AR技術を用いたエンタメコンテンツを開発し提供するENDROLL(エンドロール)は7月17日、スマートニュースの堅田航平氏、メドレー 執行役員の加藤恭輔氏、ペルソナイズ CSOの山本幸央氏、鈴木陽貴氏、清木昌氏、加えて他の数名の個人投資家から、プレシリーズAでの資金調達を実施したと明かした。今回の調達額は非公開だが、数千万円規模だと思われる。
同社はこれまでに、インキュベイトファンドやファクトリアル、加えて連続起業家の柴田陽氏、newnのCEOの中川綾太郎氏、アルのCTOの和田修一氏などの個人投資家からも資金調達を行ってきた。
2017年12月に設立のENDROLLは、AR技術を用いたエンタメコンテンツを企画し開発している。
2018年5月には、スマホ向けARゲームの「ノンフィクション・レポート」を発表。2019年5月からは、体験型イベントやリアル謎解きゲームの企画制作と運営を行うハレガケと東京急行電鉄と共に渋谷エリア一帯を使うAR×リアル謎解きゲーム「渋谷パラレルパラドックス」を開催。今年の5月には、Graffity、MESONとの3社で、同社いわく「世界最大のARコミュニティ」である「AWE(Augmented World Expo)」の東京支部「AWE Nite Tokyo」を設立した。
現在はアカツキライブエンターテインメントの協力のもと、横浜駅直通のエンタメ施設「アソビル」の全館を舞台にしたAR周遊ゲーム「アソビルパーティ ~とびだせ!アソビルモンスター~」を開催中。また、同ゲームは、ユーザーが波動を出し合って対戦するARスポーツ「HADO」開発のmeleapが開催する「魔法を使える夏祭り」にも出展されている。
今回調達した資金をもとに、ENDROLLは採用やマーケティングを強化するほか、AR周辺技術の研究開発を進めていく。
同社の共同創業者でCEOを務める前元健志氏いわく、より具体的には、資金を「カメラを通して現実から取得した点群データをクラウド上に保存する技術、平たく言えば現実の世界をクラウド上に再現する技術」(前元氏)である「ARCloud」の研究資金に投下する。
「ただし、決して0からARCloudを構築するわけではありません。私たちはあくまでコンテンツデベロッパーですので、基幹となるシステムはシリコンバレーから生まれたテクノロジーたちの力を借りようと思っています。では何に投下するのかというと、保存された点群データを取り扱ったリッチなARゲーム体験の研究です。プラットフォームとしてのARCloudの構築を目指すわけではなく、あくまでコンテンツ企業としてのアイデンティティを最大化させるための『ARCloudベースのUX構築』が私たちの資金投下先です」(前元氏)
また、前元氏はENDROLLのビジネスに関して説明する際に、GaaS(Games as a Service)というキーワードを口にしていた。前元氏は同社のGaaS構想について、以下のように説明した。
「私たちのビジネスは空間を保有する企業様のご協力の上でなりたっています。そのため、外から見ると受託会社のような形でコンテンツをリリースしています。一方で私たちの本質的な狙いは、あらゆる空間をエンターテイメントの舞台に書き換えることにあります。ARというテクノロジーを使うコトで、それがショッピングセンターの中であれ百貨店の中であれ、当社が作るコンテンツは展開させることができます。そして、私たちのコンテンツがどこでも提供可能であるということは、商業施設が『モノ』だけではなく『コト』をお客様に届けられる場所になるということを意味しています。それを私たちはGaaSという形で広げていく準備をしているのです」(前元氏)
ENDROLLの今後の展開は、GaaS構想およびARCloudの二軸が重なる点がキモとなっている。
「日本のあらゆる商業施設で弊社のARエンタメが展開されるようになるということは、ARCloudにおける点群収集を行う面が日本の商業施設の中に広がることと同義です。日本の商業施設の環境をARCloudに保存することによって、理想的なAR体験に限りなく近い形でコンテンツを提供できる場所が、日本中に広がります。現在のGaaS展開で集めたデータを用いて、ARエンターテイメントをもう一次元上に引き上げることを目指しています」(前元氏)