Facebookでユーザーがいちばんひんぱんに訪問するのは写真とニュースフィードの部分だろう。それに比べて、最近鳴り物入りで追加された2つの大型プロダクト、タイムラインとグラフ検索は比較的ニッチな機能にとどまっている。
今日(米国時間2/28)、Facebookは グラフ検索をデモするため、サンプルを公表した。しかしその結果はグラフ検索はユーザーが毎日使うようなものではないという印象を強めただけだった。
Facebookが検索機能を強化する必要があるのは間違いない。しかしこれまでのところ、Facebookでは先進的なテクノロジーを見せびらかすのに熱心な一方でユーザー体験の改善ががおろそかにされているのではないだろうか。
先週私はFacebookを取材したところでは、グラフ検索はすでに何十万人ものユーザーに公開されているという話だった。スタートの時点でのユーザーは10万人前後だったようだ(ベータ版への登録はこちら)。しかしユーザーはこの機能を利用するのにあまり熱心でないらしい。そこで、Facebookのユーザーで現在グラフ検索が利用できるのは1000人に1人くらいなのだが、Facebookはいっそうの利用を促すために検索結果のサンプルを紹介するブログ記事を公開した。
紹介されている検索例には、友達の昔の写真やビデオ、大手メディアからの話題のコンテンツなどが含まれている。その他検索されているのは、付近のホテルやレストラン、友だちが訪問したスキーリゾート、自分が以前に訪問した観光名所、友だちが「いいね!」したアプリやビデオ、有名人のホビー、自分と似たような「いいね!」をしている人々、などの情報だ。
しかしこのリストをよく見ていただきたい。読者が毎日検索しそうな項目が1つでも含まれているだろうか? たまにはノスタルジックな気持ちになって過去のコンテンツを引っ張りだしたり、バカンスの計画を立てようとして情報を集めたり、また単に暇つぶしのために検索したりすることはあるだろう。しかしどう考えても近況アップデートや親しい友だちの写真アルバムほどの利用度合いになるとは思えない。
2011年9月にタイムラインが発表された。すばらしい機能には違いない。しかし読者はどのくらいの頻度でタイムラインを使って自分や友だちの過去の投稿を過去に遡って読んでいるだろうか? 全ユーザーの全投稿履歴を表示できるようにするためにFacebookは膨大な資源を振り向けた。しかしそのメリットは? 私が他のユーザーのプロフィール・ページをを訪問するのはほとんどの場合「基本情報」を確認したり最近の投稿や写真を見るためだ。しかしそれならタイムライン導入以前のバージョンでも問題なく表示されていた。それならカバー写真を設定できるようにするだけでアップデートは十分だったかもしれない。
もちろん別の見方もできる。タイムラインとグラフ検索はユーザーの人生の記録をまとめて世界に示すための基礎となる。そこには大きなビジネスチャンスが潜んでいるのかもしれない。グラフ検索連動広告も考えられる。また人々がなにに「いいね!」し、どんな場所を訪問するのかについて高い精度で情報を与えてくれるだろう。グラフ検索は長期的にはFacebookにとってきわめて重要な資産になるかもしれない。繰り返すがグラフ検索はFacebookの保有する膨大なデータを横断的に結びつけるきわめて強力な手段となり得る。
しかし、そうではあっても、やはりこうした検索が必要になる局面はそう多くない。Facebookはグラフ検索をお披露目するイベントを華々しく実施し、第3の柱だと主張した。しかしむしろ「高度な検索」をリニューアルする形で地味にユーザー体験を改善する道を選んだほうがよかったのではないだろうか。友だちの検索を居住地や名前、趣味などをキーワードにして自由に絞りこめるようにしてもらいたかった。どこかで会ったがファースト・ネームしか覚えていない相手をすぐに探せたら便利だろう。そういう機能こそFacebookのユーザーが現実に必要としている検索だと思う。
一方で、ニュースフィードは…2006年のリリース以来ほとんど変わっていない。写真共有も2010年のリニューアル以後だいたいそのままだ。うまく統合、選択された写真ストリーム(ときおり写真による広告が入る)が提供されれば、平均的ユーザーでさえ毎月何時間かはそれを眺めるだろうと思う。これは膨大な広告収入を得るチャンスだ。今のニュースフィードはまだ文字中心だが、写真ストリームはエンゲージメントを高める上で効果があるだろう。さいわい、Facebookは先月私がレポートしたように、モバイル版のニュースフィードについては根本的にビジュアルなものにアップデートしようと準備を進めている。
Facebookはユーザー体験に関して豊富な経験を持っている。写真とニュースフィードがいつでもその中心にあることは十分承知しているだろう。それなのに最近はなぜニッチな部分にオーバーエンジニアリング気味の凝った機能を実装することにばかり熱心なのか? Facebookは10億人のユーザーをないがしろにする方向に脱線してはならないと思う。
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)