5月8日(米国カリフォルニア時間)、500 Startupsがデモデーをマウンテンビューで開催した。これまで500 Startupsはマウンテンビューでアクセラレータープログラムを実施してきたが、今回デモデーに参加したスタートアップは、500 Startupsとして初めてサンフランシスコで実施したアクセラレーター・プログラムに参加した面々だった。
1000社以上の応募の中から選ばれた29社がプレゼンテーションを行ったが、今回は、日本の皆さんにも関係がありそうな企業にしぼって何社か紹介をしよう。
Remark
Remarkは、動画生成のための共同作業のための環境を提供する。全米だけでも25万人の動画関連のプロフェッショナルがいると言われている中で、彼らとのコラボレーションは主にEmailや電話などを使って非常に骨の折れる作業だった。Remarkは、米国企業に限らず、日本企業にとっても、コンテンツマーケティングのための動画や、急拡大している動画広告市場に向けても、効果的な動画生成環境を提供してくれることは間違いない。こういったクリエイティブな労働力に関してもクラウドソーシングが重要になっていく中で、非常に強力なツール、協働環境を提供してくれる。既にTEDやGeorge Town大学が導入している。
SoundBetter
SoundBetterは、ミュージシャンのための音楽制作に関わる仕事のクラウドソーシングを提供する。音楽制作には、楽曲自体を作ってレコーディングをした後にも、ミックスやマスタリングといったポストプロダクションが必要になるが、SoundBetter上で、これらの専門家を探してクラウドソースすることが可能だ。創業者のShachar Giladはミュージシャン、プロデューサーとしての経験と、AppleやWaves Audioのソフトウェア開発にも携わった経験があり、楽曲制作者とその周辺の支援者の両方の立場から、現場の課題を解決するためにSoundBetterを創業した。日本からもSoundBetter経由で5000人のプロフェッショナルに仕事を依頼することができるし、逆に、日本にいながらも、世界中から投稿されている5万件以上の(例えば、ハリウッドの)楽曲制作に関するプロジェクトに携わることができる。
Shippo
Shippoは、1つのシンプルなAPIで、イーコマースの配送を簡単に低コスト化する。既に、150万パッケージの配送を受注していて、2014年のランレート(今年のこれまでの売り上げから通年の売り上げを予測したもの)は、100万ドルを想定している。また、eBayのグループ会社であるエンタープライズ向けイーコマースプラットフォームのMagentoとの統合を発表し、Magento上で製品を販売するセラーは、背後にあるShippoのAPIのおかげで、何も気にすることなくDHL、UPS、FedEx、US Postal Service等から最安値の配送オプションが選択されるようになっている。通常のUS Postal Serviceで依頼した場合26.65ドルかかる配送料が、5.82ドルとなり78%をセーブすることができる。日本製品のブランド価値は高いので、例えば、日本から海外向けに発送する販売業者やイーコマースサイト運営業者には、強力なツールとなることは間違いない。
EquipBoard
EquipBoardは、ミュージシャンなどのセレブリティが使用している楽器やツールなどを見つけて購入することができるサイトだ。僕も子供の頃にギターを弾いていたので、大好きなミュージシャンが使用するギターや、エフェクター、シールドなどを雑誌の写真を隅から隅まで凝視して、いくつもの楽器屋を回ったことを覚えている。僕は今でも、大好きなサッカー選手のはいているスパイクや、プロのサイクリストが使っているホイールやサイクルコンピュータをいつも一生懸命Googleで調べている。EquipBoardは、このようにセレブリティやアスリートのファンが集う場所でもある。これからスポーツやファッション等にも分野を拡大していくとのことで、大いに期待している。
WhalePath
WhalePathは、ビジネスのためのオンデマンドのリサーチをクラウドソーシングで提供している。毎年、ビジネスのリサーチには、240億ドルもの費用が投じられている。WhalePathでは、より一般的で、時間もかかり、高コストな既存の大手リサーチ会社よりも、3倍早く、半分のコストで、100%カスタマイズしたリサーチを提供する。このために、すでに200人以上のハーバード大学やスタンフォード大学、UCバークレー等の修士および博士取得者に直接仕事を依頼できるようにしているのみならず、AfterCollegeを通じて、300万人いると言われている同様の卒業生にもアクセスできるようにしている。2014年は、100万ドルのランレートを見込んでおり、パナソニックやオラクルのような大手企業も既に採用している。WhalePathは、日本に関する需要が拡大すれば、リサーチャーを日本からも募ることを検討しているとのことなので、今後、日本企業が米国や英語圏での調査を依頼するときに便利であるのみならず、米国企業が、日本のリサーチャーに日本語でしか見つけることができないリソースをもとにしたリサーチを依頼できるようにもなっていくかもしれない。
なお、全社のリストはここから参照できる。
(情報開示:筆者はAppSocially Inc.として、500 Startupsの6期生のプログラムに参加している。今回はTechCrunchの記者としてデモデーに招待された)