ビットコインと聞くと、国内ではビットコイン取引所のMt.Goxにまつわる騒動を思い浮かべる読者も多いのではないだろうか。どうしてもネガティブなイメージがつきがちだが、関係者からは、「Mt.Goxの騒動はあくまで同社のシステムに由来する問題であり、ビットコイン全体の問題とは別だ」という声が聞こえてくる。その意見を裏付けるかのように、ビットコインは国内外を問わずに注目を集め続けている。では日本での動向はどのようになっているのか。
東京にはビットコインATMが登場
5月末には、米国製ビットコインATMの「Robocoin(ロボコイン)」が西麻布のVerandaと六本木のPink Cowという飲食店に設置された。Robocoinは、運転免許証スキャナー、手のひら静脈認証、顔写真撮影といった本人確認機能を備えるビットコインのATMだ。あらかじめデジタルウォレットを作成していれば、円紙幣でビットコインを購入したり、ビットコインを売却して、円紙幣を受け取ることが可能だという。
西麻布にRobocoinを設置したのは、2014年4月に設立したばかりの長崎のビットチェック。同社代表取締役の峰松浩樹氏は、これまでに長崎でシステム開発やビットコインの採掘(計算によってビットコインを得る作業)を手がけてきたという。
ビットコイン販売所のbitFlyerは国内VC2社から資金調達
時を同じくして5月末、国内のスタートアップであるbitFlyerが、ビットコインのオンライン販売所「bitFlyer」を公開した。bitFlyerは、買い手の希望する金額にマッチする売り手がビットコインを販売する取引の場となる「取引所」とは異なり、外貨への交換のように、固定価格でビットコインの売買ができる「販売所」となっている。これまでビットコインの取引所はあったが、販売所を提供するのは日本では初だそうだ。
bitFlyerを利用するには、同社のアカウントを作成する必要がある。手数料は2800円だが、現在は無料化している。アカウント作成に際しては、個人情報や銀行口座を登録したのち、同口座からbitFlyerの指定する口座に実際に入金をするなどして、本人確認を徹底している。
またbitFlyerでは、直近にも「bitWire」と呼ぶ送金機能を提供する予定だ。通常ビットコインを送金する場合、認証までに少なくとも10分、長ければ1時間ほどかかるそうだ。だがそんなに時間がかかってしまうのであれば、通常の店舗では利用が難しい。実際に海外での利用実態としては、認証を待たずにビットコインでの決済を受け付けるケースもあったそうだ。だが将来的に、認証途中に利用者が店舗を去ってしまって「認証できない(支払われない)」となって問題になるかもしれない。しかしbitWireを利用すれば、(仕組みについては教えてもらえなかったが)その処理を約1秒で終わらせることができるのだそうだ。
bitFlyerは2014年1月の設立。代表取締役の加納裕三氏は、以前に外資系投資銀行でトレーダーを務めていた人物。グノシー共同代表を務める木村新司氏は加納氏の古い友人だとのことで、創業時に個人投資家として出資している。
同社は6月6日、国内のベンチャーキャピタル2社(非公開)から約1億2000万円の資金を調達している。「ユーザーのビットコインは(取引時以外)コールドウォレット(ネットワークに繋がっていないデジタルウォレット)に保管しているので物理的に安全な措置をとっている。しかし万が一のトラブルに遭っても対応ができるような、信用できる状況を作りたい。今後はセキュリティにも注力する」(加納氏)
関連事業者への投資も進むが、まずは利用環境の拡大に期待
実は国内ベンチャーキャピタルが、bitFlyer以外のビットコイン関連サービスへの投資を予定しているという話も聞いているし、まだまだプレーヤーは増えてきそうだ。だが一方で、ビットコインを利用できる環境はまだまだ少なく、直近では投機目的の利用者が多くを占めている状況。また、ビットコイン自体を懐疑的に見る人間も多いのが実情だ。加納氏も「bitWireを提供することで手軽な送金を実現して、利用機会を増やしたい」といった話をしてくれたが、まずは安全に利用できる環境がどれだけできるかが普及のカギになりそうだ。