現代は、子どももティーンエイジャーも、出費管理の権限を広げたいと思っている。
今でも、その年齢層のための節約と出資を目的とした金銭管理サービスやアプリは数多い。とりわけよく知られている人気アプリの代表にGreenlight(グリーンライト)があるが、そこへ別の角度からアプローチするスタートアップが登場した。子どもたちの出費管理能力の改善を目指す企業だ。
Till Financial(ティル・ファイナンシャル)は、子どもたちを賢い消費者にするための家族向け連帯金銭管理ツールだと自らを称している。ニューヨークを拠点とする同社のバンキング・プラットフォームは、親子間で「オープンで正直」な話し合いを促すようデザインされている。このほど500万ドル(約5億4000万円)を調達し、そのゴールに一歩近づいた。
このラウンドには大勢の投資家が集まった。Elysian Park Ventures、Melinda Gates(メリンダ・ゲイツ)氏のベンチャーファンドPivotal Ventures、Magnify Ventures、Afore Capital、Luge Capital、Alpine Meridian Ventures、The Gramercy Fund、Stadium Goods(ステイディアム・グッズ)の創設者とCEOらによるファミリーオフィスSM Ventures、Lightspeed Venture PartnersのScout Fundなどだ。また、フィンテック企業Petal(ペタル)の創設者たち、酒類マーケットプレイスDrizly(ドリズリー)の創設者たち、Transactis(トランザクティス)の社長、1-800-Flowers(ワン・エイトハンドレッド・フラワーズ)の社長といったエンジェル投資家も参加している。
Tillの目標の1つに、子どもたちが「実践で学ぶ」手助けをして、自信を持って出費の判断ができるように育てることがある。同社は子どもに銀行口座と、デジタルと実際のデビットカードを与え、目標に基づいた節約を行わせる。たとえば、ある十代の若者がiPadを買いたいと思ったとする。Tillは、iPad購入のためのお金を貯められる銀行口座を開設し、おじいさんやおばあさんなどの家族に、その口座に同じ金額か、それ以上の資金援助ができるようにする。また、Netflix(ネットフリックス)やSpotify(スポティファイ)の利用料など、継続的な支払いも行えるようにして、毎回決まった日に必ずお金を払うというのはどんな感じかを体験させる。
「両親も現在の銀行のサービスも、節約という面に限れば重要な部分が欠けています。私たちは第一に、節約と出費を手助けして、子どもたちが『賢くお金を使う人』になるための準備を整えます」と、Tom Pincince(トム・ピンシンス)氏とこの会社を共同創設したTaylor Burton(テイラー・バートン)氏は話す。「Tillでは、子どもたちはしっかり考えて目的のあるお金を使う方法を学び、同時に両親は、透明性と信頼性によって信用を深めることができます」
ピンシンス氏は、この市場は明らかに手薄だと感じてる。
「旧来型の銀行は、子どもたちにはまったく関心がなく、初期のデジタルプレイヤーたちも、そこをまったく見落としています」と彼はいう。
子どもをターゲットにしたアプリは山ほどあるが、正しいプレイヤーのための空間が大きく残されているとピンシンス氏は考えている。
「現実に8歳以上18歳未満の子どもたちは、銀行口座を持たない最大の集団だということです」と彼は話す。「私たちは、お子さんの財布を握ろうと必死になっているのではありません。その財布の中の最初の製品になろうとしているのです」
たしかに、これは大きな市場だ。米国の平均的な中流家庭では、子ども1人あたり18歳になるまでにかかる費用は28万4570ドル(約3070万円)にのぼる。
このプラットフォームは、すべての家族が無料で利用できる。これは早々にPayPal Ventures(ペイパル・ベンチャーズ)の運営パートナー兼COOのPeggy Mangot(ペギー・マンゴット)氏の目に留まった。彼女は個人的に、Tillのシードラウンド投資に参加している。PayPal以前、マンゴット氏は、子どもたちに責任ある出費の習慣を身につけさせることを目指したWell Fargo(ウェル・ファーゴ)の手数料なしのモバイル・バンキング・アプリGreenhouse(グリーンハウス)の開発を率いていたこともある。
マンゴット氏には3人の子どもがあり、子どもたちがオンラインで買い物をするときには彼女自身のクレジットカードを渡していたと振り返る。また、店に買い物に行くときや友だちと会うときには、現金を渡していた。
「しかしそれでは、子どもたちにお金の意味が伝わりません。モノの値段を本当に理解する機会がなく、所有している意識も芽生えません」と彼女は話す。「現金やカードを渡すのが私だけだからです」
マンゴット氏がTillに惹かれたのは、子どもたちの「尊厳を重視し介在してくれる」からだという。
また彼女は、お金に関する大切な教訓を小さい時期から学ばせることで、世の中にはもっと責任感のある大人が増えると信じている。
「早い時期から子どもたちにそうしたツールを持たせることで、独立して小切手や請求書を自分で管理しなければならなくなる前に、何年もかけて体験を重ねられます」とマンゴット氏はTechCrunchに話した。「これが広く受け入れられたなら、金銭的な意識と自信と管理能力に満ちた若者が、これまでになく増えることになるでしょう」
Tillは、交換手数料で収益を得ることはせず、ユーザー特典としての商品を提供する業者との提携で利益を出そうとしている。また、ユーザーが大人になり、別の必要性が生じたときに金融機関を紹介する紹介料で利益を得ることも考えている。
「お子さんたちの生涯の銀行になろうとは思っていません。私たちは最初の銀行になりたいのです」とピンシンス氏はいう。「なので、彼らが大人になったとき、私たちは彼らをハイタッチでプラットフォームから送り出し、最初の大学の学資ローンや最初のクレジットカードの契約へと導くことになります」。
カテゴリー:フィンテック
タグ:Till Financial、子ども、10代、資金調達
画像クレジット:Till Financial
[原文へ]
(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:金井哲夫)