スマートフォン1つあれば映像を流せるライブ配信サービス「ツイキャス(TwitCasting)」。10代〜20代を中心にして、今やユーザー数800万人を超えるこのサービスが、一部ユーザー向けに高画質での配信を開始した。
今回提供するのは、画質が通常配信(180〜270p)の1.5〜3倍となる「高画質配信」と、画質が720pになる「HD配信」の2つ。いずれも画質だけでなく、音質も向上させている(正確な数値は公開されなかったが、通常配信では「○」「◎」という表記になっている音質が、◎以上になるそうだ)。高画質配信については、ツイキャスのサイト上から申し込んだユーザーに対して、その内容を精査して逐次招待する。HD配信に関しては、現在約50件ある企業やアーティストなどの公式アカウントに限定して提供していく。なお、当初はPCでの配信に限定して機能を提供する。
法人を中心に高画質化の要望
モイによると、今回の高画質配信は、キャス主、つまり配信者側の要望を叶えたものだという(ちなみに試験的に高画質動画を配信したところ、閲覧者からはあまり大きな反響がなかったそうだ…)。ツイキャスの強みといえば、双方向でのコミュニケーション。配信の9割はキャス主と視聴者の雑談だそうだが、最近ではアーティストやパフォーマー(タレント)なども増え、ファンとの交流の場として利用されることも少なくないそうだ。
双方向のコミュニケーションによって人が集まる場所だからこそ、ライブをやることでも価値が出ると認識され始めているのだという(逆に言うと、どんなに画質や音質が良くても、人を集める仕組みがないサービスにニーズがなくなってきているということだろうか)。例えばシンガーソングライターの井上苑子さんのキャス(配信)などは、同時視聴者数で約2900人、1回の配信で合計約3万4700人の視聴者数になったこともあるという。なお、法人やアーティストが公式アカウントを取得する場合、個別にモイに問い合わせる必要がある。
そうなると当然レコード会社や音楽プロダクションなどからの問い合わせも増えてくるのだが、そこで課題になるのはその画質や音質。ツイキャスは3G回線でも閲覧できるようチューニングされているが、それは画質や音質である程度妥協しなければならないのは事実。しかし公式アカウントを望むような法人としては、Ustreamに代表されるようなモバイルにこそ特化していないが、高画質・高音質に対応するといった競合サービスと同じ品質でライブを配信したいというニーズは大きい。そんな彼らのニーズあって今回の機能提供に至ったようだ。
法人向けのマネタイズは未定
さてそんな高画質配信。これによって既存のアイテム課金に加えて、いよいよ法人向けのマネタイズが始まるとも思ったのだけれども、モイ代表取締役の赤松洋介氏いわく当面有料化する予定はないそうだ。「(ビジネスとしての)刈り取りの時期はまだまだ先。法人向けの事業は固い商売になるが、例えばクラウドサービスなら『絶対に落ちない』ということを保証するように、やらなければならないことがある。そこをまず我々がやってからだ」(赤松氏)