IoT介護支援システムを開発するZ-WorksがシリーズAラウンドで総額4億円の資金調達をしたことを発表した。この調達ラウンドに参加したのは、Spiral Ventures Japan、キヤノンマーケティングジャパン、インフォコム、LIXIL、国際航業、KSP投資ファンドだ。資金調達に合わせて取締役2名を新たに選任したほか、新株主から3名の社外取締役を選任するなど経営体制も強化している。
Z-Works創業者の小川誠CEOは、もともとはシリコンバレーの半導体メーカーで働いていたエンジニアだ。Z-Worksの社名の由来ともなっている近距離の無線通信規格、Z-Waveを使って海外に比べて遅れがちな「スマートホーム」を推進することを目指して2015年4月にZ-Worksを創業した。当初はメーカーズムーブメントに乗る形でIoTやDIY的なスマートホームに関心のある層に向けて、Z-Wave対応のハブなどをクラウドファンディングを通じて販売していた。
Z-Wave自体は興味深い通信規格だ。基地局免許不要のサブギガヘルツ帯を使ったメッシュネットワークは、家屋程度の範囲をカバーできて、1台のハブで200種のデバイスを接続できるという特徴がある。ただ、自分自身で実験的にホームオートメーションをDIYしてしまおうという層だけを対象していても、特に日本国内だけではビジネスにはなりづらい。Z-Wave関連デバイスを半ばむき出しのままに出しても市場が広がらなかったのが現実だ。
そうしたことからZ-Worksは、まず「IoT介護」にターゲットを絞ったという背景がある。小川CEO自身、身内の介護経験でつらい思いをしたことがあり、「頑張らない介護」を打ち出している。小川CEOいわく、介護のつらさの中には部屋のなかの淀んだ空気や「におい」といったこともあるのだそうだ。自分の親や配偶者であるのに1年、2年と介護を続けると疲れ切ってしまい、においですら気が滅入るのだという。
2025年には団塊の世代が75歳以上となり、介護の現場は施設から在宅へと移る。そのとき介護は大きな社会問題となるだろう。すでに介護疲れから「介護殺人」へと発展してしまう悲劇が報じられることが増えている。
そこで大事なのが「頑張りすぎない」こと。そのためにはそばにいる必要があるときだけ、そばにいることができること、と小川CEOは言う。ネットワークに接続したセンサーを居室や寝室からトイレへの動線に設置し、徘徊が起こっていないかどうかなどを遠隔で確認できる手段を提供する、というのが「IoT介護支援」の1つの形だ。Z-Worksが開発する介護支援システム「LiveConnect Care」は、高齢者のベッド周りに非接触型センサーを設置して、ベッドでの在・不在や心拍、呼吸、睡眠時間、離床行動などのデータを得てクラウドで解析。在宅なら介護者、施設であれば介護スタッフのスマホやナースコールシステムに状況を通知するという。今後はセンサーだけでなく画像認識技術も組み合わせていく。
Z-Works小川氏はTechCrunch Japanの取材に対して、「資本参加いただいた事業会社さまと連携しながら、介護支援から介護予防・ヘルスケアに事業を広げ、日本の少子高齢化社会をフィールドに様々な課題に挑戦していきたいと思っています」とコメントしている。