AIが読書履歴を元にその人に合った良書を薦めるBingeBooksの新サービス

パンデミックは多くの業界にひどい影響を与えているが、出版業界は過去10年間に渡った陰鬱な日々の中で、まれに見る刑の一時的猶予を与えられている。家の中に閉じ込められ、他者との間のソーシャルディスタンスの維持を強制された私たち人間は、手のひらからこぼれ落ちるほどの時間を持ち、これまで以上に本のキャラクターたちとの結びつきを必要としている。

そうした本への関心の高まりは、起業家たちによる読書体験の再考に対する関心の高まりにもつながっている。数週間前にはソルトレイクシティを拠点とするBookClub(ブッククラブ)を紹介したが(未訳記事)、これは著者主導のブッククラブを作り、他の人たちと読書体験を共有することを目的とするものだった。その他には、連載小説プラットフォームのRadish(ラディッシュ)のようなスタートアップが読書が新たな一歩を踏み出す中で、大規模な新しい調達ラウンドを実施している

だが、ブッククラブにまだ行っていないとしたら、何を読むべきかをどうやって決め、どのようにして素晴らしい本を見つければよいのだろうか?もちろんライターやVCが推奨するTechCrunch2020年版ベストブック(未訳記事)以外のものでということだが。特に名を秘すそのリストの著者の1人は、これが読むべき唯一の「今年のベストブック」リストであると私に語っている。

そこでBingeBooks(ビンジブックス)の出番となる。BingeBooksが狙うのは、以前に読んだ本の履歴に基づいて、次の素晴らしい本を見つけることができるようにデザインされた、本好きのためのNetflix的チャンネルサーフィンプラットフォームになることだ。

おそらくそうしたサービスの世界で支配的な、Goodreads(グッドリーズ)のように思えるかもしれないが、それ以上の多くのものが提供される。BingeBooksはAuthors A.I.(オーサーズA.I.)によって開発された。Authors A.I.は小説家と機械学習の専門家たちが先駆的に開発したサービスで、Marlowe(マーロウ)という名のAI駆動のエディターが、本の草稿を評価し、話のテンポやプロットの中のキャラクターの一貫性などに対して、建設的なフィードバックを提供する。

Authors A.I.のチームは、著者のために本を評価、分析、解釈することができるその技術が、同様に異なる本の間のパターンを識別して読者への推奨を行うためにも役立つことに気づいた。

BingeBooksは2020年11月の感謝祭直前に公開され、Penguin Random House(ペンギンランダムハウス)、HarperCollins(ハーパーコリンズ)、Hachette(アシェット)、Macmillan(マクミラン)などの有名出版社からのタイトルだけでなく、7000以上の独立したタイトルも提供している。

「BingeBooksは、読者による発見に本気で焦点を当てています」と語るのは、Authors A.I.の社長で共同創業者のAlessandra Torre(アレッサンドラ・トーレ)氏だ。「読者と作家が交流できる、本当に安全で幸せなコミュニティはありません。それが私たちが作ろうとしているものなのです」。彼女はそのことを知っているのだろう。なにしろトーレ氏は、これまでのキャリアの中で数多くのベストセラーを含む23冊の本の著者なのだから。彼女によれば、120人以上の著者がBingeBooksプロダクトの初期の関係者として含まれているという。

発見が読者にとっての課題であることは明らかだが、作家側の課題でもある。著者、特に大手出版社の莫大なマーケティング予算を持たない独立系の著者は、読者を掴むことに苦労をしている。彼らの作品は世界一かもしれないが、それを書いたとしても必ずしも読者が来るとは限らない。BingeBooksはそのギャップを埋め、双方がより良い読書体験に出会えるように支援したいと考えている。

彼女のもとには、長年の経験を持つ著者JD Lasica(J・D・ラシカ)氏と、「The Bestseller Code」の著者であり、ワシントン州立大学の英語教授でもあり、計算機によるテキスト分析を専門としているMatthew Jockers(マシュー・ジョッカーズ)氏が加わった。

BingeBooksとAuthors A.I.はこれまで自己資金で運営されてきたが、ラシカ氏によれば、商品が市場に出てきた現在、今後の資金調達方法を検討している最中だという。ラシカ氏は、同社のマーケットプレイスとしての側面と、より多くの潜在的なユーザーをプラットフォームに参加させたいという彼らの願いを考えると、クラウドファンディングの方がより理に適っているかもしれないと語った。製品は初期段階であり、チームは2021年前半にはコミュニティ機能を拡充したいと考えている。

私たちはこの先一生、出来の悪いTikTokの動画を繰り返し見る運命なのだろうか?それとも、ビデオサービスが私たちのメディア文化を支配するのを助けてきたようなアルゴリズムは、読書にも応用できるのだろうか?それこそがBingeBooksからの問いかけであり、可能なら答えたいと思っていることなのだ。

関連記事:オンライン連載小説のスタートアップRadishがソフトバンクとKakaoから67億円を調達

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:BingeBooks読書

画像クレジット:Paulus Rusyanto / EyeEm (opens in a new window)/ Getty Images

原文へ

(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。