メキシコ生まれの銘酒テキーラのブランドと自動車企業の結婚が、単純にマーケティングの天国で行われるとは言いがたい。では、Ford とJose Cuervoを結びつけたものは、何なのか?
火曜日(米国時間7/12)に両社は、テキーラ製造の廃棄物である竜舌蘭(りゅうぜつらん)の繊維を、より持続可能なバイオプラスチックとして自動車の部品に利用していくための共同研究でパートナーした、と発表した。その応用部品としての当面の研究対象は、配線を束ねるハーネス、空調設備、そして荷物入れなどだ。
最初のパイロット事業のフィードバックとしては、竜舌蘭の繊維は丈夫で美観もあるので、車のインテリアやエクステリアに好適、という声が得られた。繊維が車の標準部品でいろいろ使われるようになると、車重を減らし、燃費を向上させる、との声もあった。
しかも、原料の不足はない。Jose Cuervo社だけでも毎日、200トンから300トンの竜舌蘭を収穫している。
Fordの持続可能性研究部の上級技術長Debbie Mielewskiは曰く、〔竜舌蘭の根元のパイナップル状の部分を〕“刻んですりつぶしてジュースを取るけど、廃棄物の繊維はこれまで何にも利用されていない。彼らがちょっと処理した繊維が送られてきたけど、それらを切り刻んでプラスチックに混ぜることができたわ”。
Mielewskiによると、竜舌蘭の使用は、“環境にやさしい植物素材”できるかぎり使うというFordのプラスチックグリーン化方針の一環だ。2008年にFordは、代表車種Mustangのクッションやヘッドレスト用に、石油系素材に代えてsoy foam(大豆油から作ったクッション材)を使った。今では北米地区で売られている全車種で、シートのクッションとヘッドレストにsoy foamを使っている。そのためにFordは、年間500万ポンドあまりの大豆油を使っている。
その経験が、グリーンな植物素材は使える、という学習機会になった。その後Fordは、カナダのオークビル市で作っているFlex SUV用のプラスチック製物入れに小麦の麦わら(ストロー)で強化したプラスチックを使った。
竜舌蘭もパイロットの結果が良好なら、この植物の繊維がsoy foamやストロー、ひまし油、ケナフ繊維、セルローズ、木、ココナツの繊維、もみがら、などの仲間入りをする。Fordは今では8種類の、持続可能素材を車の部品に使用している。
Mielewskiによると同社は今、竹や藻類のような成長の早い植物をプラスチック部品に利用することを検討している。Fordは、二酸化炭素そのものについても、研究している。
彼女曰く、“二酸化炭素を環境や温室効果ガス中に放出するのでなくて、それからポリマーを作る研究だ。良質なクッション素材は作れたが、まだ生産はしていない。その原料の50%が、二酸化炭素だ。二酸化炭素を環境に放出せずに、車のためのいろんなプラスチックを作れるようになったら、ビューティフルだと思わない?”。
Fordによると、ふつうの自動車一台が400ポンドのプラスチックを使用している。だから、竜舌蘭のような持続可能素材が使える余地は、一台の車にまだまだあるのだ。