今年の始め、Facebookは法人版SNSであるFacebook at Workの全貌を明らかにした。Facebook at Workは、従業員専用のSNSを開設したい法人向けのサービスだ。数ヶ月のパイロット検証の後、Facebookはこれまでで最大の法人顧客を獲得したと発表した。ロイヤルバンク・オブ・スコットランドだ。RBSは、来年の3月までに3万人の従業員をFB@Workのネットワークに加入し、2016年末までに全従業員10万人の登録を行う計画でいる。
この提携は、Facebook at Workの新たなフェーズを象徴するものだ。Facebookがコンシューマー向けプロダクト(現在デスクトップの月間アクティブユーザーは15億人 、モバイルは13億人だ)だけでなく、B2B向けでもスケールを目論んでいることを表している。また、法人もFacebookのこの施策を真剣に検討していることを示している。
ロンドンに拠点を置くFacebookのグローバルプラットフォーム・パートナーシップのディレクターを務めるJulien CodorniouがFacebook At Workを担当している。彼は、法人版Facebookの利用法人の数は300社に上ると話す。
中には有名企業の名前もある。アメリカの拠点で商品のテストをしている飲料メーカーのHeinekenや、不動産会社のCentury 21の4000名の従業員もこのプラットフォームを利用している。
Facebookはこれらの企業に課金していないが、将来的にはその計画だ。
「まだベータ版ですが将来的にはフリーミアムのビジネスモデルでマネタイズする計画です」とCodorniouはインタビューに答えた。「また、Facebook at Workを世界中で展開するための営業とマーケティングチームを構築しているところです」。
それに加え、Yammer、SalesforceのChatter、Hipchat、そして急成長しているSlackといった法人向けコミュニケーションプラットフォームと真正面から対抗するために、サービス自体も進化している。
Codorniouが「毎回誰かが複数の人やリストを使ってメールを送信する度、そこにFacebook at Workのビジネスチャンスがあると考えています」と言うのは偶然ではないのだろう。メールの多用やメール上のミスはそれこそSlackのCEOで共同ファウンダーである Stewart Butterfieldが、彼のプロダクトが解決しようとしている問題であると主張していることだからだ。
FB@Workの使い方
コンシューマーが親しむプロダクトを法人向けのセキュリティーが高く安全なコラボレーションプラットフォームとして利用することについては、多少奇妙な印象を受ける。
しかしこのSNSにとって、法人向けは大きな利益が得られる賭けだ。法人向けサービスは利益率の高い領域で、特にコラボレーションソフトウェアの業界規模は2018年には80億ドルになると予測されている。
Facebookはビジネスモデルの大部分を広告に頼っている。もしFacebook at Workの売上が伸びるようなら、同社はビジネスモデルを多角化し、全く別の分野にも拡張できる可能性が広がるだろう。
現在のFacebook at Workは基本的な機能を持ち、セキュリティーが高く、非常に高い塀に囲まれた庭(ウォールド・ガーデン)バージョンのFacebookだと言える。Facebookが自社で開発し、最初に利用していた。Workのネットワークのユーザーは、他のユーザーと友人になったり、フォローしたりすることで、それぞれが掲載した仕事上のアップデートを見ることができる。
また、Workのアカウント内にグループを作成し、承認を得て参加することができる。例えば、どこかの部署が取り掛かっている特定のプロジェクトのマーケティング施策専用のグループを作ることができる。ユーザーは他のユーザーに直接メッセージを送ったり、音声通話や動画通話をしたり、さらに画面共有したりすることもできる。
RBSでは、カスタマー対応に関わる問題解決のための専用グループを従業員同士で作成することはできるが、RBSのFacebook at Workは同社のカスタマー対応のオペレーションや従業員のプライベートのFacebookのプロフィールとは分かれている。(2つのSNSが連携することはなく、ユーザーはそれぞれに別のアカウントを持つ。)
Facebook at Workでは、まだ他のアプリケーションと連携して機能を拡張したり、他のサービスをFacebook at Workで利用することはできない。追加機能として例えば、CodorniouはOffice 365の対応を挙げている。Facebookは基本的なプロダクトの利用に課金するのではなく、外部の機能に対応し、それらの機能を利用するのに課金する形でFacebook at Workを売り込む計画のようだ。
RBSは、Facebook at Workのトライアルを行っていた企業の一つで、同社はそれを機にさらに広く利用することを決めたという。
「パイロット検証を経て、今後もさらにこのプロダクトを利用する準備が整いました」とロイヤルバンク・オブ・スコットランドの事務局チーフを務めるSimon McNamaraは言う。彼は、RBSでのこのサービスの展開を担当している。「検証でプロダクトを取り入れた人の割合は予想を上回る90%に達しました」。
このサービスを検討している他のアーリーアダプターと同じように、RBSの利用の決定は、「コンシューマー向けサービスに近寄るIT」という大きなトレンドを示唆するものだ。仕事をしている人でもオフィスの外では多くのテクノロジーを活用している。彼らはビジネスの場面でも、それらと同じように簡単に(そして楽しく)使えるソフトウェアやハードウェアを求めているのだ。
「多くの人がプライベートでFacebookを使用しています。それは、誰かに使い方の研修をする必要がないということを意味します。いくつかの部分は異なりますが、類似点の方が多いのです」。
それと同時にRBSは、人が互いにより関わることのできるコミュニケーション方法を求めていたという。例えば、誰かが書いた文章を読むだけなく、そに反応を示すことができる方法を探していた。
McNamaraは、Facebook at WorkのネットワークでRBSのチームが共有している情報の種類は、これまで同社の内部ウェブサイトに投稿していたものやメールで共有していたものが多い。彼はグループ内でアイディアを共有するためのツールとしての「メールの利用頻度を減らしたい」と言う。「メールは、人があまり読まない配信システムになっています」と話す。
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