受験生だったころ、重要なポイントや中々憶えられない事柄をオリジナルの単語帳にまとめて、直前まで必死に見返したことをよく覚えている。
当時は市販の単語カードに1枚1枚手書きで問題と解答を記入していく“アナログ”なスタイルが一般的だったけれど、今はあらゆるものがテクノロジーの影響を受けて“デジタル”になる時代だ。単語帳だってその例外ではない。
今回紹介する「Monoxer(モノグサ)」は学習者の記憶度に応じて問題形式が自動で最適化される、記憶のプラットフォーム。AIやパーソナライズといった概念が珍しくなくなった現代版の単語帳とも言えるだろう。
同サービスを提供するモノグサは12月17日、UB Ventures、iSGS インベストメントワークス、ツネイシキャピタルパートナーズから総額約1億円を調達したことを明らかにした。
記憶度に合わせて問題の形式や難易度を自動で調整
Monoxerは憶えたい(させたい)情報を取り込むことで、知識を定着させるために最適な問題を自動で生成してくれる学習アプリだ。
ユーザーがやるべきことは正解となる情報を登録するだけ。たとえば英単語であれば「apple = りんご」といった具合にコンテンツを準備していく。appleとりんごのようにテキストだけでなく、画像や文章を登録することも可能で、フラッシュカード形式の問題を始め画像選択問題や文章の虫食い問題にも対応する。
特徴的なのは、各ユーザーの記憶度に応じて問題の出題頻度や難易度が調整されること。出題のタイプも「4択、5択、自由入力、写経」とバラエティに富んでいて、同じユーザーでも進捗に応じて形式や選択肢が変わる。
記憶度が低い状態の時はすでに憶えている単語を選択肢に入れたり、自由入力ではなく写経モード(答えをなぞる形式)にしたりなど少しでも正解しやすいように出題。一方で知識が身についてきた段階では紛らわしい選択肢を提示したり、自由入力形式にすることで確実に憶えていないと間違うように難易度をあげる。自由入力に至っては表示されるキーの種類や位置も異なる。
Monoxerが面白いのは、これまで人間が担っていた問題の作成を機械が担当する点だ。AIを活用してサービス上に蓄積された各ユーザーの記憶度をリアルタイムに分析・計測し、取り組むタイミングに合わせて毎回最適な問題を生成。これを人力でやるのは相当ハードルが高い、というかコストなども踏まえると不可能に近いのではないか。
アプリは誰でも無料で使うことができるが、現在は塾や予備校など教育機関をメインターゲットとした法人向けのSaaSモデルを軸に展開。2018年5月に本格稼働をしてから複数の機関ですでに有償導入されているという。
法人向けプランでは管理者がコンテンツをインポートし、参加者がアプリを使って学習を進める。専用のスクールとクラスを作成する機能のほか、コミュニケーション用の掲示板やクラス毎に単語帳を配信できる機能、各参加者の進捗や記憶度を分析できる機能などを備える。
アナログだった“自学自習”を効率的に
モノグサは代表取締役CEOの竹内孝太朗氏と代表取締役CTOの畔柳圭佑が2016年に共同で創業したスタートアップだ。
竹内氏はリクルートで中古車領域の広告営業を経験した後、リクルートマーケティングパートナーズでオンライン学習サービス「スタディサプリ」に携わっていた人物。畔柳氏はGoogle出身のソフトウェアエンジニアだ。
そんな2人が起業をしてMonoxerを立ち上げた背景には、テクノロジーを活用することで学習時間の大半を占める“自学自習”をもっとシンプルにできるのではという考えがある。
「近年スマホやインターネットを使った学習が一般化してきていて、特に授業動画などを活用したインプット系のサービスが増えている。一方で圧倒的に多くの時間を費やすアウトプットについては、未だにアナログな部分が多い。(テクノロジーを上手く用いれば)学習者は紙よりも効率的に学習でき、管理者も各自のデータを基に適切なサポートができる」(竹内氏)
とはいえ、学校や塾が自分たちでスマホ用の問題を作るには時間と手間がかかる。そこで基となる情報をインポートしさえすれば、自動で問題が生成される仕組みを構築。今後は教科書会社などのコンテンツプロバイダーがMonoxer上で問題集を販売できるマーケットプレイス機能なども提供していく計画だ。
また教育機関だけでなく企業への展開にも取り組む方針。特に外国人労働者を抱える企業では従業員教育においてMonoxerを活用できるチャンスがあるそうで、今回出資を受けている常石グループとはこの分野における協業も検討していくという。