1センチ単位でサイズの指定ができるオーダーメイド家具ブランド「Yourniture.(ユアニチャー)」を提供するユアニチャーは3月2日、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は3000万円だ。
引っ越しをしたことがある人なら分かると思うが、家具選びは楽しい反面、とても面倒くさい。その時にしか使わないであろうメジャーをわざわざ買い、測ったサイズを書いたメモを手に量販店に行く。でも、置きたいスペースにぴったりとはまる家具がないので肩を落として家路につく。
そんな人はオーダーメイド家具を注文できるYourniture.を試してみても良いかもしれない。同サービスでは、家具のサイズや色を自分好みにカスタマイズして注文可能だ。サイズは1センチ単位で指定でき、カラーも全11種類の中から選ぶことができる。
リリース時点でYourniture.が提供するのは「SIMPLE BOX」という木製の収納ボックスのみだが、同社は今後、扉つきの収納や机などのラインナップも増やしていく予定だ。その際には、扉の有無や足の数などのデザインも変更可能になるという。指定できるサイズの幅も大きい。今年中にラインナップに加わる予定の木製シェルフの場合、横幅が240〜30センチ、高さが120センチ〜60センチの間で自由に指定できる。
Yourniture.代表取締役CTOの堀江光氏は、同サービスのカスタマイズシステムについてこう話す
「Yourniture.のシステムは『ある対象を因数分解しておき、本体をカスタマイズしたことによる影響を、それぞれのパーツに反映させる』もの。どんな家具でも、分解すれば個別のパーツに分かれる。(同システムでは、)本体に何かしらの変更を加えることで、各パーツの加工内容(工程)にどのような変化があるかを自動で算出する。そのため、家具の種類や形状に関わらず、どんなものでもカスタマイズが可能だ」(堀江氏)
Yourniture.のようなカスタマイズを前提とするサービスの場合、どこまでカスタマイズ性を持たせるのかという点が悩みどころだと思う。大抵の消費者は、店頭に並ぶ商品をみて好みのもの見つけることはできるが、「じゃあ今から好きな家具デザインして」と言われると困ってしまうのと同じだ。その点、Yourniture.ではユーザーの用途(文庫本を入れるなど)に併せて適切なサイズを提案し、ユーザーはそれを基準にして細かなところをカスタマイズできるようになっている。
また、そのようなオーダーメイド家具を「量販店と同等の価格で」購入可能だと言うのがYourniture.の特徴だ。ちなみに、各辺30cmの正方形型としてサイズを設定し、カラーを白にしたボックスの場合、価格は3219円だった。
それを可能にしたコスト削減施策として同社は3つの要素を挙げている。
1つ目は、従来は職人が行っていたという家具のサイズの計測、色やデザインの指定を顧客自身がオンラインで行えるようにすることで、それを基にした価格の算出を自動化したこと。2つ目に、ユーザーが入力した変数をもとに生産工場に送る「製造指示書」作成の自動化。そして最後に、自社が製造した製品を自社のECサイトで販売するD2Cのモデルにより、不要なコストを削減したことを挙げている。
Yourniture.代表取締役の峯浦望氏は、これらの3つの施策により「家具製造のコストを約50%削減できた」と語る。ここには挙げられていないが、製造を人件費の安いインドネシアの提携工場で行っていることも1つの要因ではあるだろう。
量販店と同等の価格を実現したとするユアニチャーだが、時間の短縮についてはまだ試行錯誤が必要だと峯浦氏は話す。実際、構造がシンプルな「SIMPLE BOX」でも、注文してから自宅に届くまで5週間ほどの時間がかかる。
「良いものを作るときには、時間とお金がかかるという考え方を変えたい。“お金”については実現できたが、“時間”についてはまだまだ。ユーザーが指定したサイズなどの情報が直接ロボットに入力され、そのまま製造が始まるようにするなど、自動化の余地はまだある」と峯浦氏は語る。