DNAを利用してクモの糸を合成、新繊維を目指すBolt Threads

TechchCrunchは、繊維合成のスタートアップ、Bolt ThreadsのR&Dラボを訪問して、タンパク質からクモの糸を合成するテクノロジーを取材してきた。この繊維はケブラー素材よりはるかに強く、絹糸の特性を備え、自然分解するためアパレルにも他の産業用途にも大きな可能性を秘めている。

我々は2017年に同社がシリーズDで1億ドルの資金を調達したことを報じた。その後、研究は大きく前進したようだ。カリフォルニア大学サンフランシスコ校で学位を取得した共同創業者でCEOのDan Widmaier(ダン・ウィドマイアー)博士は「現在主流の石油ベースの合成繊維は自然に分解しないためさまざまな問題を引き起こしている。自然素材はこの点で優れているが利用できる量に制限があった」と会社設立の動機を語った。

ウィドマイヤー博士によれば、同社のテクノロジーは自然素材と同じ特性の物質を商用利用できるようキロ単位で合成するものだという。博士は大学でクモの糸の研究を行い、優れた特性に感銘を受けたという。カリフォルニア大学バークレー校でタンパク質合成によりクモの糸を合成するテクノロジーを研究していた、共同創業者で最高科学責任者のDavid Breslauer(デビッド・ブレスラウアー)博士と知り合ったことでBoltが創立された。

ブレスラウアー博士によれば、クモの糸のDNAを解析し、同様の物質を生み出すDNAをイースト菌に移植することで新しい繊維の原料が得られるのだという。ブレスラウアー博士は「大麦からイーストでビールを作るのと同じだ。ただし我々のプロダクトはビールではなくスパイダー・シルクだ」と説明する。クモの巣をささえる糸は引張エネルギーベースで、ケブラー素材の7倍の強度があるという。

Boltでは、一般消費者向け製品としてスパイダー・シルクが広く使えるようにするために、大手繊維企業と協力して開発を継続中だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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投稿者:

TechCrunch Japan

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