EUが半導体の自給体制の構築を目指す法律を制定へ

欧州連合(EU)は域内の半導体サプライチェーンを自給の強固なものにすべく、法制化という手段に出る。

欧州委員会の委員長は現地時間9月15日、来たる「European Chips Act(欧州半導体法)」を連合演説で予告した。委員長の​​Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏は、半導体製造の自主権を得ることはEUの包括的デジタル戦略の鍵を握ると訴えた。

フォン・デア・ライエン氏は、クルマから電車、スマートフォン、他の家電に至るまで、データ処理を半導体に頼っているさまざまな種の製品の生産抑制につながった世界的な半導体不足について警鐘を鳴らした。半導体が不足する事態となって、この分野における欧州の能力に対する議員の懸念は募っている。

「半導体なしではデジタルは成り立ちません」と同氏は指摘した。「こうして話している間、増大する需要にもかかわらず、全生産ラインはすでに減速しています」。

「しかし世界需要が爆発的に高まった一方で、デザインから製造能力に至るまでバリューチェーン全体での欧州のシェアは縮小してきました。我々はアジアで生産される最先端の半導体に頼っています。ですので、これは我々の競争力の問題にとどまるものではありません。テックの自主権の問題なのです。そこに注力しましょう」。

欧州半導体法は欧州の半導体研究、デザイン、テスト能力をリンクさせるのが目的だとフォン・デア・ライエン氏は話し、EUの自給能力を高めるためにこの分野へのEUと国家による投資の「協調」を求めている。

「目的は、最先端の欧州の半導体エコシステムを共同でつくることで、ここには生産も含まれています。供給を保証し、画期的な欧州テックのための新しいマーケットを掘り起こします」と同氏は付け加えた。

同氏は、欧州の半導体保有量を補強するという試みは「困難な仕事」との考えを表しつつ、20年前のガリレオ衛星測位システムで成し遂げたミッションになぞらえた。

「今日、欧州の衛星は世界で20億台超のスマホに測位システムを提供しています。我々は世界のリーダーなのです。今回は半導体ですが、再び大胆に取り組みましょう」。

その後、EU地域政策委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏が法制化計画の詳細を補強し、欧州委員会は加盟国の取り組みを「理解しやすい」汎EU半導体戦略に統合し「単一市場を細分化する国の助成金に走ることを回避するための」フレームワークを構築したいと考えている、と述べた。

目的は「欧州の利益を守り、グローバルで地政学的に欧州の地位を確固たるものにする環境をつくること」だ、と付け加えた。

ブルトン氏によると、半導体法は3つの要素で構成される。まず、ベルギーのIMEC、フランスのLETI/CEA、ドイツのフラウンホーファー研究機構といった機関による取り組みをベースに構築する半導体研究戦略だ。

「既存の研究パートナーシップをもとに、技術を強化し、我々の戦略的利益を維持しつつ、研究の野心を次のレベルにもっていく戦略をデザインする必要があります」とブルトン氏は説明する。

2つめの要素は欧州の半導体生産能力を高めるための集合的な計画で構成される。

計画されている法制化は半導体サプライチェーンの監視と、デザイン、生産、梱包、設備、サプライヤー(ウェーハ製造者など)のレジリエンスのサポートを目的とする。

最終目標は、最も高度でエネルギー効率の高い半導体を大量生産できる欧州の「メガファブ(大規模工場)」の開発を支えることだ。

しかしながら、EUが必要とするすべての半導体を生産できる未来を想定しているわけではない。

欧州半導体法の3つめの要素は、国際協力・提携のためのフレームワークを提示することだ。

「欧州だけですべてを生産するという考えではありません。欧州での生産を盛んなものにするのに加えて、我々は1つの国や地域への過度な依存を減らすためにサプライチェーンを多様化する戦略を描く必要があります」とブルトン氏は続けた。「そしてEUがグローバルでトップの外国投資先であり続けることを目指し、特にハイエンドなテクノロジーの生産能力を高めるのに役立つ外国投資を歓迎する一方で、欧州半導体法を通じて我々は欧州の供給保証を保つために適切な条件を整えます」。

「米国は現在、特定の研究センターに資金を提供し、高度な生産工場を開所するのをサポートするための米国半導体法のもとで巨額の投資を議論しています。目的は明確で、米国の半導体サプライチェーンのレジリエンスを強化することです」と同氏は付け加えた。

「台湾は半導体製造における優位性を確保するという立場です。中国もまた、技術移転を回避するための輸出規制によって制約を受けている中で、テクノロジーギャップを埋めようとしています。欧州は遅れを取ることはできず、またそのつもりもありません」。

9月15日に発表された文書に加えて、半導体法はフォン・デア・ライエン氏率いる欧州委員会がすでに提示している他のデジタル面での取り組みをベースとする、とEUは述べた。その取り組みとは、インターネット大企業「監視」の力を持つようにし、プラットフォームの説明責任を増やすこと(デジタルマーケット法とデジタルサービス法)、ハイリスクのAI応用を規制すること(人工知能法)、オンラインの誤情報を取り締まること(行動規範の強化を通じて)、地域のデジタルインフラとスキルへの投資を増やすことなどだ。

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画像クレジット:Torsak Thammachote / Shutterstock

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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