ヨーロッパでのFacebook Messengerを介したP2P決済サービス提供に向けて(昨年3月のアメリカでの同サービス提供開始からしばらく時間はたったものの)、Facebookは密かにアイルランド中央銀行から電子マネーのライセンスを取得していた。
アイルランド中央銀行の登録簿を見てみると、Facebook Payments International Limitedという会社が10月24日にライセンスを取得していたことがわかる。具体的には、電子マネーの発行のほか、口座振替、支払、送金といった決済サービスが提供できるライセンスが同社に付与されている。
さらに、アイルランドはEUの加盟国であるため、Facebookはいわゆる金融パスポート制度を利用し、アイルランド以外の27加盟国でも今回許可を受けた業務を行うことができる。
しかし、なぜFacebookがヨーロッパでのライセンスを取得するのにここまで時間がかかったかは明らかになっていない。同社がライセンス取得に向けて動き始めている様子は、2014年の時点で既にThe Financial Timesが報じていたのだ。さらに同じ時期に、Facebookがロンドンの送金系フィンテックスタートアップを買収しようとしているという話まで出ていた。この記事の本題からはズレてしまうが、その後も買収の話は進み、買収先候補のうち一社が、FacebookファウンダーのMark Zuckerbergと会議を行ったという決定的な情報も私は得ていた。
別の疑問として、Facebookがこのライセンスを使って実際に何をしようとしているのかも具体的には分かっていない。彼らはFacebook Messenger Payをヨーロッパにも展開して、同じ国で同じ通貨を使っているユーザー同士がお金をやりとりできるサービスを提供しようとしているのか、それともヨーロッパという環境に合わせて、外貨為替のサービスまで提供していくつもりなのだろうか。
送金サービス比較サイトMonitoのファウンダーであり、今回のFacebookによるライセンス取得の話を知らせてくれたFrançois Briodも以下のように語っている。
短期的に見れば、Facebookは今後Messengerを介したP2P送金サービスをヨーロッパにも展開していくでしょう。彼らはPaymやBarclaysのPingitといったサービスと競合すると思われますが、それに加えて、アメリカほど普及していないP2Pのモバイル決済サービスをヨーロッパで広めるのに一役買うことが期待されています。しかし、中期的に見たときのサービスの可能性については、いくつか不明点が残ります。まず、Facebook Messengerの送金サービスは、ヨーロッパの全ての通貨に対応していくのか、ユーロのみに対応するのかという点です。また、同通貨のクロスボーダー送金サービス(例:フランス→ドイツへのユーロ送金)を提供していくのか、さらには異なる通貨間の送金(例:イギリスからポンド送金→スペインでユーロ受取)にも対応していくのかというのも気になるところです。
本件については、近々もっと詳しい情報が明らかになる可能性が高く、現在Facebookに対してもコメントを要請しているため、何か新たな情報を入手次第、本記事をアップデートしていきたい。
[原文へ]
(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)