遺伝子工学にブレイクスルーを起こす「遺伝子プログラム技術」のTessera Therapeuticsが238.4億円を調達

技術者たちはコーディング生物学にますます習熟していて、VCたちは新世代のスタートアップたちがその技術を遺伝子技術革新の次の波にのせることができるように、現金を注ぎ込んでいる。

このたびFlagship Pioneering(フラッグシップ・パイオニアリング)のスピンオフ企業であるボストン拠点のTessera Therapeutics(テセラ・セラピューティクス)が、より優れた生物学的プログラミングのためのプラットフォームを開発するために、2億3000万ドル(約238億4000万円)の新たな資金調達を行い、その競争に飛び込んだ。

このラウンドを主導したのはAlaska Permanent Fund Corp.、Altitude Life Science Ventures、SoftBank Vision Fund 2たちで、Qatari Investment Authorityやその他の非公開投資家たちが参加した。

同社は2020年、さまざまな遺伝子の編集技術、製造技術、合成技術を組み合わせて、遺伝子コードに対してよりオーダーメイドの治療指示を提供することのできる遺伝子ライティングサービスを公開した。

同社はその声明の中で、遺伝物質への指示をより多く提供することで、標的とできる病原体や突然変異の数を増やしながら、治療の精度を高めることを目指していると述べている。

この主張は、今月初めに1億500万ドル(約108億9000万円)を調達したアーリーステージバイオテック企業であるSenti Bio(センチ・バイオ)のような企業のアプローチに似ている。

Tessera Therapeuticsの共同創業者でCEOであると同時に、Flagship PioneeringのパートナーでもあるGeoffrey von Maltzahn(ジェフリー・フォン・マルツァーン)氏は「生命体のコードに書き込みを行うことができる能力は、今世紀における決定的技術となって、医療に根本的な変革を促すことになるでしょう。今回いただいた支援は、Tesseraの優れた科学者チームと、遺伝子ライティングの驚異的な可能性を患者さんにもたらすことに注力していることに対する信頼の証です」と語った。「この強力な技術を医療の新しいカテゴリーへと変えることができるのを楽しみにしています」。

Tessera Therapeuticsは、Flagship Pioneeringの傘下で開発されてきた遺伝子治療や遺伝子編集技術に特化した数多くの企業の一部である。Tesseraの共同創業者で会長でもある、Flagship Pioneeringの創業者で最高経営責任者のNoubar Afeyan(ヌーバー・アフェヤン)氏によると、Tessera TherapeuticsはmRNA、標的化膜融合ベクター、エピジェネティックコントローラーを利用した新しい治療法の開発に注力しているという。

Senti Bioは既存の遺伝物質にさらなるプログラミングを加えるものだが、Tesseraは体内に最も多く存在する遺伝物質である可動遺伝因子(mobile genetic elements)を利用して、ヒトゲノムを書いたり書き換えたりするための新たなベクターを生み出す。

同社はその技術を、より良い治療法を提供できる遺伝子工学のブレイクスルーだと主張している。なぜなら、この技術はゲノム内の特定の部位を標的にして、遺伝子コードに対して任意の置換、挿入、削除を行うことができるからだ。Tesseraはまた、その技術は、二本鎖切断を行わず、DNA修復経路にほとんど頼らないことで、より効率的に体細胞ゲノムのエンジニアリングを行うことができると述べている。

遺伝子ライティング技術は、自然界で最も豊富に存在する遺伝子のクラスである可動遺伝因子によって触発され、その上に構築されている。Tesseraの持つ計算ならびにハイスループット実験室プラットフォームのおかげで、チームは、ヒトゲノムの書き込みと書き換えのために、何千もの遺伝子操作され合成された可動遺伝因子を設計、構築、テストすることが可能になった。

また同社によれば、RNAのみを与えることで、まったく新しいシーケンスをゲノムに書き込むことも可能だという。

Tesseraは、新しいラウンドによって調達された資金を使って、技術をさらに発展させ、より多くのスタッフを雇用し、プラットフォームとプログラムに不可欠な、製造と自動化能力を確立することを目指すと述べている。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Tessera Therapeutics資金調達遺伝子

画像クレジット:MR.Cole_Photographer (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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