IBMとRed Hatが5GエッジとAIへ全力投球、シスコやインテル、サムスンなども支持

IBMとRed Hatは5月4日のThink Digitalカンファレンスで、5GエッジとAIを中心とした多くの新しいサービスを発表した。企業はこの2分野に注目している。いずれも法人向けで最も急速に成長しているビジネスであることを考えれば驚くにはあたらない。事実上すべての通信会社が今後の5G普及を最大限活用する方法を検討している。将来を見据える企業は、自社のニーズに合わせた最善の対応方法を見つけようとしている。

最近就任したIBMのJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)社長は本日の発表に先立って筆者に対し「IBMはRed Hatと協力して、高度に差別化したサービスを企業に提供できると信じている。なぜならIBMは超大規模クラウドを提供する企業とは違い、1つのクラウドに企業を縛り付けることには興味がないからだ」と語った。

「IBMが優位性をもって差別化している点は、クライアントがハイブリッドクラウドへ移行する際の支援方法だ」とホワイトハースト氏は述べた。同氏は社長就任後、メディアのインタビューに応じる機会があまりなかった。社長としての役割にはRed Hatの経営もまだ含まれている。「正直なところ、誰もがハイブリッドクラウドを持っている。もっと差別化された用語があればいいのにと思う。当社が異なる点の1つは、必要にせまられ複数の形態で運用するアプリケーションポートフォリオについて企業がどう考えるべきか、そのことについての方法論だ。大企業の場合、メインフレームに一連のトランザクションワークロードを実行させているかもしれない。メインフレームに代わる良いものがないため、この先も長期間そのままかもしれない。さて、メインフレームのデータにアクセスする一連のアプリケーションは分散環境で実行したいと考えているとする。工場の床を大々的に塗装する前にペイントスプレーに欠陥がないか確かめたいなら、まずドアを塗装して試してみる必要がある」。

MWC 2019の期間中にIBMのロゴが表示された(バルセロナ、カタロニア、スペイン – 2019/02/25、写真:Paco Freire/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

IBMが中心に据えているのは、企業のワークロード最適化をソフトウェア、ハードウェア、サービスの観点から支援することだと同氏は主張する。「パブリッククラウドは驚異的だが、一連のサービスを企業に同質的に押し付けている。一方IBMは異なるピースを1つに織り成す試みをしている」と主張した。

同氏は議論の後半で、大規模なパブリッククラウドは企業のワークロードをむしろクラウドサービスにあわせるよう強いていると主張した。「パブリッククラウドの能力は桁外れで、当社の素晴らしいパートナーだ。だが彼らのビジネスの柱は同じサービスを大量に提供することであり、その主張は『ワークロードがクラウドにあう限りにおいて、より良く、より速く、より安価に実行できる』ということだ。明らかにそういうやり方で拡大しているし、サービスも増やしている。彼らはオンプレミスで使ってもいいとは言わない。ユーザーが彼らのモデルにあわせなければならない」。

新しいビジネスとしてIBMは、事業計画、予算編成、各種予測などを自動化するサービスや、AIの力で自動化アプリを開発・実行するツールを立ち上げようとしている。自動化アプリは、完全に自律的にまたは人間の助けを借りながら日常的なタスクを処理できるものだ。同社はまた、コールセンターの自動化のための新しいツールも手掛けている。

AIに関する最も重要な発表はもちろんWatson AIOpsだ。これは企業がIT関連の事故やシステム停止による悪影響を減らすために、異変を検出、診断してそれに対応するためのツールだ。

通信面では、例えばEdge Application Managerなどの新しいツールを発表した。これはIBMのオープンソースのエッジコンピューティングプロジェクトであるOpen Horizonを利用して、AI、アナリティクス、IoTのワークロードをエッジで簡単に動かせるようにするものだ。IBMはまた、Red Hat OpenShiftの上に構築された新しいTelco Network Cloudマネージャーと、Red Hat OpenStack Platform(今後も重要な通信プラットフォームで、IBM / Red Hatの成長事業の代表)を活用する機能も立ち上げようとしている。さらに顧客の5Gおよびエッジ対応ソリューション開発を支援するために、エッジコンピューティングおよび通信クラウドのための新しいIBMサービスチームも準備している。

通信会社は、5Gおよびエッジの展開の中核を形成するさまざまなオープンソーステクノロジーにも大きく賭けている。Red Hatはすでにこの分野の主要なプレーヤーだったが、IBMによる買収がさらにそれを加速したとホワイトハースト氏は主張する。「買収以来、通信会社は、IBMが長期的にかつミッションクリティカルな局面でサービスを提供できる点に大きな信頼を寄せている。重要なのは、IBMにそれを実現する能力があるということだ」

エッジとハイブリッドクラウドの多くはRed Hatのテクノロジーに基づきIBMが構築した。両社のいずれも単独では実現できなかっただろう。Red Hatには、こうしたプロジェクトを成功させるために必要な規模、幅、スキルがなかったとホワイトハースト氏は主張する。

ホワイトハースト氏はまた、同氏が持ち込んだRed Hat DNAの一部は、エコシステムの観点からIBMが考えを深めるのに役立つと主張した。「私が重要だと考えるRed HatのDNAはエコシステムの重要性だ。Red Hatが持ち込み、IBMが採用した。両社が同じDNAを持って共に走っている。Red Hatのソフトウェアはすべてオープンソース。本当にそうでRed Hatが持ち込んだのはエコシステムなのだ」。

こうした通信関連の取り組みが、Cisco(シスコ)、Dell Technologies(デル・テクノロジーズ)、Juniper、Intel(インテル)、Nvidia(エヌビディア)、Samsung(サムスン)、Packet、Equinix、Hazelcast、Sysdig、Turbonomics、Portworx、Humio、Indra Minsait、EuroTech、Arrow、ADLINK、Acromove、Geniatech、SmartCone、CloudHedge、Altiostar、Metaswitch、F5 Networks、ADVAなどのパートナーらに支持されたのは驚くにあたらない。

Red Hatは多くの方法でオープンソースのビジネスモデルを開拓している。ホワイトハースト氏は、Red HatがIBMファミリーの一部となって、IBMはオープンソースにさらに投資する決断を下すことが容易になったと主張した。「ハイブリッドクラウドの世界へ加速を進めながら、オープンソーステクノロジーの活用によって実現に最善を尽くす」と付け加えた。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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