今日から仕事始めという読者の方も多いかと思うが、2018年のスタートとともに大きめの資金調達のニュースが入ってきた。ECプラットフォームや決済サービスを提供するBASEは1月4日、総額15億円の資金調達実施を発表した。また同日、決済事業部門の分社化と、もう1社の子会社設立も明らかにしている。
BASEが手がける事業は大きく分けて2つ。ネットショップ開設サービスや加盟ショップを掲載するショッピングアプリの提供など、“EC基盤”としての「BASE」と、ID決済アプリ「PAY ID」やオンライン決済サービス「PAY.JP」といった“決済”サービス群だ。
今回分社化し、BASEの100%子会社として設立される「PAY株式会社(以下PAY)」は、このうちのPAY IDおよびPAY.JPを運営し、決済事業を展開することになる。PAYの代表取締役CEOには、高野兼一氏が就任する。高野氏は、BASEが2014年に買収したオンライン決済サービス開発のピュレカ創業者で、買収後もBASEの決済事業を担当してきた。
PAY.JPはリリースしてから2年。取り扱い金額は昨年比で40倍に伸びたという。またPAY IDの前身となるID決済サービスは、リリースから1年半が経過。昨年6月には、QRコードによるオフライン決済にも対応した支払いアプリとして公開されている。
BASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏は「BASEとPAYが手がけるのは、いずれも決済機能がメインとはいえ、それぞれ役割の違う2つの事業だ」と話していて、「決済でもっとがんばりたい。PAYでは決済事業に最適な企業文化づくり、最適なチーム作りを行い、意思決定を速くしていく」と分社化の意図について説明する。
資金調達については、鶴岡氏は「分社化とは直接の関係はなく、たまたまタイミングが重なっただけ」としている。今回の調達は、既存株主のグローバル・ブレインがリード。グローバル・ブレインが運用するファンドとマネーフォワードを引受先とした第三者割当増資で、総額15億円の追加資金調達となる。
新規株主のマネーフォワードとのシナジーに関して、鶴岡氏は「Fintechサービス開発と、BASE加盟店への支援で協力していきたい」と話している。これまで提供してきた集客のためのショッピングアプリやライブコマース機能に加え、BASEを利用するEC事業者に対し、税務・会計面でもサポートしていく考えだ。
また調達資金の用途については「人員拡充とプロダクト強化、プロモーションなどに充てる」ということだ。
2012年12月創業のBASEはこれまでに、2014年5月にグローバル・ブレインから3億円を調達、2016年1月にはメルカリから最大4.5億円の出資を含む資本業務提携を発表。2016年10月にはSBIインベストメント、SMBCベンチャーキャピタルなどから総額15億円の資金調達を行っている。
前回、2016年10月の資金調達のときのインタビューでは、鶴岡氏は「『決済』だけをやりたいのではない。インターネット上の個人を証明するということをやりたい」と話していた。また「今はコマースからスタートして、ペイメントをやっているスタートアップだが、将来は『金融』の会社でありたい」とも述べている。
その思いとどうやら関係していそうなのが、もうひとつの子会社設立の発表だ。新会社の名前は「BASE BANK」という。事業内容については一切明かされておらず、鶴岡氏も「何をやるかはまだ話せない。遠くない未来に公表する」と言うだけだ。ただ、社名を聞いて私が真っ先に頭に浮かべたのは、買取アプリ「CASH」を提供し、サービス運営2カ月弱でDMM.comが70億円で買収したバンクのことだった。
バンク創業者の光本勇介氏は、2008年に設立したブラケットでは、BASEの競合サービスにあたるオンラインストア作成サービス「STORES.jp」を2012年から提供。2013年のスタートトゥデイによる買収、2016年のスタートトゥデイからのMBOを経て、現在、光本氏はブラケットの取締役会長とバンクの代表取締役兼CEOを務めている。光本氏がショップ作成サービスから決済、そして金融……とはまだ言えないまでも、即金の資金ニーズに応えるCASHを提供してきた道のりは、BASEの鶴岡氏の動きとある意味よく似ている。
もちろん、BASE BANKが今、CASHに似たようなコンシューマー向けの金融サービスを出してくるとは、あまり考えにくい。どちらかと言えば「BASE経済圏の拡大」につながる、オンラインショップへの支援やマーケット拡大を狙っているのだとすれば、加盟ショップ向けのレンディングや、ファクタリングといったような事業を考えているのかもしれない。“遠くない未来”に行われるという新事業の発表を、期待して待とう。