BMWが数日中にAmazon Alexaのドライバー向けサポートを開始しようとしている。これまでBMWは、Alexaを筆頭にCortana、Google Assistantなどの音声アシスタントの導入計画について語っていたことから、このニュース自体は大きなサプライズというわけではない。しかし私は、車内でAlexaを使うとは一体どういうことなのかを実際に体験するため、ドイツ、オーストリア、アメリカ、イギリスでのオフィシャルローンチ(その他の地域でも近日中にローンチ予定)を前に、ミュンヘンへ飛んだ。
BMWでデジタル・プロダクト担当SVPを務めるDieter Mayは、今年の初めに、同社の車内デジタルアシスタントは、「カップホルダーに入ったEcho Dot」を凌駕するものでなければいけないと語っていた。つまり、デジタルアシスタントが車内での体験や車に搭載されているその他のテクノロジーと深く結びついていなければいけないということだ。先に結論を言うと、BMWは自分たちの考えをしっかりと形にできていた。それもかなりのレベルで。
おそらく私が一番衝撃を受けたのは、BMWのデジタルアシスタントとのコミュニケーションは音声インターフェースのみに留まらないという点だ。BMWはAlexaの視覚的なレスポンスにも対応するため、AmazonのAlexaチームと直接やりとりをしており、BMWのほとんどの新モデルに搭載されている、コンソール上部のタブレットのようなディスプレイを活用することで、BMWのデジタルアシスタントは単に質問の答えを読み上げるだけでなく、必要に応じて追加情報やグラフなどを表示できるようになっているのだ。そのためBMWのAlexaは、Echo DotよりもEcho Showを使っている感覚に近い(もちろんディスプレイ上で動画を見ることはできないが)。
私がデモを試したのは、Alexに対応するため特別に手を加えられたBMW X5(2015年製)で、例えば天気について尋ねたり、質問に対してウィキペディアの情報が返されたりすると、ディスプレイが自動的に起動するようになっていた。
素晴らしいのは、Alexa経由の情報にも、その他の車載システムと同じデザインが適用されているところだ。つまりAlexaが表示する天気予報は、BMW独自のConnectedDriveシステムが表示する天気予報とまったく同じ見た目をしているのだ。唯一の違いといえば、Alexaからの情報にはスクリーンの左上に「Alexa」という文字が表示されるくらいだった。
簡単に聞こえるかもしれないが、これを実現するためにBMWは相当Amazonと交渉を行ったはずだ。特にBMWのデジタルアシスタントのユニークなところである、2つ目のポイントに注目するとその意味がわかる。そのポイントとは、ユーザーが「話す」ボタンを押して質問を投げかけると(新しいモデルだとウェイクワードでもOK)、その質問がまずBMWのサーバーへと送られ、それからAmazonに送信されるという点だ。BMWは自分たちでデータをコントロールすることで、ユーザーのプライバシーを守りたいという考えから、このプロキシサーバを中間に置くことにしたのだという。そのため、Alexaからのレスポンスには、通常よりも少しだけ時間がかかるが、BMWチームはできる限りこのラグを短くできるよう努力を続けている上、デモを体験しているときは正直そこまで気にはならなかった。
担当チームによれば、彼らが最初に取りかかったのは、ユーザーのクエリを正しいサービスへと振り分ける仕組み作りだったという。すでに多くの車には、カーナビゲーションで目的地を設定するときなどのために、音声認識システムが搭載されている。しかしAlexaが搭載されると、ユーザーの「Alexa」という呼びかけに反応して、そのクエリをAlexaサーバーへとルートしなければいけない。また彼らは、いかにAlexaがBMWのシステムと深い部分で連携しているかを強調する。「私たちのシステムは、単にスマートフォンから情報をストリーミングしているわけでもなければ、周辺機器のように追加サービスとして上乗せされているわけでもない」と広報担当者は語る。
「ユーザーはBMWに期待する深いレベルでの統合を体験できる。そのために私たちは通信モジュール(SIMカードカード)をはじめとする、既存の車載システムを活用している」
Alexaのオープンなエコシステムの強みのひとつはスキルだ。もちろんすべてのスキルが車内で使うのに便利というわけではなく、中には運転中は邪魔に感じられるものもあることから、BMWのチームは車内で使えるスキルのリストを現在準備している。
BMWはAmazon以外にもMicrosoftと協業を進めており、BMWのクラウドサービスの多くはAzure上で管理されている。BMWによれば、AlexaとCortanaにはそれぞれの良さがあり、CortanaであればプロダクティビティやOffice 365との連携などがその利点なのだという。ということは近い将来、車内でAlexaとCortanaの両方できるようになるかもしれない。だからこそ、BMWは音声コマンドのルーティングの仕組みを築き、音声データを自分達でコントロールしようとしているのだろう。
さらにBMWは、ユーザーの利用状況に応じてこのデジタルアシスタントを改善していく予定だと言う。多くの機能はクラウド上で動いているため、アップデートは簡単で、チームは新機能をすばやく導入できるだろう――まるでソフトウェア企業のように。
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(翻訳:Atsushi Yukutake)