DNA Scriptは、新たに3850万ドル(42億円強)の資金調達を行った。遺伝物質の製造における、史上初の大きな飛躍であるという触れ込みのプロセスを、商業化することが目的である。
産業を医療から農業へと改革していく合成生物学の革命は、同じように重要な3本の柱に支えられている。
その3本とは、(1)分析:ゲノムをマップし異なる遺伝子の機能を理解する能力、(2)合成:ある特定の機能を達成するためにDNAを製造する能力、(3)遺伝子編集:遺伝コードを足したり引いたりすることを可能にするCRISPRベースの技術である。
ゲノムの分析と編集を変革する新しい技術はすでに導入されていいたが、遺伝物質の製造方法に関しては過去50年間にわたってほとんど進歩してこなかった。それこそがまさに、DNA Scriptが取り組んでいる問題である。
従来は、DNAを製造するためには、化合物を用いて、せいぜい200個程度のヌクレオチド塩基で構成されるDNAの鎖を合成する(もしくは書き出す)ことが必要だった。こうして合成された遺伝子コードの断片が、その後集められ組み立てられて遺伝子になるのだ。
DNA Scriptの技術は、DNAが細胞内で組み立てられる酵素プロセスを模倣することで、エラーは少なく、そして化学的廃棄物は伴わずに、ヌクレオチドのより長い鎖を作ることを約束する。この酵素利用プロセスは、ヘルスケア、化学製造、および農業における商用利用を加速することができる。
「工程を加速できる技術は、どんなものでもとても有意義なものとなり得ます」とNatureで語っているのはMITの合成生物学者であるクリストファー・ボイト(Christopher Voigt)氏である。
市場の中で、酵素を利用したDNA生産において、飛躍的な前進を遂げようとしているのは、DNA Scriptはだけではない。ハーバード大学の有名な遺伝学者ジョージ・チャーチ(George Church)氏と協業するNuclearや、カリフォルニア大学のジェイ・キースリング(Jay Keasling)氏のバークレー研究所系列のスタートアップであるAnsa Bioなども、同じ技術を推進している。
しかし、パリを拠点とするDNA Scriptは、商業的に展開し最初に市場に参入することを可能にする、ある程度のマイルストーンを達成している。
少なくともそれこそが、今回の新しい投資家であるLSPとBpifranceの両者が、そのLarge Ventureファンドを通じて期待していることだ。DNA Scriptに対する最新のファンディングに対して、この両者と共に、これまでの投資家であるIllumina Ventures、M. Ventures、Sofinnova Partners、Kurma Partners、そしてIdinvest Partnersが参加している。
DNA Scriptによれば、調達した資金は、最初の製品の開発を加速させ、米国でのプレゼンスを確立するために使われる。
「今年初頭のAGBT(最先端ゲノム生物学と技術)会議で発表したように、私たちDNA Scriptは、今日使用されている最高の有機化学プロセスと同等の平均合成効率で、200merのオリゴヌクレオチドを酵素方式で合成した、最初の企業なのです」と語るのはDNA ScriptのCEOで共同創業者のトーマス・イベール(Thomas Ybert)氏だ。「私たちの技術は、最初の商用製品として十分な信頼性を保つことができるようになりました。このことにより、ほんの数時間で完了するDNA合成技術を使って、世界中の研究者に1日で結果を返すという約束を果たすことができるようになると考えています」。
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(翻訳:sako)