AI活用で録画データから面接官の“面接力”を可視化、クラウド型研修サービス「imトレーナー」公開

1100社が導入するSaaS型のウェブ面接ツール「インタビューメーカー」を通じて、面接のアップデートに取り組むスタジアム。その同社がテクノロジーを活用した“面接官の面接力アップ”を支援するサービスを新たに始める。

スタジアムが12月19日にリリースした「imトレーナー」はクラウド上で面接官のトレーニングが行える研修サービスだ。インタビューメーカーを活用して応募者役の学生と実際にウェブ面接を実施し、その様子を録画したデータを基に人とAIがそれぞれ面接力を評価する。

5月にも紹介した通りインタビューメーカーには面接の録画機能が備わっていて、従来は本人や社内の同僚が見返して面接の改善に繋げることはできた。今回のimトレーナーではそれを社外の第三者(スタジアムと応募者役の学生)に評価・フィードバックしてもらう形だ。

利用フローとしてはまず最初に企業側が面接を実施したい日時と応募者役の特徴を指定する。たとえば理工系の学生、グローバル志向の学生といった具合だ。そうするとスタジアム側がその特徴に該当する学生(就活を終えた4年生とのこと)を応募者役としてアサインし、希望日時にウェブ面接を実施。後日、学生の直感的なフィードバックや録画データを基に評価した内容がレポートとして提供される。

個人的に面白いと感じたのは「人による評価」だけでなく「テクノロジーによる評価」を導入していること。スタジアム執行役員の前澤隆一郎氏によると具体的には「音声解析」と「面接文字起こし」の部分にAIを活用しているそうで、たとえば音声解析の場合だと声の抑揚や周波数からその時の感情を分析し、どのくらいストレスがかかった状態なのかを見える化する。

またスタジアムでは面接に特化した文字起こしエンジンを独自で開発していて、誰がどの時間帯にどのくらいの割合で話しているかを効率的に測定できるとのこと(精度は今もブラッシュアップ中とのこと)。これまでは定性的な評価のみになりがちだった面接官の評価や振り返りに、定量的な指標やデータを組み合わせている部分がimトレーナーの特徴だ。

上述した通り、このテクノロジーを活用した評価に「応募者役の学生による定性的な評価」と「imトレーナーの運営による第三者的な評価」を加えたものを最終的なレポートとしてユーザーに提供する。

前澤氏の話では定量的なデータは現状を可視化する際にだけでなく、自身の面接力を向上させる際にも効いてくるとのこと。データに基づき「緊張状態が長く続いているので相手がうまく話せないのではないか」「タイムマネジメントがうまくいっていないから(自分が発言する時間が長いから)、相手の見極めに必要な情報が引き出せなかったのではないか」といったサジェストをしたりするそうだ。

これまで面接官以外の第三者が面接の様子を見ることがあまりなかったため、面接はブラックボックス化しがちな領域だった。特に規模が大きい会社では1回のシーズンに数百人の面接官を稼働させるところもあり、面接官によってスタイルやスキルも異なる。そもそも普段は別の業務を担っていて新卒採用シーズンだけ面接官を兼務するケースも多いので、慣れていない担当者もいるだろう。

「研修自体は以前から存在していたが、集合型のタイプが多く、場所や時間の制約もあるので受けられない人も多い。その中で自分たちの持っているインタビューメーカーは、実は面接官の研修にも機能するということがわかってきた。1番は場所と時間に縛られず、好きな時に好きなところで受けられること。その上で録画データの解析を通じて、従来は気づけなかった改善点やフィードバックも得られる」(前澤氏)

音声解析や文字起こし解析なども含めた詳細のレポートを希望する場合は1回1人あたりだいたい7万円くらいの金額感になるとのこと。1人あたりの料金で換算すると集合型の研修の方が安くなる場合はあるが、座学中心のものなど内容もそれぞれ異なるので「トータルのコストパフォーマンスで見れば十分に価値を感じてもらえるのではないか」という。

11月からβ版のような形でテスト的に提供を始めていて、すでにファミリーマートなど複数社が導入。実際にニーズがあることも検証できたことから、今回の正式ローンチを機により多くの企業に展開していく計画だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。