AI構築のサプリメント安全性データベースが無料で登場

栄養サプリメントは、役に立つかどうかの証拠が乏しいときがあっても、多くの人たちによって使われている。だが、他のサプリメントや薬物との間の有害な相互作用の可能性に関する文書も不足している。Supp.aiと呼ばれる新しいツールが、長年にわたる健康研究論文を調査して、他のどこにも記載されていないような潜在的な競合問題を抽出してくれる。

だが、それは恐怖を利用する反サプリメント運動のようなものではない。単純な事実としては、サプリメントは同じ規制でコントロールされておらず、厳密に研究されてもおらず、処方薬に比べて医学的な文書化が不足しているのだ。そのことは、あまり知られていないサプリメントが一般的に服用されていない薬物に対して持つ、危険な相互作用への扉を開けてしまうという恐ろしい状況につながる。

一部の人たちには知られているかもしれない、避けるべきひと握りの共通相互作用があっても、その多くは医療業界の有償情報として隠され、おそらくまったく報告もされていない。しかし、それらが簡単に報告として読めないからといって、そうしたものがかつて発見されなかったというわけではない。その情報は、手に入るおびただしい量の論文のどこかに埋もれているだけなのだ。それをどうやって見つければいいだろう?

幸いなことに、Allen Institute(アレン研究所)のAI部門(AI2)の研究者たちは、すでにその作業の大部分を、Semantic Scholar(セマンティ・スカラー、意味+学者)というシステムを開発することで済ませている。Semantic Scholarは膨大な数の論文を取り込み、キーワード、結果、その他の側面を特定する自然言語処理システムであり、それらを簡単に検索したり相互参照できるようにする。

関連記事:Allen Institute for AIの科学文献インデクサーSemantic Scholarにバイオメディカルの論文数千万点が加わる

チームはこの成果の一部を再利用して、調整と拡張を行い、サプリメントと他の薬との間の相互作用の証拠を発見して、それを単一の検索可能なデータベースとしてまとめた。それがSupp.aiである。

「サプリメントと薬物はどちらも薬理学的実体です、その区別は機能の違いというよりもマーケティングと社会的圧力に由来するものです」と、新しいシステムについて説明した論文の研究者は述べている。「そして、そのやや恣意的な区別のために、サプリメントの情報は薬学実体に関するデータベースの中に十分に反映されていませんし、それらの相互作用に関する情報もあまり公にはされていません。私たちの仕事は、このギャップを埋めようとする試みなのです」。

例えば、糖尿病の人口の断面を見るいくつかの論文の奥深くには、グルコサミンのサプリメントを摂取している人は血流へのインシュリンの取り込みが遅くなっていることを示す文章があるかもしれない。実際、ツールの上でグリコサミンを検索したときに、私は数十件のそのような文章を発見した。

gluco suppai

Supp.AIは、検索用語とGlcNなどの略語を認識できるほど十分に賢く、証拠の文を柔軟に解釈するので、必要以上に文章を集めてしまう。インタラクションは大きいかもしれないし小さいかもしれない。あるいは有用かもしれないし有害かもしれない。だが大切なことはそれが文書化されていて、ユーザーがその文書を意識できるようなっていることだ。

断片が論文から抜き出されているが、その内容は自分の飲んでいるサプリメントに関する情報を探している一般人にとっては理解することが難しい。しかし、ここでの意図はこうした潜在的な相互作用への認識を高めて、ユーザーが医師に尋ねたり、心配される可能性のある特定の組み合わせを検索したりできるようにすることだ。

「現在、消費者がサプリメントが他の薬と相互作用するかどうかを判断するための、包括的なツールはありません。サプリメント企業がラベルにサプリメントと薬物の相互作用を明記することを義務付ける法律はないため、この情報は特に重要なのです」とハーバードのPieter Cohen(ピーター・コーエン)氏は述べている。彼はこの問題に以前取り組み、今回AI2がその論文のレビューを依頼した人物だ。

彼は、「Supp.aiが『消費者にとって不可欠なリソース』になることを示唆し、特定の相互作用をより深く掘り下げるために薬物=サプリメントまたはサプリメント=サプリメントのペアを選択できるようになることは自然な方向だ」と語った。

Supp.aiは無料で使用でき、新しい論文がデータベースに追加されるたびに「定期的に」新しい情報で更新されるはずだ。そしてサービスを構築するために使われたデータも自由に利用できることから、利用者が自分自身のバージョンを作成したり、コーパスを自身で調査したくなったりもするだろう。

画像クレジット:Palau (opens in a new window)Shutterstock

[原文へ]

(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。