米国連邦捜査局(FBI)とシークレットサービス(Secret Service)のアドバイザリーによると、BlackByteランサムウェアギャングが少なくとも3つの米国の重要インフラセクターを標的にし、カムバックを遂げたようだ。
BlackByteはRaaS(Ransomware as a Service、ランサムウェア・アズ・ア・サービス)事業者で、ランサムウェアのインフラを他者にリースし、身代金の収益の一定割合を得ることを目的としている。このギャングは、2021年7月にソフトウェアの脆弱性を悪用して世界中の企業の被害者をターゲットにして出現した。BlackByteは米国、欧州、オーストラリアの製造業、医療、建設業に対する攻撃をセキュリティ研究者が確認するなど、当初は一定の成功を収めた。しかし数カ月後に、サイバーセキュリティ企業のTrustwaveがBlackByteの被害者がファイルを無料で復元できる復号化ツールを公開したことで、ギャングは苦境に立たされた。このグループの単純な暗号化技術により、このランサムウェアがアマチュアの仕業であると考える人もいた。ランサムウェアは、AESでファイルを暗号化する際に、セッションごとに固有の鍵ではなく、同じ鍵をダウンロードして実行していた。
しかし、このような挫折にもかかわらず、BlackByteの活動は再び活発化しているようだ。FBIと米国シークレットサービス(USSS)は、米国時間2月11日に発行されたアラートの中で、同ランサムウェアが米国内外の複数の企業を危険にさらしており、その中には政府機関、金融サービス、食品・農業関連など、米国の重要インフラに対する「少なくとも」3つの攻撃が含まれていると警告している。
このアドバイザリーは、ネットワーク防御者がBlackByteの侵入を識別するためのセキュリティ侵害インジケータを提供するもので、ランサムウェアギャングがSan Francisco 49ers(サンフランシスコ・フォーティナイナーズ)のネットワークを暗号化したと主張する数日前に公開された。BlackByteは、13日に行われたスーパーボウルの前日に、盗まれたとする少数のファイルを流出させることで、攻撃を公表した。
Emsisoft(エムシソフト)のランサムウェア専門家で脅威アナリストであるBrett Callow(ブレット・キャロウ)氏は、TechCrunchに対し、BlackByteは最も活発なRaaS事業者ではないものの、過去数カ月の間に着実に被害者を増やしてきたと述べている。だが最近、米国政府がランサムウェア業者に対して行っている措置を受けて、BlackByteは慎重なアプローチを取っているのではないかという。
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「FBIとUSSSのアドバイザリによると、BlackByteは政府を含む少なくとも3つの米国の重要インフラセクターへの攻撃に投入されています。興味深いことに、ギャングのリークサイトにはそのような組織は掲載されていません。これは、それらの組織が(身代金を)支払ったか、データが漏洩しなかったか、あるいはBlackByteが漏洩したデータを公開しないことを選択したことを示しているのかもしれません」と述べています。「REvilのメンバーが逮捕されて以来、ギャングはデータを公開することにより慎重になっているようで、特に米国の組織の場合はそうした傾向が見られます」。
このランサムウェアはREvilと同様に、ロシア語やCIS言語を使用しているシステムのデータを暗号化しないようにコーディングされているため、BlackByteがロシアを拠点としていることを示す兆候はあるものの、だからといって「ロシアやCISを拠点とする人物によって攻撃が行われたと考えるべきではない」とキャロウ氏は述べている。
また「ギャングに属する関係者は、RaaSを運営する人物らと同じ国にいるとは限りません」と同氏は付け加えた。「彼らは、米国を含むどこにでも存在し得ます」。
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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch
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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)