白や倫理的空白のもとで使用も存在もしてはならない。よって顔認識技術を開発し提供する際は現実の世界を考慮しなくてはならない。
報告書の全文はこちらで読める。前置きや内部の話が多いが、実内容は24ページから始まる。上にあげた項目についてそれぞれ数ページにわたって説明と事例が書かれている。
Axonはほぼ全面的に同意している。「報告書には顔認識技術に関する思慮深く実用的な助言が書かれており、当社も同意している。委員会の推奨に沿って、当面Axonは当社のボディーカメラで顔認識技術を商品化しない」
研究開発をやめたわけではない。思うに彼らの考えは、科学的な下支えがない限り、この技術が望まれる利益を生むことはない、ということなのだろう。報告書は、AI研究分野における最新のベストプラクティスを守り、システムに偏見や体系的な欠陥がないことを確実にするよう助言しているだけで、顔認識に反対しているわけではない。
これはあまり話題にならないことだが、顔認識(Face Recognition)と顔一致(Face Matching)には違いがある。前者は日常的な汎用的言い回しで、人々が侵略的で偏見があると考えるものであるのに対して、専門用語としての後者は意味が異なる。
顔認識あるいは顔検出は、写真に写っている顔の特徴を見つけるだけだ。スマートフォンがピントを合わせたり、エフェクトをかけるためなどに使われる。顔一致は、検出された顔の特徴をデータベースと比較して一致するものを見つける。スマートフォンをロック解除するために使うこともできるし、FBIが空港を出入りする全員を指名手配リストと比較することもできる。
Axonは顔認識と追跡技術を使って、警察のボディーカメラが撮影した膨大な時間のビデオを解析する。ビデオを証拠として使用するときは、直接関与する人の顔以外にはぼかしを入れなくてはならないが、どこに顔があるかわからないとそれができない(アップデート:当初この段落には、Axonが「顔一致の低機能版」を使っていると書かれていた。これは顔をデータベースではなくビデオ内に出現した顔とだけ一致を調べるともので、同社は「再識別」(Re-Identification)と呼んでいる。この技術は現在研究段階にあり商用には提供されていない)。
この利用形態に問題はないと思われるし、他にも正当な使い方がたくさんあることは間違いない。しかし、今後顔認識技術が主流になることを踏まえ、こうした倫理委員会を作って企業の善良な利用を推進するのはいい考えだろう。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )