電気代をビットコインで支払えるようになる──このニュースは昨日(9月25日)にNHKを通して広く報道された。いったいどういう意味があるサービスなのか? 発表会で当事者の話を聞いてきた。
まず事実関係を確認しておきたい。レジュプレスと三ッ輪産業は、2016年9月26日に新サービス「coincheckでんき」をこの11月初旬よりサービス開始すると正式に発表した(発表資料)。すでに予約受付サイトを開設している。電気料金が従来の大手電力会社より4〜6%安くなり、なおかつビットコインで支払えるようになる。電力自由化を背景とした電力小売りの新規参入を図る三ッ輪産業と、「ビットコイン経済圏」を作ろうとするレジュプレスの両者が協力した形となる。
「coincheckでんき」を使うには、プロパンガス事業を営む三ッ輪産業の子会社のENS(イーネットワークシステムズ)と契約する。なお、ENSは電力小売り業を素早く立ち上げるサービスである電力小売りプラットフォーム事業を手がける企業であり、電源を供給しているのは丸紅新電力となる。サービスエリアは今のところ関東、関西、中部エリアだが、今後は順次拡大する予定だ。
「coincheckでんき」では以下の2種類のプランを予定する。(1) 「ライトユーザー向けプラン」は従来の大手電力会社と同等の料金を日本円で支払い、その4〜6%相当額のビットコインがcoincheckウォレットに貯まっていくサービスだ。「ビットコインを日本円で買うのはいまひとつ抵抗がある層にも使ってもらいたい」(レジュプレスCOOの大塚雄介氏)。(2) 「へービーユーザー向けプラン」は電気料金をビットコインで支払うサービスだ。料金が従来の大手電力会社より実質4〜6%安くなる。「ビットコイン経済圏で生活したい」人向けのプランだ。なお、「4〜6%」と数字に幅があるのは、契約アンペア数により値引き幅に変動があるためだ。
ライトユーザー向けプランで貯まったビットコインは、例えばcoincheck paymentを採用しているバー、寿司屋、歯科医などの店舗や、オンラインサービス(例えばDMM.com)で使うことができる(関連記事)。電気料金の4〜6%という金額相当のビットコインが貯まれば、それなりに使いでがある金額になる。例えば、1年かけて貯めたビットコインで寿司を食いに行くユーザーが出てくるかもしれない。
一方、ヘビーユーザーの中には、電気料金をビットコインで支払えることは魅力を感じる人がいるだろう。人数はまだ多くないかもしれないが、「日本円など法定通貨ではなくビットコインで生活したい」と考える人々が存在するのだ。
もうひとつのユーザー層は外国人や海外居住者だ。ビットコインは外国人に優しい。ビットコイン決済は国境を簡単に乗り越えることができる。説明会では「海外在住で、なおかつ日本の電力を使いたい人にも使いやすいサービス」(三ッ輪産業 代表取締役社長の尾日向竹信氏)とのコメントもあった。ちなみに、レジュプレスは外国人が日本の不動産を購入するさいビットコイン決済を使えるサービスを手がけている(関連記事)。
「coincheckでんき」で獲得できるユーザー数は、「最初の1年で1万人」が目標だ。この数字をどう評価するかは人それぞれだろうが、レジュプレスは今後は携帯電話料金など各種料金支払いにもビットコインを適用することを狙っている。同社の予約受付サイトにも「提携企業を募集中」と大きく記されている。つまり今回の取り組みは、公共性がある料金支払いへのビットコイン適用を進めていく上での最初の一歩という訳だ。同社の狙いがうまく当たれば、「coincheckでんき」はビットコインを活用したB2C向け決済サービスの適用範囲を広げる突破口として評価されるようになるだろう。