Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取

上海証券取引所はAnt Group(アント・グループ)の巨大な新規株式公開(IPO)を延期することを発表した。中国当局によるフィンテックに関する新たな規制の導入、また当局がJack Ma(ジャック・マー)氏や他の幹部を聴取したことを受けての措置だ。

中国の金融当局トップとAntの間でもたれた稀にしか行われない話し合いで「フィンテック規制における大きな変更」が明らかにされ、これによりAntが11月5日の上場の基準を満たさなくなるかもしれない、と上海証券取引所は11月3日夜に出した声明で述べた。

そうした「変更」がどういうものなのかは明らかではないが、同証取はAntにそれらを開示するよう求めた。10月下旬にマー氏が中国の金融規制を批判する刺激的なスピーチ(新波財経記事)を行っていたことは記すに値する。スピーチが行われたカンファレンスには中国の上層部も出席していて、後に広範にわたる論争を巻き起こすことになった。

Antは上海証取からの通知を受け、計画していた香港でのIPOも一時停止した、と声明の中で発表した(Ant Groupリリース)。

「投資家にご迷惑をおかけすることを心よりお詫び申し上げます。2つの証券取引所の規則に則って今後の問題に適切に対処します」と述べた。

Antはこれまで当局に従順であろうとしてきた。Ant FinancialからANT Technologyにブランド名を変更したとき、この動きは金融大手を脅かすという同社のイメージを払拭し、優しいテクノロジープロバイダーの1社であることを強調するものだと受け止められた。Antは「techfin(fintechの反対)」という奇妙な造語の会社であり、従来の金融機関(多くが国有だ)とは競合していない、ということを周知するキャンペーンを数年前に始めた。

言葉は単なるショーではなかった。Antは何億人もの顧客に従来の金融機関が提供していた金融商品を紹介し、オンラインマーケットプレイスにゆっくりと守備範囲を広げてきた。同社はまた国家安全保障基金や中国合弁投資銀行といったヘビー級の国家主体を投資家にもってきた。

しかし保証材料は十分ではなかったようだ。中国の金融当局はフィンテック部門を監督するための新たな提案を11月2日に発表した(中国銀行保険規制委員会リリース)。Antが世界最大のIPOで345億ドル(約3兆6000億円)を調達することになっていた数日前のことだ。ドラフトははっきりとAntを指してはいないが、金融当局によるAnt幹部の聴取とタイミングは一致する。

「金融部門の健全性と安定に関する考えを交換した」とAntの広報担当はTechCrunchへの声明文で述べた。「Ant Groupは意見交換を深めること、そして安定したイノベーション、規則の遵守、実経済へのサービス、ウィンウィンの企業という原則に基づいた方針を取り続けることを約束する」。

メッセージはクリアだ。Antは中国政府当局の要望に応える努力をする。

「当社は引き続き包括的なサービスを提供する能力を向上させ、一般市民の生活を良くするために経済発展を促進する」とAntは付け加えた。

新たな提案は、活発なフィンテック部門に安定をもたらそうと中国が進める取り組みにおける最新の動きだ。規制草案には、当局が認めたもの以外の地方間オンラインローンの禁止、個人向けのオンラインローンの最高額を30万元(約470万円)とすること、オンライン小口融資貸し手の登記資本金を10億元(約157億円)とすることなどが盛り込まれている。

AntのIPO目論見書によると、貸付事業は急成長中で、同社の年間売上の34.7%を占め、額にして419億元(約6600億円)だ。6月までの1年間にAntは約100行の銀行と共同で1兆7000億元(約27兆円)の消費者金融を実施し、中小企業に4000億元(約6兆円)を貸し付けた。

中国の金融当局は近年、フィンテック企業の拡大と収益性を抑制しようと、多くの規制を導入してきた。例えばAntの決済サービス Alipayと、そのライバルサービスは、顧客準備金から利子収益をあげることが2019年から禁じられている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Group新規上場 / IPO

画像クレジット:Ant Group

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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