「コネクテッドカー」なんてキーワードがこの1、2年で広がったが、内蔵するセンサーや外付けのIoT機器で車のデータを取得し、そのデータをクラウド上にアップするなどしてさまざまな用途に利用するという動きが進んできている。コンシューマー向けの動きであれば、以前に紹介したSmartDriveの車両診断デバイスだってその1つの事例だろう。
ではビジネス向けの動きはどうだろうかというと、運送業向けのクラウドサービスやIoT機器を開発するHacobuがおもしろいプロダクトを手がけている。同社は4月14日、運送業支援向けのクラウドシステム「MOVO クラウド」およびスマートフォンアプリ「MOVO App」の提供を開始した。
MOVO クラウドは、運送業(ここで指すのは事業用貨物自動車、つまり緑色地に白文字のナンバープレートを付けた事業用自動車による運送業務)向けの業務・運行管理システムをクラウド化したもの。利用は無料。運送業の多くは、案件ごとに「どこからどこまで、何時間で運送したか」「何時間で何キロ走ったか」などをドライバーが紙で申請し、管理者が100万円近い業務パッケージを利用して入力・運賃などを計算する…というのがまだ主流だそう。MOVO クラウドは案件の入力から請求書発行まで、つまり紙と業務パッケージで行っていた機能をクラウドサービスで提供することで、手入力の作業を大幅に削減するという。
またMOVO Appでは、スマートフォンのGPSなどを活用し、リアルタイムな位置情報や走行状況を取得。さらに荷積み・荷下ろしといったステータスの管理などを行う。アプリとクラウドサービスは連携しており、アプリのログをもとにして、クラウド上にドライバーの日報が自動生成される。アプリは月額960円だが、当面は無料で提供する。
さらにhacobuでは、7月をめどにしてクラウドサービスと連携するデジタルタコグラフ(デジタコ:車載の運行記録計。走行の速度や時間を記録し、外部メモリに保存する)「MOVO Hub」を提供する予定だ。
国土交通省は交通事故削減の観点から事業用貨物自動車へのデジタコ導入を進めており、2015年4月以降、総重量7トン以上の新車に対しての導入が義務化された(以前は総重量8トン以上)。また2017年4月以降、対象範囲はさらに広がる予定だ。
このデジタコ導入、運送業者にとっては悩みの種になっているのだという。まず端末自体が、オプションや取り付け費用込みで10万〜20万円代(端末が5〜6万円でも、解析用のソフトが数十万円なんてことになるものもある)と高価なこと、また一部の端末はMOVOシリーズのようにクラウド対応しているものの、多くの端末はSDカードなど外部メモリにデータを保存しており、手動で業務システムに連携する必要があることなどがあり、導入のハードルは高い。これに対してMOVO Hubは3万円程度の価格で提供する予定だという。さらに、安価かつ通信機能のついた温度センサーも将来的に提供していく予定だという。
hacobuは2015年6月の設立。代表取締役の佐々木太郎氏は外資系コンサルなどを経て、サブスクリプションECの「GLOSSYBOX(現:BLOOMBOX by @cosme)」を手がけるビューティー・トレンド・ジャパンの代表に就任。同社は2014年7月にアイスタイルが買収。佐々木氏はその後hacobuを立ち上げた。現在チームは嘱託のスタッフを含めて7人で、大手メーカーでカーナビの開発統括部長を経験したメンバーもいるという。また同社は2015年10月にベンチャーユナイテッドおよびYJキャピタル、オージス総研から合計数千万円の資金を調達している。