EUで国境を越えた新型コロナ接触追跡アプリの相互運用開始、ドイツ、イタリア、アイルランドのアプリが対象

欧州連合(EU)は、先月、2020年9月に行われたシステムの試験運用を経て、Bluetooth近接通信機能を利用してスマートフォンユーザーの接触リスクを計算する新型コロナウイルス接触追跡アプリの国境を越えた相互運用を最初のグループで開始した。

各国のアプリのうちバックエンドがゲートウェイサービスを通じてつながるのは、ドイツの「Corona-Warn-App」、アイルランドの「COVID tracker」、イタリアの「Immuni」だ。

この意味するところは、アプリのユーザーが他の国に旅行するとき、追加でソフトウェアをダウンロードしなくても、旅行しなかった場合と同じように自国のアプリから接触通知が送られてくるということだ。

合計すると、上記3カ国の新型コロナアプリは約3000万人がダウンロードしており、EUによるとそれはEU内のダウンロードの3分の2に相当する。

画像クレジット:EU Publications Office

他国のアプリも今後数週間でサービスに参加し、相互運用性を得ると予想される。その段階で互換性をもつ国内アプリが少なくとも18個増える。

各国アプリの次のグループは、試験期間を経て来週参加する。チェコの「eRouška」、デンマークの「Smitte|stop」、ラトビアの「Apturi COVID」、スペインの「Radar Covid」だ(ただし「Radar Covid」はまだスペインを完全に網羅していない。カタルーニャ地域は地域の医療システムと統合されていない)。11月には互換性のあるアプリがさらに追加される予定だ(欧州委員会リリース)。

ゲートウェイは現状、分散型アーキテクチャー(基本設計)を備えた公式の新型コロナアプリで動作するように設計されている。つまり、フランスの「StopCovid」アプリなど、集中型アーキテクチャーを使用するアプリは今のところ互換性がない。

一方、英国のアプリ(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド向け)は、技術的に互換性のあるアプリアーキテクチャーを備えているが、プラグインされる可能性は低い。英国は2020年末に貿易圏から外れるからだ(したがって相互運用するには英国・EU間の合意が別途必要になる)。

「EU加盟国の約3分の2が互換性のある追跡・警告アプリを開発しています。接続の準備が整えば、ゲートウェイはすべての加盟国に開かれています。接続は10~11月にかけて徐々に行われますが、各国当局の希望でもっと後の段階でアプリを接続することもできます。『オンボーディングプロトコル』が開発されており、そこに必要な手順が示されています」と欧州委員会はQ&Aで述べている。

EUのアプリのための国境を越えたシステムは、ゲートウェイサーバーを使用することにより機能する。T-SystemsとSAPによって開発・設定されており、ルクセンブルクにある欧州委員会のデータセンターで運用される。このデータセンターが、各国のアプリ間で任意の識別子の受け渡しを行う。

「アプリによって生成された任意のキー以外の情報をゲートウェイが処理することはありません」とEUはプレスリリースで述べている。「情報は匿名化され、暗号化され、最小限に抑えられ、感染を追跡するために必要な期間のみ保存されます。個人を特定したり、デバイスの場所や動きを追跡したりすることはできません」。

欧州の広い地域でパンデミックの第2波(The Guardian記事)を迎える中、各国の新型コロナアプリのパッチワーク全体で国境を越えたシステムを非常に迅速に稼働させるに至ったことはEUにとっての成果だ。もちろん、Bluetoothベースの接触通知が、新型コロナの感染拡大との戦いにおいて有用なのかについてはなお疑問があるにもかかわらずだ。

しかし、EUの委員会は10月19日、そうしたアプリが人間による接触追跡など他の手段を補完するのに役立つ可能性があると示唆した。

EUの健康・食品安全担当のStella Kyriakides(ステラ・キリヤキデス)委員は声明で次のように述べた。「新型コロナの追跡・警告アプリは、テストの強化や人間による接触追跡などの他の手段を効果的に補完できます。感染者数が再び増加している中、感染経路を遮断する上でアプリが重要な役割を果たすことができます。国境を越えて機能すれば、アプリはさらに強力なツールになります。本日稼働を開始するゲートウェイシステムは我々の仕事の重要なステップです。お互いを守るためにアプリの利用を呼びかけたいと思います」。

「移動の自由は単一市場の不可欠な部分です。ゲートウェイは人命救助に役立ちながらこれを促進していきます」と内部市場のコミッショナーであるThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は付け加えた。

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カテゴリー:ヘルステック
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(翻訳:Mizoguchi

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