新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックは、多くの高齢者が直面している問題に厳しいスポットライトを当てた。高齢者は、入院を必要とするケースが増加している最もリスクの高い人たちであり、老人ホームは特に集団感染に対して脆弱だった。新型コロナに対応する一方で、高齢者はまたロックダウンや隔離中に慢性病の治療を受けることが困難になるなど多くの問題にも直面している。
こうした問題の多くは、パンデミック後もなくならないだろう。国連によると、世界の65歳以上の人口は他のどの年代より速く増加している。と同時に、介護者、特に老人ホームではなく引き続き自宅で暮らしたいと考えている高齢者をサポートする介護者不足は深刻だ。
テクノロジーは、さまざまな方法でこの問題の解決に貢献できる。介護者をサポートする(そしてバーンアウトを減らす)ことで高齢者が自宅で健康状態のモニタリングができ、そして孤独と戦うツールを作り出すことができる。CESではいくつかの「エイジテック」の発表があった。最も注目を集めたものの1つが、非営利スタートアップアクセラレータープログラムのAARP Innovation Lab(AARPイノベーションラボ)だった。
AARPのグループで共通するテーマの1つが、高齢者が「自立して暮らす」あるいは老人ホームに移る代わりに自宅やコミュニティに留まることをサポートするテックだった。たとえばWheel Pad (ホイールパッド)は、既存の構造や敷地に導入できるアクセスしやすい自宅や職場空間をデザインする。Mighty Health(マイティヘルス)はユーザーがヘルスコーチ、有資格のトレーナー、パーソナライズされた栄養プランにアクセスできるアプリであり、また転倒しやすいかどうかを予測するためにユーザーのバランスを評価する体重計のZibrio(ジブリオ)も自宅でのルーティンに組み込むことができる。
AARP Innovation Labの他のスタートアップは、介護者のサポートにもフォーカスしている。たとえば FallCall Solutionsは転倒が感知されたらアラートを出し、家族が本人に連絡を取って確認できるApple Watchアプリを開発している。Ianacareという別のアプリは家族が介護者のタスクを調整し、サポートを求めるのを支える。終活のための計画は家族にとって最も感情的に難しいプロセスだが、「終末期プラットフォーム」のCakeは遺産やヘルスケア計画のためのツール、親類が介護問題や悲しみに対処するのをサポートするリソースを提供している。
また別のスタートアップは医療ケアに焦点を当てている。慢性病を抱える人のためにFolia Health(フォリアヘルス)は治療の進捗状況のモニターをサポートする。臨床面では、Embleema(エンブリーマ)のソフトウェアを使うことで、臨床研究者はデータを共有したり、研究を組み立てたりして薬剤研究をより効率的に行える。
CESに参加した注目に値する他のエイジテックのスタートアップには、ユーザーが立ち上がった時に自動でオンになり、転倒したときに家族にアラートを出すスマートランプのNobiがあった。Nobiは住まいや老人ホームで活用できる。
Caregiver Smart Solutionsは、健康問題の可能性を早期に発見する機械学習ベースのアプリで、転倒センサー、モニターと緊急用のボタンを提供することで、高齢者の自宅暮らしを支える多面的なプラットフォームだ。失禁に悩む人向けには、ウェアラブルデバイスのDFreeがある。超音波センサーを使って膀胱にどれくらい尿が溜まっているのかをモニターし、トイレに行く間隔の平均時間を常に追跡することでユーザーのストレスを減らす。消費者、医療施設向けに展開されている。
老人ホームで暮らす高齢者向けでは、Rendeverがある。これは孤独感を減らすのに役立つバーチャルリアリティプラットフォームで、過去を思い出すという経験を通じて認知症の人をガイドする回想セラピーと一緒に使うことができ、ランドマークへ仮想旅行することもできる。コンパニオンロボットのCutiiもまた孤独感を減らそうとしている。コンパニオンロボットはCESで何年もの間主力だったが、Cutiiは音楽やゲーム、ライブイベントといったエンターテインメントとは一線を画している。Cutiiはビデオコールや夜間パトロールの機能も備えている。
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:CES 2021、高齢者
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(翻訳:Mizoguchi)