AWSがひとり勝ちである理由

クラウド市場を眺めてみると、AWSが異論のないリーダーであり、近い将来もその地位に揺るぎがないであろうことに驚く。しかもGoogle、Microsoft、IBM、そしてOracleといった強豪が競争相手であることを考えると、AWSの大きなリードは更に驚異的だ。ここで疑問なのは、AWSはどのようにそうした優位性を手に入れたのか?ということだ。

先行者だったからというのが簡単な答だが、AWSのCEOであるAndy Jassyは、それは幾つかの点で市場転換力学の古典的なケースだったと、先週ワシントン大学で行われたインタビューで語った。競争相手たちは単純に、心配する必要が生じるほどの十分な市場が生まれるとは思っていなかったのだ。

手遅れになるまで、ちょっとした不快感を無視し続けることは簡単だ。実際、ハーバード大学教授の、クレイトン・クリステンセンは、彼の先駆的な著書「イノベーションのジレンマ」でこの問題を概説している。市場の支配的なプレイヤーたちは、市場の最下層への攻撃を心配する理由がない。そしてそれこそがAWSが初期の頃にやっていたことだ。

ライバルたちについてJassyは、彼らは長く激しくクラウドと戦って来たために、戦いに敗れ去る会社を見ることで、彼らの市場の優位性を脅かすものは存在しないと思いこむ傾向が強まったと語った。

「彼らがクラウドに対して言ったことは、まず、誰もそれを使わない、次に、おそらく使うのはスタートアップだけだ、その場合でも本番には使わないだろう、ということでした。その次には、企業は使わない、そしてその次に言ったのは企業はミッションクリティカルな用途には使わない、というものでした。企業や開発者たちはその労力を注ぐ場所で意見を表明していました。そしていまや(競争相手たちは)この領域で何かを始めようとしています。おわかりでしょうけれど、それは6、7年遅れた動きなのです」とJassyは語った。

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AWSのCEOであるAndy Jassy

OracleやIBM、そしてMicrosoftのような企業さえもが、こんなにも力を注いでこなかった理由の1つは、クラウドが彼らのコアバリューを損なうものだったからだ。

「私は、そこに到達するために、ただとても長い時間のかかる企業のカテゴリーがあると思っています。それはOracleやIBMのような企業で、彼らの立場からすれば、私たちが推し進めていたビジネスモデルは、彼らのビジネスに対してとても破壊的なものだったのでしょう」。彼は、根本的に異なるマージンや、価格体系、展開モデルについて発言を続け、そしてそうした企業たちに対して根本的な疑問を提起した。

「多くの大企業が抱えるジレンマだと思います。既存のビジネスを食い潰す動きを本当に加速したいのかどうか。だからこそ彼らは可能な限り長く激しく戦って来たのだと思います」。

Jassyは、他のプレイヤーたち、特にMicrosoftが、参入のためにこれほど長い時間がかかったことに驚いたと告白した。もっとも彼は実社名は挙げずに「湖の向こう岸の会社」と呼んだだけだったが。「私たちが立てた、もっとも甘い予想の中でも、私たちに6、7年の先行が可能になるとは考えていませんでした。特に私たちは、あの大企業とは湖を挟んで向かい側ですし、お互いに相手の会社の沢山の人を知ってたのですから」。

しかし、ライバルたちはいまや方向を定めた。そしてJassyもAWSの1人勝ちの幻想に浸ってはいない。彼は数兆ドルの価値がある市場に向けての厳しい競争があることを認識している。「1人勝ちのプレイヤーが現れることにはならないでしょう。かといって30にもならないと思います。コスト構造を考えると規模が本当に大切なのです。しかし複数の成功したプレイヤーが現れることでしょう、まだ登場していない企業かも知れません。しかし従来の手堅いプレイヤーたちも無視できません。既に膨大な企業顧客基盤を持っていますし、強力な販売チームやその手の何かを有しているからです」と彼は語った。

JassyはAWSが提供している機能の量を考えると、ライバルたちが追いつくためには相当量の仕事をこなさなければならないと述べた。もちろんAWSも定期的に機能を追加している。

こうした全てが市場におけるAWSの優位性につながってきた、そして現時点では追いかけるプレイヤーたちにとっては、本当に困難が予想される。市場は成長を続け、主要クラウドプレイヤーたちは派手な成長を見せ続けるだろうが、先行したAWSは大きなリードを確保し、その地位を近い将来譲り渡す気配はない。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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