「どのバージョンを使ってるのか? 編集作業はどこまで進んでるのか? エクスポートになぜこんなに時間がかかるのか?」 新しい共同作業ツールの登場で読者はそういう悩みから解放されるはずだ。今日(米国時間12/3)、ブラウザ・ベースのデザイン・コラボレーション・ツール、Figmaが登場し、Adobeのデスクトップ・ソフトに強力なライバルが誕生した。
Figma は常時、作業内容をクラウドに保存する。またバージョン管理機能も内蔵しているので、クリエーターのチームは煩わしいことを考える必要なく、リアルタイムで自由に編集、閲覧、コメント、ダウンロードなどができる。現在公開されたのは無料のプレビュー版で、ウェイト・リストの登録者が順次招待されているところだ。
Figmaの共同ファウンダーはわずか23歳のThielフェロー、Dylan Fieldだ。またGreylock PartnersのJohn LillyはFigmaに対する1400万ドルのシリーズ Aラウンドをリードしたことを発表した。このラウンドにはIndexも参加し、400万ドルを投資している。FigmaがAdobeの対抗馬になることへの期待はそれだけ大きいということだ。
共同作業ツールというアイディアがどこから来たかについて、Fieldは私の取材に答えて、「私はオンラインで育った。実際、10年前に発表されたオンラインのGoogleドキュメントをすぐに使い始めたんだ」と語った。するとFieldは当時13歳だったことになる。
ブラウン大学に進学したFieldはそこでWebGLの天才でPixarとMicrosoftの仕事をしていたEvan Wallaceと出会い、2人はFigmaをスタートさせた。しかしAdobeのプロダクトのライバルを開発するのは容易なことではなかったという。「それでこんなに長くかかってしまったんだ。われわれがプロジェクトをスタートさせたのは3年前だった」とFieldは語った。
簡単に言えば、Figmaのコアはブラウザ版のPhotoshopだ。ブラウザを選択することによってデスクトップ版にくらべていくぶんクリエーティブな機能や対話性を失うことになった。しかしブラウザ版であるため、ユーザーの作業は常時、自動的にクラウドに保存される。共同作業やバージョン管理の機能も予め組み込まれている。「戻る」ボタンで作業を取り消すこともできた。また頻繁にDropboxに保存してチームにメールで知らせる必要もなくなっている。
Figamaのユニークな機能の一つはコメント用サイドバーだ。チームのメンバーはプロダクトを離れることなくここにコメントを書き込んで提案やレビューを行うことができる。またモニターのサイズに合わせて画像が表示されるのでデバイスを変えても不自由を感じることがない。また開発したインターフェイスがiPhone 6やiPadなどのガジェットでどう表示されるのか、実際に試してみることができる。
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Figmaには15人の社員がいるが、さらに急速に陣容を拡大中だ。これまでに調達した総額1800万ドルの資金は、Greylock、Index、OATV、ICONIQ、それにLinkedInのCEO、Jeff Weiner、ホワイトハウスの最高データサイエンティスト、DJ Patil、WealthfrontのCEO、Adam
Nash、Dropboxの前チーフ・デザイナー、Soleio Cuervoらの投資によるものだ。
Figmaが計画しているビジネスモデルは主としてサブスクリプション収入を中心とするSAASだが、Fieldは一社当たり定額になるのか、ユーザーの人数に応じた従量制になるのかなど課金方法の詳細についてはまだ決定していないという。
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しかしAdobeのライバルになろうという野心を抱いているのはFigmaだけではない。デスクトップ版のシリアスなデザインソフトとしてはSketchがある。共同作業に強いプログラムならWakeのツールが極めて軽く、高速だ。プロタイプづくりに適しているといえる。またわれわれも報じたY CombinatorのZeplinも注目される。.
そうしたライバルは多いが、Figmaは大きく成長してAdobeと正面から戦うことになりそうだ。.「やりがいのある挑戦だ」とFieldは結論する。
Figmaのの使命は「想像力と現実の間のギャップを埋めるツールを作ること」だという。Fieldは「人生でこれ以上興奮させられる仕事はとうてい考えられない」と語った。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)