IBMのWatson Healthと復員軍人省が今日(米国時間7/19)、Watsonの人工知能を使って末期がんの退役軍人を支援する共同事業を今後も継続する、と発表した。
Watsonは一般的には、ゲームのJeopardy!で人間に勝ったことぐらいしか知られていないが、2016年にはオバマ政権の全米がん撲滅運動に従って、復員軍人省の精密腫瘍学プログラムに参加した。Watsonと省の腫瘍学者たちは、患者が提供した腫瘍の標本を分析し、がんのゲノムの突然変異を探究した。そのとき得た情報により、患者別の投薬や治療の方針をより精密にすることができた。
両者のパートナーシップが始まったときには2700名あまりの退役軍人を研究と治療の対象にできたが、今日の発表では省の腫瘍学者たちが少なくとも2019年までWatsonのゲノム研究技術を利用できることになった。
IBM Watson HealthのトップKyu Rhee博士はこう語る: “膨大な量の医学情報と具体的な個人のがんの突然変異を正しく関連付けることは、きわめて困難である。その意味でAIは、精密腫瘍学の対象規模を大きくすることに、重要な貢献をしてくれる。とくに復員軍人省とのパートナーシップは、アメリカで最大の総合的ヘルスシステムになる”。
2016年にこのパートナーシップが始まる前には、IBMはWatsonを、20以上のがん治療/研究機関で訓練した。そしてその初期の結果に基づき、科学者と医師によるチームが意思決定を行った。
2年間の訓練でAIに医学の学位を与えることはできないが、Watsonが人間のプロフェッショナルよりも得意なのは、データの消費だ。全米がん研究所のデータによると、アメリカのがん患者の3.5%が退役軍人と言われるだけに、大量のデータから情報を取り出す能力はきわめて重要だ。がん患者は年々増えており、2018年には新たにがんを診療した患者が170万名あまりに達した。
これだけの患者に適切な治療と処置を提供していくことは、多くの意味で数との勝負だ。そして数こそが、Watsonが得意技を生かせる領域だ。