Facebook、購読トライアルやダイジェスト配信などジャーナリズムのための機能を発表

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偽造ニュース問題やFacebookでパブリッシャーが読者と継続的な関係を築く難しさにより、Facebookとジャーナリズム業界との関係はぎくしゃくしている。そこで本日Facebookは今後公開するニュース機能のロードマップを公開した。「The Facebook Journalism Project」という名で、ジャーナリズムの分野でFacebookがコミットすることをまとめている。

これにはいくつかの施策が含まれている。インスタント記事のダイジェストをパッケージ化し、ユーザーが購読できるようにする機能、有料購読前に無料トライアルが行える機能、パブリッシャー側の開発者とのハッカソン、ジャーナリスト向けのFacebook機能のチュートリアル、ニュースリテラシーや偽造ニュースへの認識を高める公共広告、虚偽の情報が広まることへの予防策などだ。

またFacebookは、同社が買収したCrowdTangleへのアクセスを無料で提供する。CrowdTangleはジャーナリズム向けのツールで、記者がトレンドになっていることを見つけたり、ソーシャルでの反応を計測したり、情報源やインフルエンサーを特定したりすることができるツールだ。また、ジャーナリストが自分の通常のユーザープロフィールからシェアした動画の基本的なアナリティクス情報を得ることができるようになる。Facebookページで提供しているインサイトツールの簡略版と言える。

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この取り組みで、パブリッシャーがFacebookの外の読者とも継続的な関係を築くことを助け、パブリッシャーの投稿がフィードに埋もれることを避けたい考えだ。また、新たなプロダクトの開発を促し、仕事に役立つツールへの自由なアクセスを提供しつつ、一般のユーザーに対しては良識のある読者であるために心がけるべきことを伝えていく。

「パブリッシャーが私たちとのより深いコラボレーションを望んでいることをはっきりと認識しています。単にパートナーシップではなく、プロダクトやエンジニアリング面においてもということです」とFacebookのプロダクトディレクター Fidji Simoは話す。

重要なのは、 Facebook Journalism Projectで、パブリッシャーがコモディティ化することを防ぐことができるかもしれないことだ。Facebookで消費するコンテンツが大事で、その記事を書いた記者が誰であろうと関係ない状態を避けるということだ。

パブリッシャーに大切なものを返す

多くのユーザーがFacebookのモバイルからニュースを読むようになっている。そのためFacebookが2015年5月にインスタント記事をローンチした時、モバイルでの記事のロード時間を短縮する機能が評価された。 外部のウェブサイトのロードに10秒かかるというようなことはなくなり、Facebookは瞬時にロードする定型化した「読みやすい」記事フォーマットの提供を始めた。

この機能だけを見た時、パブリッシャーにとって有利なもののように見えた。より多くのユーザーが記事をクリックすることになり、記事がロードするまでのバウンス率も減る。Facebookがインスタント記事で表示できる内容や広告の数を制限し、1記事あたりのビューが減ったとしても、それを上回る効果が期待された。

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インスタント記事。左の画像は以前のインスタント記事の仕様。パブリッシャー独自のウェブサイトに比べ、カスタマイズできる部分が限られていた。

しかしこれには目立たない二次効果があった。パブリッシャーの個性を殺していた。特徴的なブランドが強調され、独自のビジュアルスタイルを打ち出し、パブリッシャーの他の記事を読者に訴求できるウェブサイトと比べ、Facebookのインスタント記事はどれも同じように見えた。

これはパブリッシャーと読者の関係性を弱め、コンテンツのクリエイターを誰でも代わりが務まるゴーストライターに変えてしまう懸念がある。人々は徐々に特定のパブリッシャーを探し、サイトに直接アクセスして、講読料を支払ったり、イベントに参加したりする代わりに、ニュースフィードに流れる記事を無計画に読むだけになってしまいかねない。

ニュースを全方位から改善する

以下がFacebookの施策の一覧だ。太字にした2つの施策は、ジャーナリズム業界にとって期待が持てる内容だ。

  • 記事パッケージ
  • ローカルニュースへの投資
  • 購読トライアル
  • Facebookとパブリッシャーとの共同ハッカソン
  • Liveの使用方法など、記者向けFacebookのジャーナリズム機能の研修
  • FacebookページからLive配信を使用するための権限管理機能。寄稿者など非管理者でも機能を使用できるようにする
  • Live動画APIをユーザープロフィールにも適用
  • CrowdTangleへの無料アクセス
  • First Draft Partner Networkとの拡張的なパートナーシップで目撃者の特定を可能にする
  • ニュースリテラシー促進のための公共広告
  • 偽造ニュースへの対抗措置

まだ最適な開発方法を探していて、施策が具体的でないものもある。ただ、中でもこの2つの施策が大きな可能性を持っていると言える。

Facebook's new Head Of News, former TV anchor Campbell Brown

Facebookのニュースヘッドに就任したCampbell Brown。ニュース番組の司会を務めた経歴を持つ。

インスタント記事のパッケージ機能は、ユーザーがニュースフィードで流れてきた特集記事をクリックすると、中にいくつかの記事がまとまっているものだ。同じテーマに関する記事やその日の主要ニュースのダイジェストを届けることを想定している。ユーザが購読すると、ダイジェストがリリースされた時に通知を受け取ることができる。この「パッケージ」機能はThe Washington Post、Fox News、El Pais、Hindustan Timesと現在検証しているという。

もう1つは、ユーザーがインスタント記事の有料購読の無料トライアルにサインアップするためのフォームを用意している。Facebookはドイツのニュース団体BILDとこの機能を検証している。

今はパブリッシャーにとって利益を上げるのが難しい時代だ。しかし、もしFacebookが質の高いジャーナリズムを促進し、彼らに利益が渡る方法を構築できるのなら、ニュースフィードは面白く、豊富なニュースがある状態にすることができるだろう。FacebookのニュースヘッドにCampbell Brownが就任した。Facebookはパブリッシャーに対し、ジャーナリズムを考慮していると口約束するだけでなく、今後のロードマップに沿ってそれが本心であると証明していくことが期待される。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

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TechCrunch Japan

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