BBCが独自の音声アシスタントを開発中:コードネームは“ビープ”

BBC、別名英国放送協会、別名ザ・ビープ、別名アーンティー(おばちゃん)は、音声アシスタントに参戦しようとしている。

ガーディアンは、“ビープ”(Beep)という仮称を与えられた、このアレクサのライバルの開発計画を報じたが、巨大ハイテク企業にくらべてBBCの開発資源が細身であることから、機能的には明らかに軽量級だ。

BBCのニュースサイトによれば、このデジタル音声アシスタントは来年にローンチされる予定だが、これを使うための専用のハードウェアは持たず、「あらゆるスマートスピーカー、テレビ、モバイル」に対応するという。

しかしなぜ、公的資金で運用されているこの放送局が、アマゾンのアレクサ、Googleアシスタント、アップルのSiri、それにサムスンのビクスビーなどなど民間企業の製品がひしめく市場に向けたAI開発に投資することにしたのだろう。その狙いは、「誰かに許可をもらって決められた方法でやるのではなく、新しいプログラム、機能、体験を自分たちで作る実験」だとBBCの広報担当者はBBCニュースで語っていた。

BBCは、職員に参加してもらって音声データを集め、AIをトレーニングし、方言の宝庫であるイギリスの言葉に対応できるようにしたようだ。

「BBC iPlayerのときと同じく、この新しいテクノロジーの恩恵を誰もが受けられるように、そしてエキサイティングな新しいコンテンツ、プログラム、サービスをみんなに届けられるようにしたいのです。それも、信頼できる簡単に使える方法で」と広報担当者は言い加えた。「これは、公的サービスの価値が音声認識機能の中でも保たれることを確かにする、新たな一歩となります」

この動きは一見すると、すでに長年にわたり民間企業との最先端の音声AIの開発に投資をしてきたことへの反動のようでもあり、守りの態勢のようでもあるが、BBCにはライバルの巨大ハイテク企業にはない強みがある。地方の方言に精通していることに加えて、サービスとしての愛される人格を提供できる音声アシスタントのデザインに、ニュースや娯楽の膨大なアーカイブを利用できることだ。

ドクター・フー』を演じたトム・ベイカーの声で(宇宙の)天気を知らせてくれたら、どんな感じだろう。または『ダッズアーミー』の登場人物が今日の予定を話してくれたら、または『アーチャーズ』の最新エピソードの要約を、アンブリッジのお馴染みの住民の声で聞かせてくれたら、どんなだろう。

あるいは、ビープに心地よい、またはドラマチックなサウンド効果を鳴らすよう教えて、子どもたちを喜ばせることができたら?

ある意味、音声AIは最新の配信メカニズムだ。BBCはそこに目を付けている。音声コンテンツに事欠かないことは確かだ。それを再パッケージ化して声による命令でオーディエンスに届け、人を楽しませ喜ばせるパワーを拡張できる。

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BBCがデジタル音声アシスタントを計画していると知って楽しみにしている。その膨大な音声ライブラリーは、洗練された競争力のあるユーザー体験を作り出すだろう。在来団体の賢い一手だ。

豊富なコンテンツとなれば、音声AIの先駆者である巨大ハイテク企業にも及ばないところだ。

無理矢理ユーモアを突っ込んだり(悪いジョークを吐くAI)や、キャラクターをねじ込んでみたりといった試みがなされたが、ほとんど自爆した。合成音声を本物の人が話しているように偽装するという、倫理的に怪しいものまであった。エンターテイナーではない技術系企業だけに、それらはすべて予想どおりの結果となった。彼らの本分はメディアではなく、あくまで開発なのだ。

BBCが音声アシスタントというコンセプトに辿り着いたのは、意外な方向からだった。BBCの番組をもっとたくさん送り出すための、現代の受話器と彼らは考えたのだ。

そのためビープは、アレクサなどと同じ技術水準の機能で戦おうとはしていない。それでもBBCは、彼らに勝利し人々に影響を与える手を持っていることを巨大ハイテク企業に見せつけることができる。

いちばん少なく見積もっても、彼らは、みんなが切望するクリエイティブな競争力を合成音声に与えてくれるだろう。

ただ、その試作AIに“アーンティー”と命名したとき以上に、ビープが私たちを笑わせてくれなかったのは残念だ。もっとパリッとした2音節のトリガーワードのほうが発音し辛くて面白かったのに……

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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