本日(米国時間5月18日)のGoogle I/O(Googleの開発者向けカンファレンス)でGoogleは、コミュニケーション業界への進出ついての発表を行った。Alloはスマートメッセージアプリで、機械学習の機能を搭載の上、新サービスのGoogle Assistant(AmazonのAlexaへの対抗馬)も採用している。Allo上では、画像や様々なサイズのテキストをやりとりできるだけでなく、Google(将来的にはサードパーティアプリも対応予定)を立ち上げることで、データを共有したり、イベントを計画したり、ものを買ったりできるほか、Alloにチャット相手への返信を考させることさえできる。iOS・Android対応のアプリが発表されたが、実際にサービス提供が開始されるのは今年の夏頃になるとGoogleは語る。
Googleのニュースに目を見張っている人にとっては、Alloの発表自体には特段の驚きはなかっただろう。昨年12月のWSJの報道によると、当時GoogleはAIベースのメッセージアプリの開発を行っており、まさにAlloがそのアプリである可能性が高い。
Alloは、Googleにとってなかなかおもしろいタイミングで誕生したと言える。これまでGoogleは数々のソーシャルサービスの開発を試みてきたが、Google+、Wave、Buzzといったサービスは、FacebookやTwitter、Snapchatが流行する中、陽の目を見ることはなかった。
一方で、検索にはじまって、地図やその他の領域まで含み、情報サービスの王といえばGoogleである。Gmailの人気のほか、Googleは素晴らしい機械学習開発チームを社内に抱え、世界で最も人気のモバイルプラットフォームであるAndroidもGoogle製だ。
そのため、FacebookのWhatAppやMessenger、そのほかにもViber、Line、WeChat、ビジネスに特化したSlackなど、数々の人気メッセージアプリが溢れる今日のような状況でも、Googleが強力な手札をあたためつつ、自社のサービスが飛び立つタイミングをうかがっているとしても驚きではない。
Googleは自社サービスの利用法の大きな転換に、Alloを対応させていきたいと考えている。本日行われたI/Oのキーノートスピーチ内で、GoogleのCEOであるSundar Pichai氏は、「私たちは検索サービスにもっとアシスト力をつけようとしてます」と述べた。スピーチ中には、新サービスであるGoogle AssistantやGoogle.com上で検索を行った際に、Google Assistantが提供する様々なアシスト機能についても発表された。さらにPichai氏は、最近の検索リクエストの半数近くがモバイル端末から送られていると語っており、既に顧客となる層が存在していることがここからわかる。
Googleは当初、Alloの開発を支援する目的で、少なくともスタートアップ1社(元200 Labs、現ChatFuel)の買収を行おうとしていたが、結局は自社のチームによってインハウスで開発された。開発チームを率いたErik Kay氏は、Googleのコミュニケーションチームのエンジニアリング担当ディレクターで、本日のI/Oでもプレゼンテーションを行っていた。
また重要事項として、Googleは、Allo同様チャット機能を持つGoogle Hangoutsのモバイルアプリへの投資も継続し、Alloと共に順次アップデートを行っていくと語った。
Alloの機能
他社のメッセージアプリ同様、Alloのユーザーは、携帯電話に登録された電話番号をもとに友達をみつけることができる。さらに、GmailなどでGoogleアカウントを利用しているユーザーは、そのサービス上のコンタクト情報を読み込むこともできる。
メッセージサービス界におけるユーザー情報保護に関する動きに呼応する形で、Googleは、Allo上でもユーザーがシークレットモードへ切り替えられるようにした。これはGoogleがChromeの開発で培った技術で、全てのチャット内容は暗号化され、通知機能も控えめだ。Googleはこれらの機能について、今後もサービスに実装し続け、アップデートしていく計画だと言う。
ユーザーはAllo上で普通の会話をすることもできるが、アプリに搭載されている様々な機能を使ってこそ、Alloの真価が発揮される。
絵文字機能や、文字のサイズを変化させてメッセージの内容を強調できる「ささやき(Whisper)/大声(loud)」モードのほかにも、たくさんのAIベースの機能が備わっているのだ。
Smart Reply機能がそのひとつ。Alloが返信内容の候補を考えてくれるという機能で、Inboxの類似機能同様、これを使えば、ユーザーは返信時に何もタイプする必要がなくなる。また、Inbox上のSmart Reply機能と同じく、アプリがユーザーの返信内容を「学習」していくので、徐々にその内容の精度があがっていく。
Smart Reply機能は、Google Photosの写真に対しても有効で、画像に対する返信(ちょっと気味がわるいが……)内容も考えてくれる。食べ物の写真に対して「おいしそう!」とコメントするのが面倒なときにこの機能を使えば、会話を止めないですむ。
さらに興味深いのは、本日のI/O中に発表されたボットベースのGoogle Assistantを、GoogleがどのようにAlloと組み合わせたかという点だ。
Google Assistantにはもともと言語情報が備わっているため、ユーザーが直接会話や質問をしたり、グループチャット上で何かを計画しているときに呼び出したりすると、返事をもらうことができる。最初は、飛行機の時間や、スポーツの試合結果、上映中の映画情報や、位置情報、検索ワードなど、ほかのGoogleアプリが管理している情報を参照することができる予定だ。
リリース後は、サードパーティーアプリ内の情報を参照できるように、Googleは開発者がGoogle Assistantをアプリに統合できるような施策をとることが予想される。時が経てば、Google Assistantが、既にリリースされているほかのメッセージサービスに搭載されたボットと比べて、機能面で上回ることができるかどうかというのもわかってくる。そのなかで競争が激化し、さらに多くの機能が登場することとなるだろう。
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(翻訳:Atsushi Yukutake)