CornerJobは、2月に行われたシリーズAで1000万ドルを調達したばかりだった。バルセロナを拠点に求人サービスを運営する同社は、類似サービスを提供する他社同様、高度な技術を必要とせず採用スピードの早い求人情報を、スマートフォン用メッセージングアプリを通じて提供することにフォーカスしている。そしてつい最近、2月のシリーズAに続き、シリーズBラウンドでの2500万ドルに及ぶ資金調達についての発表を行ったのだ。つまり、1年弱で既に計3500万ドルもの資金を調達したことになる。
シリーズBは2つの要素から構成されている。2000万ドルは、リードインベスターのNorthzonや、e.ventures、さらには以前からのCornerJob投資家から調達された。メキシコでのプラットフォームの成長を明確な目的とした、media for equity(広告スペースと株式の交換)投資契約が残りの500万ドルにあたる。
CornerJobは既にヨーロッパにおける3つの市場でmedia for equity契約を結んでおり、海外の市場でも同様の戦略をとろうとしているのだ。
500万ドル分の契約は、メキシコメディアの巨塔TV Aztecaの新しいmedia for equityファンドと結ばれており、この新たなファンドはAntai Venture Builder(もともとCornerJobを生み出したベンチャービルダー)とメキシコのベンチャービルダーVariv(こちらも過去に既にCornerJobへの投資を行っている)によって管理されている。
Antai Venture Builderの共同経営責任者であり、CornerJobの共同設立者でもあるMiguel Vicente氏と少しでも一緒に時間を過ごせば、彼から「私たちはmedia for equityが大好きなんです」と聞くことになるだろう。
そして、少しでも現在のスペインのテレビ番組を見れば、すぐにCornerJobのCMを見かけることだろう。CMでは、遅くても24時間以内にユーザーが採用結果を知ることができる、とCornerJobが約束する様子が宣伝されている。
テレビは、依然として消費者の注意をひくための主要な手段として明確に機能しているため、デジタルマーケットプレイスを運営する企業が、ネットワーク効果のバリアを克服する際や、サービスの繁栄に必要な多くのユーザーを獲得するのに役立っている。
Antai Venture Builderから生まれたスペインのスタートアップWallapopも、目を引くテレビCMを利用することで、ロケーションベースのフリーマーケットアプリのための多額の資金を調達し、その後、大西洋を超えたアメリカ市場への進出へとそのフォーカスを広げていった。
Wallapopブランドを急速に成長させるためのコア戦略として利用されていたmedia for equityが、既に競争の激しい業界にいるCornerJobの成長を促進するためにも現在使われているのだ。同業界では、採用スピードの高速化とブルーカラーの仕事を支援するために、古くから残るCVを使った採用プロセスを消滅させ、モバイル上のプロフィールとチャットアプリで代替しようと、いくつものスタートアップがしのぎを削っている。
CornerJobと同じ考えをもつ求人サービス界のライバルとしては、Accelの投資先であるJobTodayや、先月シリーズBで4200万ドルを調達し、ホワイトカラー向けからCornerJobと似たセグメントへの方向転換を図っているJobandtalentが存在する。
そのため、CornerJobがいる市場での競争は明らかに加熱しており、各社のアプリが独占的な支配に向けての戦いを続けながら、投資家の資金をひきつけている。そして、マーケットプレイス界での経験則に照らすと、ブランドが大きくなるほど利益も不釣り合いな程増大するため、各社スケールアップに躍起になっている。
Vicente氏はTechCrunchのインタビューに対して、Cornerjobには現在月間100万人のアクティブユーザーがいると話している。2月のインタビューでは、アクティブユーザの数については明かしておらず、アプリが月間50万ダウンロードに達しているとだけ語っていた。今では月間のアプリダウンロード数は65万にまで増えている。
Vicente氏はさらに、現時点でCornerJobに登録している雇用主は合計5万社存在し、その「ほとんど」が毎月求人を掲載していると付け加えた。
また、CornerJobでは「月に約4万件もの新規採用通知」が出されているようだ。
「CornerJobにとっての最大の市場はフランスとイタリアで、どちらの市場でも私たちがこの新たなカテゴリーを牽引しています」とVicente氏は加えて言う。「さらに、私たちの中小企業に特化したSaaS製品のおかげで、スペインとメキシコでも急速な成長を遂げています」
CornerJobは、2015年9月に最初の市場となるイタリアへの参入を果たした。その後、フランス、スペインそしてメキシコと続いていることから、CornerJobの強みがすぐに分かるだろう。
しかし、同じカテゴリーにいるスタートアップの中でCornerJobだけがSaaSサービスを提供しているわけではない。Jobandtalentは、無料求人サービスのマネタイズ戦略にあたり、中小企業向けに採用活動や人事関連の事務作業を肩代わりすることで、採用者の給与から一定のマージンをとっている。
CornerJobは、同社のSaaSは着眼点が違うと主張する。CornerJobは、(給与管理や契約書作成などの)派遣社員サービスの提供ではなく、採用プロセスをスピード化するためのツールを提供することにフォーカスしているのだ。そうすることで、以前CornerJobが採用の合否とマネタイズ戦略が結びつくことになるだろうと言っていたように、同社の将来のマネタイズに向けたスピードも加速することができる。
「私たちは派遣社員のエージェントではなく、派遣サービスを利用しないような企業も含め、もっと広い範囲をターゲットとしています。そのため私たちは、SaaSプラットフォーム上で、企業が採用プロセスをもっと簡単に早く進められるようなツールを提供することにしました。採用プロセスに関する部分は、企業にとって最も適切な候補者を選ぶため常に改良が加えられている自社開発アルゴリズムの上に存在しており、まずは候補者選び、そしてその後のプロセスまでシームレスにサポートできるようになっています」とCornerJob CEOのDavid Rodriguez氏は言う。
さらに彼は、「私たちが提供する、企業向けSaaSプラットフォームのデスクトップ版は、熱心な採用担当者のための生産性ツールで、求人情報の掲載や、候補者の管理、事前選別、そして候補者と効率的にチャットでコミュニケーションをとることなどができます。アプリに備えられている全ての機能のほか、デスクトップ版では、複数の操作(候補者の事前選別とメッセージの一斉送信など)を同時に行える機能や、POSネットワークの状況をモニタリングする機能、さらには採用状況に関する指標を確認できるダッシュボードが実装されています」と語る。
シリーズBでの調達資金は既存の市場での活動に対しても利用される(つまり他社を圧倒するためにヨーロッパでのテレビCMは続けられる模様である)一方、Vicente氏によれば、CornerJobは今年中にまたひとつ新たな市場にその足跡を残そうとしている。
彼はこの段階では「ヨーロッパの主要国」としか言わないが、恐らくイギリスかドイツのことを指しているのだろう。
NorthzoneのパートナーであるJeppe Zink氏は、ある声明の中で今回のシリーズBに関するコメントを残し、求職者からの「柔軟性の向上を求める動き」や、それに伴う採用プロセス効率化のニーズが主なチャンスであると強調した。
「求人アプリ業界の競争は熾烈ですが、私たちはCornerJobがこのカテゴリーの勝者になるのにふさわしい要素を持っていると信じています。彼らの非常に素晴らしい経営陣や、南ヨーロッパ中での好調な成長から、CornerJobとのパートナーシップにはワクワクしています」とZink氏は付け加えた。
以前からのCornerJobの投資家には、Mediaset Italy、Mediaset España(子会社のAd4Venturesを通じての投資)、TF1 Group、Sabadell Venture Capital、Media Digital Ventures(MDV)、Cube Investments、 Ithaca Investments、Bonsai Venture Capital、Samaipata VenturesそしてCaixa Capital Riscがその名を連ねる。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)