2021年にSpotifyのポッドキャストリスナー数がアップルを上回るとの予測

Spotifyはポッドキャスティングに多額の資金を投入し、投資家たちは有料サブスクリプション利用者が増え収益が改善してその資金投入に見合う結果が出ることを待っている。しかし結果を出す前に、Spotifyは同社のアプリでポッドキャストを聴く人をもっと増やさなくてはならない。その面で同社には勢いがある。新しい市場予測によると、2021年にSpotifyでポッドキャストを聴く米国のリスナーは1カ月2820万人以上、Appleのポッドキャストリスナーは2800万人となり、SpotifyがAppleを初めて上回ると予測されている。

eMarketerのアナリストは、2021年にSpotifyのポッドキャストリスナーが41.3%増え、その結果逆転が起きると見込んでいる。

さらにその後の2年間でSpotifyはAppleとの差を広げ、2022年までにSpotifyの米国ポッドキャストリスナー数が月間3310万人に対しAppleは2850万人、2023年までにSpotifyが3750万人でAppleはほぼ横ばいの2880万人と予測されている。

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eMarketerは、同社が2018年にポッドキャスト市場の調査を始めて以来Appleのリスナーのシェアは減少していると指摘する。2018年のシェアは34%だったが、2021年には23.8%に下がる見込みだ。

全体としては、米国で毎月ポッドキャストを聴く人は2021年に1億1780万人となり、対前年比で10.1%増えると予想される。ポッドキャストリスナーは毎月デジタルオーディオを聴く人の53.9%となり、初めて50%を超えるだろうとeMarketerは述べている。この成長はSpotifyにとってはメリットがあり、Appleにとっては痛手となりそうだ。

SpotifyやAmazon、Pandoraなどのストリーミングミュージックサービスが音楽とポッドキャストを組み合わせてエクスペリエンスを統合しているのに対し、Appleはポッドキャストを専用アプリとして分けている。このため、ストリーミングで音楽を聴いている、あるいは聴くつもりだったがやはりポッドキャストを聴こうとか、逆にポッドキャストから音楽へというクロスオーバーが起きにくい。Apple以外のアプリでは音楽とそれ以外のオーディオとの切り替えが簡単だ。Pandora Stories、SpotifyのShows with Musicメディアをミックスしたプレイリストのように、音楽とポッドキャストを組み合わせる聴き方もある。

eMarketer予測アナリストのPeter Vahle(ピーター・ヴァーレ)氏は「ポッドキャストと音楽を1カ所にまとめることで、Spotifyは短期間でデジタルオーディオのすべてが揃う便利なワンストップショップになりました。Appleは長くポッドキャストのデファクトの配信場所でしたが、近年ではポッドキャストのコンテンツとテクノロジーに関してSpotifyの投資とイノベーションのペースについていっていません。Spotifyは独自のホスティング、制作、収益化ツールに投資し、ポッドキャストのクリエイターと広告主を育てています」と述べている。

Appleは現在もポッドキャストに関して実験をしているようだ。最近ではエディターによるキュレーションを増やして質の高いポッドキャストに目を向け始めている。Apple TV+の「For All Mankind(フォー・オール・マンカインド)」に関連するポッドキャスト音楽を取り上げるポッドキャストのようなオリジナルのプログラムもいくつかリリースした。しかしAppleはポッドキャストに関する市場の勢いはほとんど無視しているようで、代わりにストリーミングTVや映画、あるいはサブスクリプションベースのフィットネスといった新しい分野への拡大に取り組んでいる。

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Spotifyは買収によってオリジナルや独占のプログラムをすでに手に入れ、次へ進もうとしている。例えば2021年2月下旬には、有料ポッドキャストのサブスクリプション、ブログをポッドキャストにするためのWordPressとの統合、ポッドキャストをインタラクティブにするツールなど今後登場するプロダクトや機能を多数発表した。インタラクティブ機能は、Clubhouseなどソーシャルオーディオアプリが関心を集めていることへの対策だ。

Spotifyは新たにポッドキャスト関連の広告ビジネスにも投資し、オーディオ広告マーケットプレイスのSpotify Audience Networkを始める計画だ。

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eMarketerの予測からすると、Spotify Audience Networkは良いタイミングでの開始になると思われる。eMarketerは、ポッドキャスト広告は2021年に初めて10億ドル(約1073億円)を超えて前年比41%増の12億8000万ドル(約1373億4000万円)に達すると予測している。この数字は今後も増え続け、2021年にはデジタルオーディオ広告全体のうち24%をポッドキャストが占め、2024年には29%になると見られる。

Spotifyがポッドキャストリスナーを実際にどの程度有料サブスクリプションに転換できるか、あるいは広告による収益化がうまくいくかどうかは、もちろんこれから見ていかなくてはならない。ウォール・ストリートジャーナルが2020年第4四半期の収支報告に関する記事で最近指摘したように、何といっても現在のSpotifyは損失を出しているのだ。これは、同社が当面は利益を出すよりも、サブスクリプション利用者の増加とポッドキャスティングに対する投資を引き続き優先していることによる。そして同社の独占モデルには問題があるかもしれないと示す兆しがいくつかある。例えば2020年には同社にとって初の大物ポッドキャストスターであるラッパーのJoe Budden(ジョー・バドゥン)氏との契約を更新できなかった

一方のAppleも独自のポッドキャストサブスクリプションサービスを模索しているようだ。クラウドストレージ、ストリーミングTV、ゲームなどのサービスとバンドルした価値の高いサブスクリプションを検討していると見られる。Amazonはポッドキャストへの投資としてポッドキャストネットワークのWonderyを買収した。これらの要素が今後数年間の動向に影響して、今回発表された成長予測やSpotifyの今後のポッドキャストリスナー数の増加を鈍化させるかもしれない。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

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