これは公式だ。米国の政府機関のデータによると、2020年は記録上最も暖かい年の1つであり、記録上最も暖かかった2016年をしのぐか、わずかに届かない水準だった。米航空宇宙局は2016年とほぼ同じだったとしているが、 米海洋大気庁(NOAA)は2016年にわずかに届かなったとしている。
ニューヨークとワシントンD.C.に本拠を置くNOAA内にあるNASAのゴダード宇宙科学研究所(GISS)の科学者らによると、順位はともかく、気候に関する趨勢は良いものだとはいえない。
「過去7年間は、記録上最も暖かい7年間でした。進行中の劇的な温暖化傾向を象徴しています」とGISSディレクターのGavin Schmidt(ギャビン・シュミット)氏は声明で述べた。「ある1年が記録的であったかどうかはそれほど重要ではありません。重要なのは長期的な傾向です。こうした傾向と、人間が気候に与える影響が増大するにつれ、私たちは記録が破られ続けると予想しなければなりません」。
2020年に記録を更新した22件の気象・気候災害のコストを考えると、それは国家に対する厳しいメッセージだといえる。NOAAによると、気候関連の災害により少なくとも262人が死亡し、さらに多くの人が負傷した。
また山火事、干ばつ、熱波、竜巻、熱帯低気圧、テキサス州の雹の嵐や中西部を破壊したデレチョ(と呼ばれる嵐)などの悪天候などにより、国は950億ドル(約9兆9000億円)の損失を被った。
いずれの政府機関も気温の傾向を追跡し、人間の活動、特に温室効果ガスの排出が地球に与える影響を何らかのかたちで把握している。注目すべきは、19世紀後半に産業革命が始まって以来、人間の活動がすでに地球の平均気温を華氏2度(摂氏1.1度)以上上昇させてきたということだ。
科学者にとって最も厄介なのは、2020年の記録的な気温が、エルニーニョとして知られる気候現象による後押しなしに起こったことだ。エルニーニョは大規模な海洋と大気の気候相互作用で、周期的な温暖化に関連がある。
「前回記録的に暖かかった2016年は、強力なエルニーニョが強く影響しました。2020年はエルニーニョが同じようには寄与していません。これは温室効果ガスにより気候そのものが温暖化し続けている証拠です」とシュミット氏は声明で述べた。
NASAによると、文字通りの温暖化傾向は北極圏で最も顕著だ。北極圏の気温はここ30年間で世界の他の地域の3倍の速さで上昇したとシュミット氏はいう。北極海の海氷が失われると(年間最小面積は10年で約13%減少している)、この地域の反射が少なくなる。そして、より多くの太陽光が海に吸収され、気温がさらに上昇する。
テキサス工科大学のKatharine Hayhoe(キャサリン・ヘイホー)教授は、気候変動の加速影響は世界全体にとって危険となる可能性があると、ワシントンポストに電子メールで寄せた。
「私たち気候科学者が真夜中も眠ることなく考えているのは、地球の気候システムにおける自己強化または悪循環について私たちが知らないことは何かということです」とヘイホー氏は書いている。「私たちがこの惑星の人類文明の歴史で経験した以上の速さで進めれば、深刻で危険な結果を招くリスクが高まります。そして2020年、私たちはそれを目の当たりにしました。気候変動の影響がいつ現れるかというのはもはや問題ではありません。それはすでに今、目の前にあるからです。残っている唯一の問題は、それがどれだけ悪化するのかということです」。
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(翻訳:Mizoguchi)