食材を収穫前に“青田買い”できる「OWNERS」、良いものを作る人が報われるあるべき農業のかたち

食材を買い物をするとき、「このお店の野菜はおいしい」とお店を選ぶことはあっても、「この人が作った野菜はおいしい」と特定の生産者を理由に食材を選ぶことはほとんどない。店頭に並んでしまえば、トマトはすべてただのトマトになってしまうけれど、もちろんその1つ1つに生みの親はいる。それを思い出させてくれるのが、2017年9月に設立されたスタートアップのukka(ウッカ)だ。

ukkaが提供する食材のオーナー制度プラットフォーム「OWNERS(オーナーズ)」は、収穫量が少ないなど、一般の流通で出回ることが少ない希少な食材を、作る前の段階から文字通り“青田買い”できるサービスだ。

ユーザーは農産物を栽培する数ヶ月前からその“オーナー”として予約注文をすることができ、収穫された農産物はユーザーの自宅まで直接届けられる。栽培中に生産者とコミュニケーションが取れるのも特徴の1つだ。生産者は、事前予約制のOWNERSを利用することで生産管理もしやすく、食べてくれる人の顔が見れることで栽培のモチベーションも上がる。

たとえ生産者が美味しいと思っても、ある程度のロットが確保できない希少な農産物は既存の流通市場に乗りづらく、生産に着手するのはリスクとなる。事前予約制という仕組みを利用することで、そういった農産物でも気兼ねなく生産に着手できるのがOWNERSの良さだ。

消費者に直接販売できることから、価格決定権を中間の流通業者から生産者の手に移行することもできる。また、これまでは栽培という初期投資を経て、収穫してはじめて収入を得るというキャッシュフローだったが、栽培の前に収入を得られるOWNERSではキャッシュフローが改善するというメリットもある。

ukkaの共同創業者であり、米農家を営む家庭で育った小林俊仁氏は、「農業には若い就農者がいないという課題がある。本当に良いものを作っている人には、その人がどこにいてもファンができるような仕組みが必要だと思った」とOWNERS設立の経緯について語る。

小林氏はオンラインゲーム「剣と魔法のログレス」などを展開するAmingでCTOを務めていた人物だ。「自分がこれまで培ってきたプロダクトマネジメントなどノウハウを、社会的に意義のあるところに使いたい」との想いから、共同創業者の谷川佳氏とともに農業領域での起業を決めた。

そのukkaは本日、OWNERSのリニューアルを発表。これまでは“事前予約制の食材EC”という域を出なかったOWNERSだが、このリニューアルにより、栽培中の様子をオーナーたちに伝える「手づくり日誌」や、逆にオーナーから生産者に感謝の言葉を伝える「ごちそうさまコメント」などの機能が追加され、よりコミュニケーションを重視したプラットフォームに進化した。

過去にTechCrunch Japanで紹介した「SPOTSALE」や「fanicon」のように、企業や個人と、彼らに共感するファンとの間でつくるコミュニティサービスが増えてきている。「誠実に美味しいものを作っている人が報われる」世界をつくるというukkaのメッセージからも分かるように、OWNERSが目指すのも、より美味しい農作物をつくることに心血をそそぐ生産物と、それを心待ちにするファンとの間でつくるコミュニケーションサービスだ。今回のリニューアルで、ukkaはその実現に一歩近づいたと言えるだろう。

投稿者:

TechCrunch Japan

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