飲食店と卸売業者をつなぐプラットフォーム「クロスマート」を展開するクロスマートは11月19日、食材の受発注をスムーズにする新サービス「クロスオーダー」を公開した。まずはFAXによる注文比率が高く、年間の流通総額が3兆円を超える“青果物”に特化する形で始める。
同社では今年4月に最初のプロダクトであるクロスマートをローンチ。飲食店が1ヶ月分の納品伝票を登録するだけで、複数の卸売業者から一括で見積もりの提案を受けられる基盤を提供してきた。
クロスマートを活用すれば飲食店は仕入れコストを削減できる一方で、卸売業者としても新たな取引先を開拓することが可能。9月の資金調達時には約250店舗の飲食店と約50社の卸売業者が導入済みと紹介したが、その数はそれぞれ約300店舗・約100社まで拡大しているという。
今回スタートしたクロスオーダーは、そんなクロスマートの既存ユーザーの声から生まれたプロダクトだ。クロスマートが飲食店と卸売業者に新たな出会いを提供するのに対し、クロスオーダーでは既存の取引先間における受発注を効率化する。
構造はシンプルで、これまで主にFAXを通じて行っていた青果物の受発注をオンライン上で完結させるというもの。飲食店側はLINEを使ってスマホから発注先の選定や食材の注文を簡単に済ませられ、発注業務をスピーディーに実施することができる。卸売業者側も複数店舗からの受注データを一括でダウンロードできるため、FAXや電話で1件ずつ対応するのに比べて大幅な業務効率化を見込める。
「食品卸売業界の受注方法は約6割がFAXと言われており、現場では取引先(飲食店)から届くFAXの処理を早朝から行なっています。卸1社の取引先が200店舗の場合、単純計算で120枚/日、2400枚/月のFAX処理が必要で、そのためのスタッフを夜勤で2−3名雇用している会社も多いです」
「業務としては、FAXに書かれた注文内容を自社のシステムにミスなく転記するという作業です。クロスオーダーの導入により、人件費・用紙代・トナー代・FAX機のメンテナンス代などのコスト削減に加えて、より生産的な仕事にスタッフを稼働させることができます」(クロスマート代表取締役の寺田佳史氏)
寺田氏によると食材の中でも青果物は特にFAXによる注文比率が高く、注文頻度も多いそう。大手に限らず様々な規模の卸売業者が参入していることもあり、受発注プロセスに課題を感じている業者も少なくないという。
そもそも国産青果物は約8割が卸売市場経由で流通している状況で、今もなお卸売市場が重要なインフラとなっている。年間流通総額は野菜が約2兆5000億円、果物が約7000億円でトータルでは3兆円ほど。明確な課題があり市場も大きいため、まずは青果物に特化した受発注システムとしてローンチした。
クロスオーダーはクロスマートと同様に飲食店には無料で提供し、卸売業者から月額の利用料を受け取る仕組み(取引先店舗数による従量課金)。上述した通り従来FAXを転記する際に発生していた人件費やヒューマンエラーなどによるコストを削減できるのがメリットだ。
卸売業者は品目ごとに自動集計された飲食店からの発注データを用いて効率良く市場で商品を買い付けられるだけでなく、売りたい商品をスマホで撮影して訴求することも可能。飲食店へのサービス説明や導入支援はクロスマートが行う。
BtoBの受発注システムとしてはインフォマートが手がけるサービスなどもあるが、クロスオーダーでは主に個店〜小規模チェーンをターゲットにサービスを広げていく計画。ゆくゆくは青果物以外の食材も扱う方針で「『新しい価値を生み出す、食のマーケットプレイスをつくる』というビジョンにあるとおり、少しでも食の未来に役立つようなサービスを作っていきたい」(寺田氏)という。