Draper NexusがDNX Venturesへ名称変更、250億円規模の3号ファンド設立へ

シリコンバレーと東京に拠点をおくベンチャーキャピタルDraper Nexus Ventures(ドレイパーネクサスベンチャーズ)は2月13日、名称をDNX Ventures(ディー・エヌ・エックスベンチャーズ / 以下DNX)へと変更したことを明らかにした。

合わせて同社では新たに3号ファンドを立ち上げたことも発表。最終的には総額で250億円程度の規模を予定していて、年内をめどにファイナルクローズを行う計画だ。

同ファンドにはLPとして京セラコミュニケーションシステム、ジェーシービー、東京海上ホールディングス、日立製作所、日立ソリューションズ、ファーストブラザーズ、みずほ銀行らが出資。DNXによるとすでにファーストクローズを完了し、運用もスタートしているという。

以下のスタートアップはこの3号ファンドからの出資先。アクシバース、Inner Resource、Resilyについては、本日それぞれ個別でも紹介している。またRESTARは昨年開催されたTechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトルのファイナリストだ。

  • アクシバース : 勤務シフトの作成を自動化するSaaS「Shiftmation」
  • Inner Resource : 研究室やラボ向けの購買・在庫管理SaaS「reprua」
  • トラジェクトリー : ドローンの自動運行管理システム
  • Resily : クラウドOKR管理ツール「Resily」
  • RESTAR : 投資用不動産の分析・評価ツール「REMETIS」

日米で80社以上のスタートアップへ出資

DNXは2011年よりシリコンバレーと東京に拠点を設け、日米市場を軸にB2Bスタートアップへの投資を行ってきた。これまで2つのファンドを通じて累計で2億2500万米ドルを運用し、投資したスタートアップは80社以上。エグジットも12件ほど生まれている。

米国の投資先にはB2Bの中でもサイバーセキュリティーや自動運転、宇宙など「フロンティアテック」と呼ばれるような先端領域のスタートアップも多い。

たとえば自動車×ディープラーニングの分野で事業を展開するNautoにはシリーズAで出資済み。同社は専用の車載デバイスから取得した膨大なデータセットを保有し、集めた映像データをディープラーニングとコンピュタービジョン技術によって解析している。ソフトバンク・ビジョンファンドのほか、Toyota AI VenturesやGeneral Motors Ventures、BMW i Venturesなど自動車系のファンドがこぞって投資している注目のスタートアップだ。

一方日本ではいわゆる「バーティカルSaaS」やエンタープライズテック系のスタートアップの支援に力を入れてきた。建設プロジェクトSaaSを扱うオクトや電子薬歴SaaSを展開するカケハシ、予算管理SaaSのDIGGLEなどは全てDNXの投資先だ。

そのほかグルメ領域のfavy、HR領域のチームスピリット、車両管理のフレクト、デジタルマーケティングのサイカ、たこ焼き調理ロボのコネクテッドロボティクスなど幅広いジャンルの企業へ出資をしている。

3号ファンドでも日本では引き続きSaaSなどに出資

冒頭で紹介した新たな出資先5社の顔ぶれを見てもわかるように、今回のファンドでも日本ではSaaSを始めとしたB2B領域のスタートアップに出資をしていく方針。割合としては日米でそれぞれ半分ずつ出資をしていくような形になるそうで、日本は引き続きアーリーステージ(数億円)とシードステージ(数千万円)にフォーカスする。

マネージングディレクターの倉林陽氏や中垣徹二郎氏の話にもあったが、ここ数年で国内のSaaSを取り巻く状況も大きく変わってきている。純粋にSaaSで起業する起業家が増えてきているだけでなく、実際に自分自身で業界の課題を体感したり、業界に対する深い知見を持った上でSaaSを開発するスタートアップも増えてきた。たとえば上述したカケハシ代表取締役の中尾豊氏は武田薬品工業の出身だ。

これまでB2Bに焦点を当てて国内外で投資を重ねてきたDNX。特に倉林氏は前職のセールスフォース時代からこの領域でかなりのスタートアップを支援してきたベテランとも言えるが「(国内においては)SaaS部のようなコミュニティを通じてSaaS領域の投資先のサポートをより充実させたい」とのこと。

並行して国内外のスタートアップとのネットワークを生かして、日本の大企業のオープンイノベーション支援も継続していくという(すでに100件を超える日本企業とスタートアップとのパートナーシップおよび協業事例がある)。

投稿者:

TechCrunch Japan

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