AppleのHomePod発売直前試用レポート

HomePodは記憶にあったものよりもずっと小さかった。昨年の6月のWWDCで発表されて以来、私はこのスピーカーを見たことはなかった。

そして先月、Appleは、スピーカーの発売日が予定だった12月からずれ込むことを発表した。「もう少しだけ時間が必要」というのがその理由だった。そして、ついにその時がやって来た。今週プレオーダーが始まり、出荷が2月9日に開始される。

今週私は、この製品の最終形を少し試用することができた。そして高さ17.8センチ(7インチ)であるこの製品の小ささに驚いていたところだ。たぶんそれは、私が暫くGoogleの重量5.4キロ(12ポンド)の巨大なHome Max Speakerを使っていたからだろう。

宣伝通り、この製品の音は素晴らしい。HomePodは、なによりもまずスピーカーであるこが第1で、スマートであることは二の次であることにはあまり疑問の余地はない。最初のEchoやGoogle Homeデバイスの流れには乗っていない。Appleのエンジニアたちは、その小さなサイズから、リッチで豊かなサウンドを十分に引き出すことに成功した。スピーカーは特にボーカルの分離に威力を発揮し、例えばライブレコーディングにおけるバックボーカルと観客の声の入り混じった音も聞き分けやすい。

発売に際して、同社はその内部の簡単な図解を示した。システム底部には環状に配置された7つのツイーターがあり、上部には大きなウーハーが置かれている。ウーハーの可動余地は22ミリもあり、これは比較的小さなHomePodのサイズから考えるとかなりの長さだ。Home Maxに比べて特に大きく優れているデザインの1つが、その全周型360度デザインである。このことも部屋の様々な場所で一貫した良いサウンドを得るための役に立っている。

Maxの発売前に、Googleの担当者と会ったときにの説明では、ほとんどの人がスピーカーを壁際に置くことになるという事実から、単方向性に対しての最適化を選択したのだという話だった。Googleはそのポジショニングの特性を利用して、同社が”Smart Sound”と呼ぶ機能の提供を行っている。それは要するに、壁への近接度合いに応じて音質を変化させるスピーカーの能力だ。結局のところ、私たちがスピーカーから聞いているものの多くは、反射して私たちに届いているものだからだ。

Appleは、そうした技術に対応する自社の技術に対しては、特にファンシーな名称を付けていないが、HomePodは同様の原則で動作しているようだ。会社によれば以下のように説明されている。

(HomePodは)自動的に音響を分析し、スピーカーの位置に基づいて音を調整し、音楽を直接音と環境音へと分離します。直接音は部屋の中央に向かって送り出され、一方環境音は左右のチャンネルに拡散され、壁から反射されます。このため、あなたが部屋のどこにいても、音楽の響きは素晴らしいままなのです。

基本的には、オンボードのマイクを使い、反射された音に基づいて位置に対する認識を行っているようだ。そうしておいてから、スピーカー周囲の部屋の様子を検知し、それに従って音を出している。Home Maxの場合、システムは徐々に音を調整して周囲に適応させて行くので、音質が急激な変化することはない。HomePodにも同様の機能があるかどうかを確認する時間はなかったが、似たようなやり方を行うのであろうと想像している。

ともあれその音は素晴らしい。白もしくはダークグレイの布地で覆われた見かけも良い。トップにはボリューム調整用タッチボタンがある。HomePodが聞き取りと思考を行っているときには、Siriの動作を示す優美な光の輪が出現する。もちろんSIriは、スマートスピーカー体験を私たちに提供するための仕掛けだ。

もちろんこれは、EchoとHomeに対するAppleの回答だ。そしてSiriがその体験になくてはならない部分を提供している。Appleはそのスマートアシスタントを、ハードウェアサードパーティたちに、すぐには開放しないようだ(そのハードウェア/ソフトウェア共生関係にうまくフィットしないものが出てきてしまうことを懸念してのことである)。このためHomePodは、現在見えている範囲での、Siriスマートホーム体験の当面の決定版となる。

このAppleのアプローチは、スピーカーのセットアップにiPhone、iPad、またはiPod touchが必要となることを意味する(HomePodはApple TVとも連動するが、Apple TVを用いてセットアップを行うことはできない)。そうした限定された提供形態の利点のひとつは、非常に円滑なセットアップ体験の提供だ。それはモバイルデバイスにポップアップするダイアログボックスで行われる、AppleのAirPods(Apple製Bluetoothイヤホン)とのペアリングに本当に似ている。そして、スピーカーを置く部屋を選択し、Siriを有効にして、個人的な要求を投入する。

最後のものには、例えばスピーカーに通知を行わせることなどが含まれている。現在のところ、HomePodは声に基づいてユーザーを区別することができないため、高度なパーソナライズを行うことはできない。こうした状況に対してAppleが提供する暫定対処法は、HomePodのセットアップに使われたモバイルデバイスの存在をスピーカーが検出したときにのみ、パーソナルな機能を有効にするというものだ。

プライバシーの観点からは、EchoやHomeのように、内蔵された6つのマイクロフォンがウェイクワード(”Hey Siri”)を待ち、その言葉が入力されて初めて、情報がサーバーに送られる。その情報は暗号化され匿名で保管されているため、発行されたSiriリクエストを集積する中央データベースは存在していない。また、AmazonやGoogleとは異なり、中心にあるSiriアプリで、これらのリクエストの実行集計も行っていない。

実際のところ、Siriアプリは全く関与していない。代わりに、すべてのモバイルHomePodコントロールは、Apple Homeアプリに入っている。このため、もしプライバシーのためにマイクをオフにしたい場合は、ホームアプリに入って無効化を行う。Siriに対して聞くことを止めるように支持することもできるが、そのときはただ”Hey Siri, stop listening”(Hey Siri、聞くのを止めて)と言えば良い。

聞いていないことを示す視覚的なてがかり(例えばEchoの場合には赤いリングが点灯する)はない。また物理的なボタンもない。Siriの再びリスニングを開始させるには、Homeアプリを使って有効化するか、HomePodの上部をタッチすれば良い。

Siriが有効化されているときには、たとえ音楽が流れているようなときでも、聞き取り能力はかなり優れているようだ。今年後半に無償のアップデートとして、複数のスピーカーペアリングを展開する際に、Amazonのニアフィールド技術に類似したものが搭載されるかどうかに関しては言及されていない。この件に関しては、私はWWDCのころにまたニュースが流れるのではと考えている。

デバイスのスマートアシスタント機能は、当初は限られたものになるだろう。AmazonとGoogleは、既に随分先行しているのでこれは仕方のないことだ。Appleは、人びとがこうしたデバイスに向かって実際に使っている機能に的を絞った。もちろん、音楽はその中でも1番を占める場所だ。他に組み込まれているものとしては、天気、交通、経路、そしてニュースがある。

最後のものは、既に報じられているように、ポッドキャストへのアクセスを介して行われる。ここ米国内では、デフォルトではNPRに設定されているが、Fox Newsなどの他のチャンネルにも切り替えることができる。なぜなら人びとがニュースを入手する場所は、モバイルOSよりさらに多極化しているからだ。

通話機能も搭載されている。とはいえ、その動作はEchoとは異なる。実際の通話はiPhoneで始めて、その後HomePodへと移動することになる。つまり、電話が必要だということだ。スマートホーム機能は、かなり堅牢だ。これはAppleがHomeKit側に投入してきた様々な仕事のお陰である。そうしたものの全てが、Homeアプリに集約されている。幸いなことに、別途スマートホームのハブが必要になることはない。

Appleは多くの機能をAppleファミリーの中で完結することにした。それは音楽の面で最も明白だ。もし完全な音楽再生機能が必要な場合には、Apple Musicが必須となる(セットアップ時に、Siriが3か月間無料のトライアルをお勧めしてくる)。Spotifyのようなものを使用するには、接続されたスマートフォンのAirPlayを介して行うことしかできない(背面には外部入力端子もない)。

もちろん、それは多くのユーザーにとって懸念事項になるだろう。サードパーティの音楽ストリーミングが計画中であるかどうかは分からないが、こうしたこと全てが、Appleによる統一されたエンドツーエンドの一部であるように思える。そうした統合の良い点は、実現される機能の深さだ。

例えば、Siriに対して、Apple Musicを使って再生中の、曲やアーティストに関するコンテキストに依存した情報を訊ねることができる。「Hey Siri、この曲がリリースされたのはいつ?」とか、「Hey Siri、Husker Duについて教えて」といった具合だ。こうした情報は、Apple Music独自のメタデータや、Wikipediaのような場所などの、さまざまな情報源から取得されている。

このスピーカーを使った時間はそれほど長くないので、個人としての最終的な結論は留保しておきたい。とはいえ、明らかなことは、HomePodはこのカテゴリーを対象にした、非常にAppleらしい製品であるということだ。実際349ドルという高価な商品ではあるが、見かけがよく音質も優れたデバイスだ(とはいえ、それでもGoogle Maxよりは50ドルも安いのだ)。Appleは、その最初のSiri中心のプロダクトに対して、明らかにエンドツーエンド体験を提供している。効率的で統一的な体験のためには、より広い機能は意識的に諦めた格好だ。

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(翻訳:Sako)

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TechCrunch Japan

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