反転授業の効果は試験の点で5%アップ…それが”大きな成功”と言える理由

今、全国の学校で、テクノロジを部分的に利用する授業形式“反転授業”が普及しつつある。それは、児童生徒が講義のビデオを家で見て、教室ではそれについてディスカッションをする、という方式だ*。3年前にKhan AcademyのSalman KhanがYouTubeで行ったビデオ講義で世の中の関心が盛り上がり、研究者たちがそれを研究している間もないぐらい急速に、賛同者が増えていった。〔*: flipped classroom, 日本語Wikipedia日経記事。〕

そしてこのたびやっと、反転授業の複数年にわたる研究の報告書が出て、それによると、講義を家で見た生徒の方が試験の点が5.1%高かったという。ぼくは教師経験があるから分かるのだが、試験の平均点が100点満点で5点上がるということは、相当すごいことなのだ(後述)。だからこの研究結果は、講義を捨てて教室では体験学習を重視したいと考えている先生たちを勇気づけるだろう。

この研究報告はAcademic Medicine誌とThe American Journal of Pharmaceutical Educationに載る予定だが、薬学部の学生の場合、反転授業を受けた者の方が講義型の学生よりもやや結果が良かった。高校生や大学生の多くが今ではタブレットを持っているから、講義は家で自分のペースで見ろ、というタイプの先生が増えている。そして教室では、質疑応答や、そのほかの対話型プロジェクトに時間を割くのだ。

5%という数字に感動しなかった人に申し上げたいが、ぼくが集めた1980年代以降の研究報告…高校での授業科目や教え方と大学での成績の関係…のどれを見ても、その差は最大でせいぜい2~4%なのだ。

公共政策のシンクタンクMDRCの調査研究によると、学習者の年齢が上がるにつれて、教育方法の変化や“親の教育参加”(Intervention)がもたらす効果は急激に小さくなる。1学年の場合は、親の教育参加によって落ちこぼれ(授業についていけない子、試験の結果が落第点の子)はほぼなくなるが、高校生になるとその効果は半分ぐらいに落ちる。年長の子では、改良効果が(試験の点のアップで)6%よりも高くなることはない。

子どもの声が甲高くなくなる年齢ごろから、教育そのものの学習に及ぼす効果は相対的に低くなる。そして、IQや子育ての質、本人のモチベーションなどが、より重要な要素になる。

カリフォルニア州立大学機構サンノゼ州立大学で行われた実験的なオンライン課程に関するNational Science Foundation(米国科学財団)の報告書も、いちばん重要なのは学生自身の努力だ、と言っている。

少なくとも今の形では、教育は奇跡を起こさない。すべての学生をアインシュタインにする方法を、われわれは知らない。しかし、試験ですこしでも多く正解を書けるようにはできる。教師は、学生の将来をコントロールできない。…そしてこういった限界の中で見るかぎり、反転授業がもたらした結果はとても大きな成功だと言える。しかし教育それ自体には、学生自身の資質や関心やモチベーションほどの、大きな力はない。

[画像クレジット: Flickr User Intelfreepress]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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