大規模ハイテク企業たちが機械学習や人工知能に力を入れようとしている中で、Appleはその分野での能力を補うための会社を買収した。
Appleが買収したのは、具体的にはLattice Dataである。Lattice DataはAI推論エンジンを適用することで、構造を持たない「ダーク」データを、構造化された(より利用性の高い)情報へと変換する技術を持つ会社である。私たちはとある1つの情報源から、Appleが約2億ドルを支払ったという情報を得た。
その情報源によれば、契約は数週間前に行われ、約20人のエンジニアが大きな会社(Apple)に加わったということだ。
私たちはこの情報を、まず情報源から、次いでAppleから、標準的な告知として受け取った。「Appleはその時々で小さなテクノロジー企業を買収していますが、一般に私たちはその目的や計画について公表することは控えています」とAppleの広報担当者はTechCrunchに語った。
Latticeは昨年ステルスから脱する前に、GV、Madrona、そしてInQTelから、少なくとも2000万ドルの資金調達を密かに行っていた。Latticeは2015年に創業し、これまでその実体はほとんど世間のレーダーにかかって来なかったものの、注目すべき歴史を持っている。
同社はChristopher Ré、Michael Cafarella、Raphael Hoffmann、そしてFeng Niuによって共同創業された。創業の目的はDeep Diveの商用化である。Deep Diveはスタンフォード大で開発された「ダークデータから価値を抽出する」システムだ。
スタンフォード大学教授であるRéは、DeepDiveの業績によってMacArthur Genius Grantを受賞し、現在はLatticeのチーフサイエンティストでもある。また、最初はLatticeのCEOで、現在は同社のCTOになったCafarellaは、Hadoopの共同クリエイターの1人としても知られる、ミシガン大学の教授である。NiuはLatticeのチーフエンジニアリングオフィサーだ。CarafellaとHoffmann(彼はLinkedInによると、その後Googleに移籍している)は、DeepDiveの開発にも関わっていた。
LatticeのCEOを務めるのは、昨年入社した経験豊富なエンタープライズエグゼクティブのAndy Jacquesである。
ところでダークデータとは何だろう?私たちの接続されたデジタル世界は、日々加速するペースでデータを生み出している。2013年には4.4ゼタバイトのデータが世界にはあったが、2020年までにはそれが44ゼタバイトまで拡大すると予測されている(1ゼタバイトは2の70乗バイト)。IBMの見積もりによれば、現在存在するデータの90%が最近の2年のうちに生み出されたものだ。
しかし、そうしたデータの70%〜80%は構造化されていない、すなわち「ダーク」なものであり、そのため処理と分析に関してはほとんど使用することができない。基本的にLatticeは、機械学習を用いて、そうしたデータを整理し、より使えるものにしようとしている。
ラベルもなく、カテゴリーもなく、文脈の手掛かりもないデータの山があると考えてみて欲しい。それでも適切な整理を施すことによって潜在的な価値を引き出すことができる可能性がある。
このようなシステムの応用は多岐に渡る。例えば人間の移動を追跡することで、国際的な警察機構や犯罪解決のために用いることができる。あるいは医学研究での利用や、古生物学研究における成果の整理と解析を助けることなどが可能だ。また、より有用なデータフィードを作成することでAIシステムのトレーニングを支援することもできる。
Latticeが誰と協力しているのか、またAppleがそのテクノロジーをどのように利用しようとしているのかははっきりしない。私たちの推測はAIが何らかの中心的関心なのではというものだ。私たちの情報源によれば、Latticeは、AmazonのAlexaやSamsungのBixbyを含む「AIアシスタントを改良することに関して、他のハイテク企業と協議している」ということであり、つい最近も韓国で時間を過ごしていたそうだ。
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(翻訳:Sako)