AIで電動キックスクーターを安全性をリアルタイムでモニターするSuperpedestrianが米国内で事業拡大

自己診断ソフトウェアを搭載した電動キックスクーターを製造しているスタートアップSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)は、今後2週間で新たに10都市へと大幅に事業を拡大するのに備えてプロダクトをアップグレードしている。

Superpedestrianは安全性の問題をどのように処理しているかという点でマイクロモビリティ分野における新進気鋭のプレイヤーとだと考えられている。同社は車両に搭載されるAIを開発した。このAIはスクーターの安全問題をリアルタイムでモニターして正す。そうしたアップグレードを提供するコードネーム「Briggs」という次世代のオペレーティングシステムはLINK電動スクーターの世界中の車両にアップロードされる。アップグレードにはジオフェンス能力や電池寿命の改善が含まれ、安全や信頼性を保証できるパートナーを探している自治体にとってSuperpedestrianをより魅力的なものにしている。

「スクーターマーケットは短い期間に多くの点でB2CからB2G(business-to-government)にシフトしました」とハーバード大学ケネディ政治大学院タウブマン公共政策センターの客員研究員であるDavid Zipper(デイビッド・ジッパー)氏は述べた。「自治体はスクーター事業者に認める許可の件数を減らす傾向にあります。これは、減りつつある利用可能な認可の1つを獲得しようと、スクーター事業者にこれまで以上にプレッシャーをかけています。テクノロジーが栄枯盛衰する中で、企業が自らをどう位置付けるかということが重要です」。

Superpedestrianは、ニューヨーク市などの都市との提携を獲得しようと争っている勝ち目の薄そうな電動スクーター企業の1社だ。ニューヨーク市はブロンクスでの電動スクーターパイロットプログラムの詳細を間もなく発表する。BirdやLime、Voiといった大手マイクロモビリティ企業も応札した。

Superpedestrianは現在、シアトル、オークランド、サンノゼ、サンディエゴといった米国の都市、そしてマドリッドやローマなどの欧州の都市で事業を展開している。

「自治体は、当社の100%のコンプライアンスに好感を抱いています」とSuperpedestrianのコミュニケーション担当EMEAディレクターRoss Ringham(ロス・リングハム)氏はTechCrunchに語った。「当社はこれまでに一度もマーケットから批判されたり、一時停止措置を受けたり、追放されたりしたことはありません。いいサービスを提供するために当局と協力することが重要だと確信しています」。

市当局は現在、スクーターが歩道に散乱しているという苦情を最も憂慮している。なので、歩道を空けたり、壊れたスクーターをすぐに診断し、誰かを派遣して回収させることはSuperpedestrianにとってアピールポイントとなる、とジッパー氏は話した。

LINKスクーターは Vehicle Intelligent Safety (VIS)システムで駆動している。車両1000台のヘルスチェックを乗車中ずっと行うために、VISはAIと73のセンサー、5つのマイクロプロセッサを組み合わせている。ソフトウェアは常に自己診断と自己修正をし、ブレーキ問題、電池温度の不均衡、内部ワイヤーの切断、透水といったものがないか目を光らせている。

「シートベルトがかつてクルマにとってそうだったように、VISはスクーターの安全性において大きな変化です。2013年以来、400万マイル(約643万km)超のテストとサービスを洗練しました」とリングハム氏は話した。「その結果、当社の車両のリコールや製造欠陥は世界中でゼロです」。

新たなアップデートではジオフェンスリアクションが22%早くなり、オンボードジオフェンスのキャパシティが3倍に、そしてジオフェンスの精度が7倍アップしている。これは、スクーターが乗車禁止ゾーンをこれまで以上に認識でき、速度を落としたり特定のエリアでの乗車や駐車を禁止したりすることでライダーコンプライアンスを改善することを意味する。

LINKのシステムのスピードと精度は、こうしたコンピューテーションがスクーターそのものでリアルタイムに行われている結果だ。LINKのシステムはジオフェンス関連の問題が感知されてからわずか0.7秒、最初の感知場所から4.6mで反応する。他のスクーター会社はジオフェンスを計算して遂行するのにクラウドコンピューティングに頼る傾向にある。これだと歩行者エリアや交通量の多いエリアでライダーがスピードを出して走行するのをやめさせるには遅すぎるかもしれない。

「当社の競合相手は通常、既製品を購入してホワイトラベルのアプリを使います」とリングハム氏は話した。「当社はそうしたやり方で安全性を他社に任せたりはしていません。つまり、当社のオペレーションや世界中の車両からの情報は、絶えず改善するために当社のエンジニアリングチームによって使われます」。

Bird、Atom、Joyrideといった企業は、独立したオペレーターが自前のライドシェアを立ち上げたり、車両を管理したりできるホワイトラベルのOSを提供しているが、LINKでみられるような安全性に特化したテックを提供している同業他社は多くない。

創業者でCEOのAssaf Biderman(アサフ・バイダーマン)氏によると、パフォーマンスを高めるためにエンジニアリングのチームがアップデートの度に詳細なログを引き出すため、スクーターは時間を追うごとにスマートになる。LINKのオンボードソフトウェアから集められる集合化・匿名化されたデータは、この新たな交通手段をサポートするためにより良いインフラをデザインできるよう市当局とも共有される。

「もし提携する当局が新たなアイデアを持っていれば、VISのおかげで当社は簡単にそれを追加できます」とバイダーマン氏は声明で述べた。「これはライダーのために車両を常に改善し、歩行者保護を強化し、都市に堅牢な安全性能を提供します。当局は市民に何も要求しないでしょう」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Superpedestrian電動キックスクーター

画像クレジット:Superpedestrian

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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