中古車を個人間で売買できるマーケットプレイス「Ancar」。同サービスを展開するAncarは10月29日、ベクトル、AGキャピタル、クロスベンチャーズ、個人投資家らを引受先とした第三者割当増資により総額4億円を調達したことを明らかにした。
同社にとっては2016年10月に日本ベンチャーキャピタルやニッセイ・キャピタルから約2億円を調達して以来、約2年ぶりの資金調達となる。今回調達した資金を基に新機能開発や人材採用、マーケティングを強化していく方針。具体的には購入ユーザー向けのローンやリース機能の追加、クレジット決済機能の導入などを進めるという。
近年メルカリを筆頭に、オンライン上にて個人間でモノや情報を売り買いできるC2Cマーケットプレイスが増えてきた。Ancarはその中古車特化版のサービスと言えるだろう。
一般的な中古車売買の構造では、売り手と買い手の間に買取業者やオークション業者、販売店など複数のプレイヤーが介在する。そのため中間コストが余分にかかり、売り手の売却額と買い手の購入額の間に大きな開きが出ていた。
Ancarの場合は買い手と売り手を直接マッチングするため、中間業者に支払う手数料を削減できるほか、消費税も非課税。結果的に従来の仕組みに比べると売り手は高く売りやすく、買い手は安く買いやすい。売買が成約した際にのみ双方から5%ずつ、合計10%のシステム利用料がAncarに支払われるモデルだ。(任意のオプション代のほか、輸送料や名義変更などの諸費用は別途買い手が負担)。
とはいえ、このような特徴は何もAncarに限った話ではなく、C2Cのサービス全般に言えること。それこそメルカリ上でも中古車の個人間売買はされているし、GMOカーズの「クルモ」や中古車の買取・販売大手のIDOM(ガリバー)が展開する「ガリバーフリマ」など特化型のフリマサービスも存在する。
中間コストや消費税をカットできるのはAncarの特徴のひとつではあるものの、それ以上に同サービスのウリと言えるのが購入前後のサポートだ。
「(扱っている商材が)車という特性上、高額であると同時に命に関わるものでもある。だからこそ売買のハードルを下げながらも、安全性や信頼性の担保も必要。ユーザーにとって安心できる場所じゃないと、高単価の車種を売買するのは難しい」(Ancar代表取締役の城一紘氏)
Ancarでは初期から売買のハードルとなる手続き面のサポートや、安全性を担保するための情報開示を行ってきた。
売り手ユーザーは車の写真を撮影し基本情報を入れればすぐに出品できる反面、買い手が購入前に整備工場へ無料で点検依頼できる機能も実装。気になった車の状態を第三者のプロに診断してもらえる仕組みを整えた。また車の輸送はもちろん、Ancarでは名義変更や車庫証明もサポートする。
中古車の売買に特化したC2Cサービスではいくつか近しいサポートを行っているものはあるが、事前点検から一連の工程をまるっとカバーしているのは珍しい。この仕組みを実現する上で不可欠な要素が、全国にある自動車整備工場とのネットワークだ。
Ancarでは2016年に整備工場の検索サービス「Repea(リペア)」をリリース。全国約1000店舗の整備工場と提携することで、ユーザーが車を取引する際のサポートはもちろん、アフターケアも充実させることができている。
結果的にAncarで売買される中古車の平均成約単価は約250万円と高く、城氏も「高級輸入車が多いのはひとつの特徴」と話す。
もちろん良い仕組みが整っていても肝心のユーザーが集まらなければビジネスとしては成立しないため、Ancarでは前回の調達以降、売り手ユーザーの集客や出品体験の改善に注力。1年前と比べて売却価格の査定件数や出品台数も約20倍に増え「暗闇の中で試行錯誤を続けてきた結果、出品量の確保については目処が立ち始めてきた」(城氏)という。
そんな状況下での今回の資金調達。集めた資金は出品者集めを加速させるためのマーケティング強化に加え、購入者側の体験改善に向けた新機能開発やそれに関わる人材採用に用いる計画だ。
たとえば購入者に対しては現在の現金振込のみの決済方法だけでなく、ローンの提供やクレジット決済の対応を早ければ2018年内に開始する予定。Repeaに登録されている整備工場とユーザーをAIでマッチングする機能などを導入していく計画もあり、サービス間の連携を強化して購入後のケアを受けやすい仕組みを整える。
また車を保有するにあたってのハードルと言える保管場所の問題や、保有コスト、次の買主が決まるまでの駐車場問題に関しても、それらを解決するサービスを新たに始める方針だ。
「Ancarというサービスだけではこの仕組みは成り立たない。Repeaと両方がうまく回ってこそ、ユーザーにとって安心でき、価値のあるサービスになる。そういった意味では単に中古車の売買を効率化したいわけではなく、買った後のメンテナンスや困りごとの解決など、ユーザーのカーライフをトータルでサポートしていきたい」(城氏)